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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 2 第4章 天使にレクイエムを
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Episode 26


--浮遊監獄都市 カテナ 第一区画 ネース 第一階層

■【印器師A】ハロウ


「いやぁ、悪いわね。流石にネースはそこまで来たことなかったから助かるわ」

「はッはッは、お安い御用だよ!しかしまさか『決闘狂い』さんが来るとは思ってなかったなぁ」

「こっちにも色々事情があるって事よ」


私は中央区画へと行く前に、ある人物……ソーマと会うために第一区画であるネースに訪れていた。

一応メアリーにその旨の連絡はしておいたし、連絡をする時に気が付いた事もあったため問題はない。


「……ところで、貴女は決闘イベントには出てなかったわよね?」

「私は主に偵察メインだからねー。あ、神酒(みき)って言うんだ。よろしくね」

「えぇ、よろしく。私は――言わなくても問題なさそうね」

「まぁそこら辺の情報を集めるのが私だからね。当然」


神酒と名乗った彼女は、高度に発展した街の中を裏道も使いながら進んでいく。

その速度は早く、しかしながら私が追いつける限界の速度で走ってくれていた。

恐らく彼女の方にもある程度は急ぐ理由が存在するのだろう。

……まぁ最悪ネースでもう一回デスペナね。デス回数でイベント締め出しとかなくて助かるわ本当……。

今後どうなるかは分からないものの、そういった制約が現状ないのはありがたい。


「あ、ちなみに話す場所はこっちが用意してるけど大丈夫?」

「大丈夫。こっちが突然押し掛けたようなものだし……一度死ぬくらいの覚悟は出来てるから」

「……ふぅん」


器用に後ろから着いて行っている私の方へと振り返り、後ろ走りをしながら言った彼女は目を細めた。

こちらは今武器を出しておらず、完全にフリーの状態。印器は出せるものの、攻撃性能がある印章が彫ってあるのは【土精の鎚】のみで、他は敵にデバフを、味方や自分にバフを掛けられるだけのものだ。対抗手段は一見無いようにしか見えない。


「まぁいいや。そろそろ着くよー」


彼女が振り返り、裏路地を出た。

続いて出た私はその光景に目を疑った。


「……うわぁ……」


そこにはディスプレイが大量に展開、否。

現実にもあるようなモニターが無数に配置されており、それら全てが何かしらの映像を映し出していた。

天使と戦うプレイヤー、どこかで移動しているプレイヤー、中央区画の戦闘の様子、私だけを映したものも存在する。


「来たか。で?要件はなんだ『決闘狂い』。中央に加勢しろって事なら断らせてもらうぞ」

「ふふ、こっちが話す内容を先に潰さないでくれるかしら」

「やはりそうか……あの状況を見て加勢する必要があるとは思えないが?」


気怠げにしながらこちらを睨んでくるソーマは、モニター群の前に座っており、何かしらの操作もたまに行っているようだった。

恐らくは彼の【犯罪者】に関係するものだろうが……今は関係ないだろう。

……やっぱり不健康そうな恰好してるわねぇ。


目が隠れるほどに長い前髪に、少し汚れている白衣。

その下には、とりあえず着れればいいと考えたのであろうボロボロの病衣を身に纏っていた。


「中央や私の様子が確認できてるならわかるでしょう?手が足りないのよ」

「……なら他のプレイヤー達を誘えばいいだろう。何故俺に言うんだ」

「そりゃ手数という意味では貴方が一番だからに決まっているでしょう」

「そりゃあそうだろうが……だが結局は1人だ。プレイヤーの数には勝てん。他をあたれ」


私がソーマの手数の多さを知っている理由。

それは単純に、決闘イベントの決勝で真正面から戦ったからだ。

本人曰く、ネース内での序列を上げるために云々と出場理由をなんやかんや言っていたものの、その時見たものは私達デンスやオリエンスには現状足りていない汎用性(・・・)のあるスキルだった。

……良くも悪くも偏ってるからねぇ、私達は。


「ならこうしましょう?ネース側でもポイントを稼ぎたいってプレイヤーは居るでしょう?それらと一緒に援軍って形で貴方が中央に……というのは?」

「確かにそういう奴らは居る、が。そういう奴らは基本的にはこっちの指示なんて聞きやしない。だから俺と共に行った所で、むしろ混乱が増すだけだろう」

「混乱してくれた方がありがたいからいいのだけど?」

「……はぁ……」


彼は額に手を当て、話にならないと頭を横に振った。

何かおかしい所でもあっただろうか。


「ハロウ、お前交渉事とか向いていないだろう」

「身内にはよく言われるわね。後ろで座ってるだけで良いって」

「はぁ……どうせ頷くかお前を殺すかしないとここから出ていかないんだろう?居座られる方が邪魔だ。神酒、例の連中は?」

「はいはーい、そう言うと思ってもう集めてるよ。中央に近い大通り」

「了解。……ハロウ、後でこの事の報酬に関してはお前の所の交渉担当と詰めさせてもらうからな」

「ん、良いわよ」


なんだか分からないが、ソーマが立ち上がり神酒と話しながらモニターを一つずつ光の粒子へと変えて出撃の準備を進めていた。

どうやら援軍に来てくれるようだ。


「あ、言ってなかったのだけど。中央区画に行くと通話の制限解禁されるみたいよ?」

「「はぁ?!」」

「さっき私も気付いたのだけどね。いやぁ、外から通話掛けてCNVLが応じた時点で気付けば良かったわ」

「……お前は、本当に……!神酒、各部隊長は今動かせるか?動かせそうなら一度中央に向かわせてから持ち場に戻るように連絡を……いや、お前も一緒についてきた方がいいな。あぁクソッ!なんて爆弾持ってくるんだお前は!」


ソーマが頭を掻き毟りながらこちらを凄い形相で睨んでくるものの、私は情報を渡しただけだ。

むしろこうなっている状況が分からない。


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