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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 2 第4章 天使にレクイエムを
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Episode 31


前へ前へと天使を斬り伏せ、叩き潰しながら進んでいく。

中心に近づくにつれ相手をしなくてはいけない量が増えたものの、それでも許容量オーバーはまだしていない。

隣で戦っているCNVLに関しては……まだ楽しそうに敵を倒しているから問題はないだろう。


『よぉし!組みあがった!矢の構成は!?(゜д゜)!?』

「「一点貫通ッ!」」

『了解、調整するからあと1分は耐えてて!』


メアリーからの連絡に、私とCNVLは同時に返事をする。

今の調子ならば私達だけでもいずれ中心に到達することは出来るだろう。

しかしながら、それをするには時間が足りなさすぎる。

……ここから戻るのは面倒ね。


本当ならばメアリーの矢に対して印章による強化を施そうかと思っていたのだが……流石に距離が離れてしまっていて、すぐには引き返すことが出来ない。

言った事を覆すようで申し訳ないが、準備が出来たらすぐに射ってもらう旨をチャットで送り、了承してもらってから私は中心への歩を進めた。


メアリーの矢があるなら前に進む意味はもうないんじゃないか?と思われるかもしれないが、そうじゃあない。

メアリーの矢は決して万能なわけではないからだ。

全てが全てその一矢で決着が着くのなら、私達は初めっからメアリーを守りつつバリスタを組み立てさせている。


それに今回の注文(オーダー)は、一点貫通型。

貫通して中心には届くだろうが……それが反節制の聖書に命中するかどうかなど誰にも分からない。

なんせ、天使によってメアリーの位置からは確認できないのだから当然だ。


「CNVL、その雨は一旦止めて」

「ん、あぁ。メアリーちゃんの矢の邪魔になるからか。了解」


だからこそ、少なくとも私はメアリーの矢による状況の終了は考えていない。

むしろ、その矢によって出来た穴を使って中心へと駆け抜けようと思っている。

恐らくCNVLは何も考えていない……とまでは言わないが、似たような事くらいは考えているのだろう。

だからこそ、先程メアリーへの指示が被ったのかもしれない。


「そっち、デスペナと【強欲性質】は?」

「解けてないのと、まだ使ってないわよ。そっちは?」

「こっちもまだだねぇ。私の場合はそっちよりCT短いから使ってもいいけれど……どうする?」

「やめておきましょう。回復量は問題ないんでしょう?」

「問題ないねぇ。肉片食べてるだけでぐんぐん回復していくぜ。多分これ修正されるだろうなぁ」


彼女の言葉に少し笑ってしまう。

『犯歴』による回復能力の強化を行っている彼女のスキルは、確かに強い。

SNSやゲーマー風に言えば、壊れ性能という奴だろうか。

今までも中々の回復速度を誇っていたものの、今ではほぼ急所狙いの攻撃以外では防御すらしていない。

彼女が言う通りこれを見ているであろう運営はすぐに修正を入れるだろう。


「ん?」

「あら」


そんな雑談をしながら中心に向かって歩きながら天使を捌いていると。

それは空から墜ちてくるように現れた。

キャソック……神父などが着る祭服を身に纏ったソレは、先程から視界の隅にちらちらと映っていた神父天使そのものだ。


彼?はそのまま周りの天使と似たような、しかし光量が全く違う光の槍をこちらへと構える。

その威圧感はダンジョンに存在する中ボスくらいのものだろうか。


「いやぁ、まだメアリーちゃんは準備中だろう?」

「そうね。でもどうせ準備出来てたとしてもこれの相手は私達よ?」

「あは、違いないねぇ……()ろうか!」


軽く冗談を言い合うように会話した私達に対し、神父は一歩踏み込み槍を突き出した。

ドン、という音と共にボタボタと何かの液体が地面に落ちる音が聞こえる。

私は避けてすらいないが、ダメージも負っていない。

当然だ。何故か前に出たCNVLが笑いながら神父の槍を左腕を貫かせる事によって止めたのだから。


その光景に呆れながら、双剣をハサミへと変え神父へと迫る。

CNVLの行動か、それとも味方を肉壁のように扱い前に出てきた私に焦ったのか。

神父は槍から手を離し、そのまま新しく光の剣を作り出し私へと振るい。

私がそれを紙一重で避け、首にハサミの刃を掛けた。


神父の動きは速いものの、天使と同じ動き方しかしていない。

いや、恐らくは天使が神父と同じ動きしかしていない、が正しいのだろう。

兎に角、これまで天使と大量に戦闘してきた私達にとって神父の動きは既に視た事のある動きであり。

対応できない方がおかしいのではないか?と思うほどのものだった。

じゃきん、という音が響く。


「ありゃ、もう終わっちゃった?」

「えぇ。天使さえ生ませなければ弱いわね。動きも天使と同じだったし。……あぁ、まぁ速かったことには速かったけれど」

「確かにねぇ。でも回復出来るくらいのダメージしか喰らわなかったぜ?」

「そんな検証は貴女みたいに継続回復持ってるプレイヤーかタンク役くらいしかしないわよ。……まだ時間掛かりそうだしもう少し進みましょうか」

「りょーうかい」


思ったよりも弱かった神父に、少しだけ思うところはあるものの。

油断はしないように気を引き締め、前を向く。

ここまで天使、神父と出てきたのだ。

宗教関係、と考えれば恐らく神父の上であるモブも当然存在するはずだ。

その時、例え動きが同じであろうとも、神父と同じように対応できるとは限らないのだ。


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