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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 2 第4章 天使にレクイエムを
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Episode 19


双剣を舞うように振るい、目の前の天使を切り飛ばす。

それと同時、近くに来ていた別の天使に対して【土精の鎚】を【印器乱舞】で操り、【衝撃】の印章の効果を発生させて距離を強制的に取らせ、無理矢理戦闘に割り込ませないようにする。


「CNVL!後ろから来てる!」

「分かってる!めんどくさいなぁ!」


私達は絶賛戦闘中……というか、中央区画に近づくにつれて、その数を増やしていく天使達の処理を行っていた。

どうやら天使達はこの先に進んでほしくはないようで、こうして戦闘している間にも空や中央区画の方から次々と増援が送られてきていた。


幸い、私達のパーティと酔鴉のパーティ、そしてスキニットのパーティの3パーティ共に天使との戦闘にはそこまで苦戦しておらず、隙を見て少しずつ少しずつ前へと進めている。

しかしながら想定以上に時間がかかっているのも確かだった。


「マギ、掲示板の方は?」

『もう少しで審議の時間が終了します。そこまで持ちこたえればこっちが一気に有利にはなるでしょうね』

「了解、じゃあそれまで全体の強化と討ち漏らしの処理」

『分かりました。【魔女術:全体強化】、【魔女術:製薬(メイクドラッグ)】』


マギによるバフ付与によって身体が軽くなるのを感じながら、私はこの状況をどうするべきかを考える。

確かに、マギの言う通り時間が解決する状況だろう。

しかしながら、このままどれくらい来るか分からない援軍を待ちながら牛歩のように進んでいても埒が明かないのも確かなのだ。


私達の目的はあくまでも中央区画に集まっている天使達の処理。

全体の数からすれば、ここで倒している分減ってはいるのだろうが……それでも微々たるものだろう。

それにこの状況は何処か既視感がある。


……どこで見たのかしらね……。

敵が次から次へとやってくる状況。似ているというだけならば、第一回のゾンビパニック映画のような状況となった区画順位戦がそれ(・・)なのだろうが……それにしては周囲から無差別に湧いているようには見えない。

考えつつ、酔鴉によってこちらへと向かって投げられた天使を切り捨てていると、


「あぁもう!うざったいなぁ!【祖の身を我に】!」


肉塊を取り出し喰らっているCNVLの姿が目に入った。

瞬間、彼女の身体からは複数の赤黒い人型のような何かが生み出され、それぞれが天使へと向かって特攻していく。


「……あっ」


その姿を見て、思い出した。

姿形や出現方法は違うものの、私達……というか酔鴉のパーティ以外は相手にしたことがあるだろう敵モブの存在を。


「CNVL!」

「なんだい!?こっちはこっちで忙しいんだけど!」

「貴女このまま中央に行きなさい!」

「はぁ!?頭でもおかしく……いやそれは元々か。馬鹿にでもなったのかい!?」


余計なお世話だ。


「そうじゃなくて!多分これ大本がいるわ!ゾンビスポーナーみたいな奴!」

「……!あぁ、成程!確かにそれなら私が行った方が良さそうだッ!了解ッ!」


私の言葉に、すぐに思い当たったのかニヤリと笑って無理矢理中央区画へと走り出すCNVLを追いかけようとする天使を【土精の鎚】の【衝撃】の印章を使い横へと弾き飛ばす。

周りを見れば、酔鴉のパーティ以外はある程度分かっているようで、納得したような顔をしながら道を進むCNVLの援護に回っていた。


ストン、という軽い音を立てながら私の横に空中から落ちてきた酔鴉が疑問顔でこちらに視線を向けてくる。

彼女らオリエンス側からすれば、何故CNVLだけを特攻させたのかが分からないからだろう。


「どういうつもり?」

「対多戦闘なら一番得意なCNVLが親玉を潰しにいったのよ」

「話の内容からそれくらいは分かってる。……でもなんで彼女だけなの?」


酔鴉も、CNVLが回復手段を持っていることや、手数の多さから対多数との戦闘を得意としていることくらいは分かるのだろう。

彼女が疑問に思っているのはその先だ。

確かに対多数との戦闘を得意としていても、それを理由にCNVLを1人先行させる意味は薄いだろう。

むしろこの場での天使の処理を手伝ってもらった方が楽ではある。


しかしながら、前提としてオリエンス側のプレイヤー達は知らない事が1つ存在する。


「CNVLの【食人鬼】ってコスト消費型の【犯罪者】ってのは知ってるでしょう?」

「えぇ、そうね。でもそれだけじゃ理由には……」

「その中でも、CNVLがよく使うのがナイトゾンビと、ゾンビスポーナーって敵モブの素材なのよ。特にゾンビスポーナーが一時期デンスでは話題になってねぇ……言っちゃえば、そのまま放置してるとゾンビを延々と生み出し続けるタイプのモブなの」


そこまで話してある程度察したのか、酔鴉は驚き半分呆れ半分の顔を浮かべていた。

周りのオリエンスのプレイヤー達も禍羅魔含めてそんな表情をしている。


私がしているのはCNVLがよくコスト用にと、ソロでも狩っている敵モブの種類の話だ。

ゾンビスポーナーはその名の通り、ゾンビ系の敵を生み出す性質を持っている。

だからこそ、戦闘になると掛かった時間に応じて周囲の取り巻きの数が増えていくという厄介な敵として認識されている。

出会ったらパーティ全員が取り巻きを一旦無視して、ゾンビスポーナーへと火力を集中させるくらいには。


そんなゾンビスポーナーをソロで好き好んで狩っているのが、CNVLというプレイヤー。

勿論、狩っているうちに対処法というか……どうやって戦えば効率がいいかというのは分かっているらしいが、それを聞いても「グワーッといってバーン!って感じだぜ」という答えしか返ってこなかったため、理解するのは諦めた。

つまりは、


「この状況をどうにかするのに一番向いてるプレイヤーって言っても過言じゃないのよ。まぁ彼女1人じゃ流石に無理だろうから、私達もすぐに追いつけるようにしないと」

「……CNVLさんについて、少し考え直す必要がありそうね……」


正直、考え直す必要があるのか?と思うくらいにはCNVLはいつでもどこでもはっちゃけているのだが……それは一応CNVLの尊厳にも関わってくるため声には出さないでおいた。


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