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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 2 第4章 天使にレクイエムを
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Episode 29


「で、現状はどうなの?」

「あんまり貴女がデスペナになる前と変わらないわね。……あぁ、でも神父の天使を生む速度が目に見えて上がったわ。まるで何かを隠すためにね」

「まぁ……分かりきってるわよねぇ……」


現在の詳しい状況を聞きながら、こちらに近づいてきていた天使を片手間に捌いていく。

一番最初に吹き飛ばされた事を思い出すと、この数時間の間で本当に手慣れたものだ。


「問題はそろそろ第三勢力をどうにかしないとお互いの区画の防衛にも問題が出始めるわよねぇ……」

「あぁ、ディエスね……確かにそうね」

「そういえば酔鴉は勝利条件確認した?」

「一応ね。掲示板経由だけど、確認はしたわ。だからやるなら一気にってのもある程度は考えているけれど……私単体特化だから相性が悪いのよね」


彼女のスタイルは良くも悪くも単体の敵に対して有効なものばかりだ。

今も複数の天使を相手にしているように見えるものの、その実1対1を複数回繰り返しているだけのこと。

範囲殲滅といった芸当は得意ではないのだろう。


「了解了解。じゃあうちのを起点にしましょう」

「貴女の……ってCNVL?確かにあの巨大な腕を作り出すスキルならいけるかもしれないけれど……」

「いえ、メアリーよ。そろそろ暴れたそうにしてるから」

「……彼女が?その、馬鹿にするわけじゃないけど、彼女生産職でしょう?火力出るの?」

「勿論。むしろうちのパーティの中じゃ一番よ」


間違った事は言っていない。

メアリーは時間は掛かるものの、うちのパーティメンバーの中では一番の火力を誇る攻撃手段をもっている。


普段は後方支援……弓などを使い、適度にヘイトを引いたりダメージを与えているため、前に出ている私達よりも目立つことはないものの。

一撃に集中させた時の威力は、この前のファウスト戦でも見たがかなり高い。


「……分かったわ。じゃあ――デンス、オリエンスのプレイヤー諸君!一点突破でこの戦いを終わらせるわ!起点はデンス側のメアリー!それ以外は彼女のサポートを!」

『ッ!?(゜д゜;)!』

「「応ッ!」」

「「了解ッメアリー親衛隊は此処に在りィ!」」

「……なんか変なの混じってない?」

「あら、知らないの?うちのメアリーは地味-に人気なのよ」


酔鴉は声を張り上げ、周囲のプレイヤー達に聞こえるように作戦内容を発表した。

何人か変なのが混じっているように聞こえたものの、大体のプレイヤーがこちらの指示に従ってメアリーをサポートするような陣形へと立ち位置を変えていく。

そんな中、離れた位置からこちらを見ながら困惑した顔でパーティチャットを投げかけてくるメアリーに対して、私は音声入力によって応答する。


『どっ、どういう事なのハロウ!?(´・ω・)』

「どうもこうもないわ。貴女のバリスタが一番この中じゃ貫通力が高いってだけよ」

『でも取り出したらヘイトが……』

「それくらいどうにか出来るし、今もこうやって私にヘイトが溜まってるけど皆大丈夫でしょう?何とかなるわ。……だからファウストにぶつけたようなの一発頼むわね」


そう言うと諦めたように肩を落としつつ、しかしながらニィとどこかで見たような笑みを彼女は浮かべた。


『分かった、分かったよ。OKやろう。試したいって思ってたのもあるんだ(;^ω^)』

「あ、矢の準備が出来たら言って。少し私からも補助させてもらうわ」

『りょうかーい!』


そんなやり取りの後、彼女はインベントリからバリスタのパーツを取り出した。

瞬間、私や近くの酔鴉に近づいていた天使達全てがメアリーの方へと視線を向けた。

その過剰な反応の仕方に2人して笑ってしまうが、そのままにしておけるほど微笑ましいものではない。


ヘイトが外れたのを良い事に、手に持っていた双剣をハサミへと変え。

酔鴉はインベントリから酒を取り出し一気に煽る。

そして私達は周囲の天使へと向かって襲い掛かり――


「おいおい、私も居るんだからもっと頼ってくれていいんだぜ?」


――上から降ってきた肉と骨によって周囲の天使達が圧し潰された。

人によってはトラウマものの光景ではないだろうか。


「貴女は……また新しいスキル?CNVL」

「あはッ、そうだよ。また後で詳細は教えてあげるぜ」


いつもの笑いを漏らしながら、マグロ包丁の切っ先をゆらゆらと揺らしつつこちらへと歩いてくるCNVLは、どこか光を纏っていた。

恐らくはまた【食人鬼】のスキルによって天使の性質でも得ているのだろう。

すぐにこちらに来ないとは思っていたが、ちょっとした検証でもしていたのだろうか。


「よし、じゃあメアリーの準備が出来るまでちょっと頑張りましょうか」

「メアリーちゃんよりも早く中心に辿り着いちゃってもいいんだよね?」

「良いわよ、出来るならやりましょうか」

「……貴女達いつもそんな感じなの?」


隣の酔鴉に少し呆れられつつ、私とCNVLは隣り合って各々の武器を構えた。


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