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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 2 第5章 月を壊したかぐや姫
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Episode 6


「【複製(ペースト)】」


決闘開始の合図と同時に走り出した私の目の前で、ソーマは何も持っていなかった手が光に包まれる。

次の瞬間、光が晴れ。その手には先程までは持っていなかった巨大な弓が出現していた。

弓を持っていない方の手には弓矢が握られている。

……弓?ネースにしては古風な武器が出てきたわね……。


他の区画とは違い、ネースは技術の進歩した区画だ。

それこそ大通りの方を歩けばドローンや何か分からない機械が人の代わりに動いているのを良く目撃するほどに。

恐らくはデンスでいう人形や、オリエンスでいうゴーレムなんかがこのネースではドローンや機械にあたるのだろう。


だからこそ、一見して木で出来ているとしか思えない弓を使う理由が分からなかった。

しかしながら、それを理由に油断する事はしない。

むしろ何かしらの意図があると考え、私は警戒を強くした。


「【洋墨生成】、【印器乱舞】」


徐々に距離が縮まっていく中で、私は【印器乱舞】を発動し、ソーマへデバフを。

自分にはバフを掛けるために印章の彫られたトンカチを複数宙に浮かせ操った。

当然ながら、私に掛けるバフは敏捷と筋力が上がる印章を。

そしてソーマには諸刃や脆弱といった、攻撃性能や防御力が下がる印章を中心に捺印させる。


ソーマはそれに対し、一瞬嫌がるような表情を見せたものの、避けられるものではないと察したのか逃げることなく捺印されつつ。

弓を引き、何本かの矢をこちらへと射ってくるがうちの生産職のものと比べるとそこまで勢いがないため、私の持っているハサミで簡単に弾くことが出来た。


元々そこまで距離も開いていなかったために、彼我の距離はすぐに縮まり、遠距離武器は取り回し辛い範囲へと足を踏み入れる。

その瞬間、カチッという小気味いい音が私の足元から聞こえてしまった。


「……マジ?」

「マジだ。相手の戦略を、考えをもう少し考えるべきだな」


短くそう会話を交わした後、私の足元が爆発した。

感圧式の地雷。仕掛けた様子は特になく……何かしらのスキルを使って仕掛けていたのだろう。一番あり得るのは、一番最初に宣言した【複製】の時だろうか。


「嘗めないで欲しいわねッ!」


しかしながら、私も私で地雷だけでやられるほどに弱いわけじゃあない。

爆発に晒されながら、再生の印章を捺印し急速に減っていくHPを無理やりに回復させつつ。私はまた一歩前へと踏み込みハサミを振るう。


それが分かっているのか、ソーマはいつの間にか弓を消し、その手に巨大な盾を出現させていたが私にとって関係ない。

寧ろその盾に向かってハサミを思いきりぶつける。甲高い音を発し、攻撃自体はソーマに届かなかったものの……その衝撃は彼の手に伝わっていると思いたい。

そしてそのままハサミをインベントリに仕舞い、代わりに【土精の鎚】を取り出して上から振り下ろす。

勿論使うのは【衝撃】の面だ。


「【複製】」

「やっぱりそれ便利ねぇ!」

「そっちはそっちで面倒だがな」


手に持っていた盾では受けきれないと判断したのか、姿勢を落としながらタワーシールドを新たに出現させ、私が振り下ろした【土精の鎚】を受け止める。

瞬間、【衝撃】の印章による効果が発生しタワーシールドに対して更に衝撃が襲った。

流石に追加で発生した衝撃には耐えられなかったのか、ソーマの態勢が少しばかり崩れる。


その隙を見逃さないように、【デュアルシギル】を発動させ更にタワーシールドを狙って鎚を振るう。

ガガンッ!という音と共に、ソーマの足が少しばかり地面へと沈むものの、彼に直接当てているわけではないためダメージの入りは悪い。


「どうした?盾にばかり攻撃していてもダメージは与えられないぞ」

「言うじゃない。貫通して少しは入ってるくせに」

「お前に比べれば入ってないと同じだ、これくらい」


タワーシールドをずらし、わざとこちらが見えるように笑みを浮かべる彼に対し。

私もにっこりと笑ってやることにした。

当然だ。私の目的は【土精の鎚】を使って相手を圧し潰すのではなく、既に達成されているのだから。


「でもコレは予想してるかしら?」

「はっんぼぉッ!?」


私は自身の周りに漂っている白濁した液体……【洋墨生成】によって生成させたインクを、彼の顔に纏わりつかせた。

【洋墨生成】によって生成したインクは、ある程度自分の好きなように動かせる。

以前も【決闘者の墓場】にてスケルトンたちの侵攻を防いでいた実績があるこのスキルは、今回のように相手の顔を覆ってやれば【窒息】という……徐々にHPにダメージを与えることが出来るデバフを与える事も可能だ。


しかしながら弱点もしっかり存在する。

このインク自体は、何も操作をしない限り私の周囲にただ漂うだけの代物で、他の【印器乱舞】や【デュアルシギル】といったスキルを使う時に消費されていくだけのものだ。

そしてインク自体を意識することで、約2メートルほどという制限はあれど自由に移動させる事が可能だった。

だが、そのインクの操作可能範囲外に出てしまうと、途端に地面へと落下し消えていってしまう。

今ももがくようにソーマが動いているからか、少しずつインクが光となって消えているのが見えている。


私は別に攻撃を防がれること自体は構わない。

このインクさえ相手の顔にぶつける事ができ、最終的に【窒息】死させることができればいいのだから。

だからこそ、距離が離されないように近づきしっかりとインクを使い、相手を殺すために立ち回る。


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