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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 1 第1章 ハジメマシテ、【犯罪者】
13/194

Episode 12

よかったらブクマとかおねがいします~~~


--第二区画ダンジョン 【劇場作家の洋館】 Hard 1F

■【リッパーA】ハロウ


逃げるコマンダーの背中を見送りながら、私は足を止めまたも背後から迫ってきているソルジャーたちの相手をすることにした。

このまま追いかけてもどうせ同じようにソルジャーを呼び出されて挟み撃ちに遭うだけ。それならば、現在この場に居るソルジャーを倒した方がいいだろう。

……確かめたい事もあったしね。


私が確かめたい事。

それは、コマンダーがこれまで戦闘に着いてきていた理由だ。

何故彼は自らが害される可能性のある戦闘に着いてきていたのか。

考えられる可能性として、ソルジャーへのバフを維持するために近くに居ないといけない……かもしれない。


「【霧の外套】……と、【シャープエッジ】は時間制限付きなのね。はい、発動」


いつの間にか切れていた【シャープエッジ】を再発動し、【霧の外套】も一緒に発動する。

と、そこで私に追いついたソルジャーのうちの1体が剣をこちらに向けて突き出してきたのが見えたため、横に避け……ようとしたものの。

既に左右どちらにもソルジャーが近づいてきたために、剣の進行上にナイフの刃を置いて盾にしつつ後ろに跳んだ。


そして着地すると同時に、こちらへ剣を突き出してきた個体に近付き、剣を持つ腕を思い切り横から切りつけた。

【霧の外套】を使用したからか、腕は勢いよく宙を舞い光へと変わる。

そのままの勢いで回し蹴りを、体重を乗せるようにして腕を切り飛ばした個体の持つ盾へワザと当て、少しの距離後ろへと下がらせる。

実質の無力化だ。


周りのソルジャーゾンビを見てみれば、こちらへ攻撃を加えようとしているものの、先程までとは動きが明らかに違う。

こちらを認識してはいるものの、コマンダーがいた時では考えられないほどにゆったりとした動き。


「これは正解かしらね」


コマンダーによる強化バフが切れたのだろう。

どんな強化をかけていたかは知らないが、この分では所謂かしこさ(ない頭)すばやさ(足取り)辺りの強化だろうか。

数も数な為、剣が当たらないくらいには離れながら観察することにする。


ハードモードに潜ってから、何体か倒しているもののじっくりと観察する暇はなかった。

持っているものは基本的にノーマルモードと変わらない。

だが、それを扱う側のステータスが全体的に上がっている。


少なくとも、剣を扱う技量は最低限上がっているだろう。

今も、私の動きに合わせ進行上に剣を置き罠にかけようとしてきた。

対人戦用の練習にはならないが、その取っ掛かり程度にはなりそうだ。



--System Message 『レベルが上がりました』

--System Message 『スキル【ディア・ボス】を習得しました』


それから暫くして。

最初の1体と同じように、他の4体のソルジャーゾンビを無力化してから切り刻み光に変えた瞬間、システムメッセージが表示された。

7レベに上がったことで、新たなスキルを覚えたようだ。

……それにしても【ディア(親愛なる)ボス(主人よ)】って。


恐らく元ネタは、切り裂き魔ジャックが書いたとされる『Dear Boss』から始まる手紙からそのままきているのだろう。

肝心の効果はといえば、


ーーーーーーーーーー

【ディア・ボス】

指定対象にターゲティング効果。同じ相手に重複して使用することが可能(三回まで)。

重複するごとに持続時間減少、付与した者が攻撃を当てるごとに持続時間延長効果。

ーーーーーーーーーー


というもの。

気になってターゲティング効果についてヘルプを確認してみた所、『ターゲティング効果が付与された者は付与した者から受けるダメージが増加する』という何ともふわっとした説明が書かれていた。

恐らくは某ネットゲームの弱体化弾のようなものだろうか。


「【切裂衝動】とのシナジーもあるわけねぇ……でもきちんと攻撃を続けないと【ディア・ボス】の方が切れてしまうと……」


ソロならばなんとかなるにしろ、パーティプレイをしている時はそうはいかないだろう。

【ディア・ボス】の時間を延長できるのは付与した者のみ……つまりは、私のみだ。

実際にどれほど短くなるのか分からないが、極端に短くなると考えた場合ただ一人でヘイトを稼ぎ続けることになってしまう。


「……っと、流石に止まってるのはダメね。移動しましょう」


ウィンドウを表示させながら、その場で考え込んでしまっていたため一度2Fにいくための階段を探すことにした。

ハードモードに初めて挑んではみたものの、敵が強くなるというよりは特殊な状況下で戦わされることになる側面の方が大きい事が分かったため、あの3人と共に挑む場合は参考に出来るだろう。


まぁ、このまま一度自分で行けるところまでは進んでみるのだが。



--第二区画ダンジョン 【劇場作家の洋館】 Hard 2F


第二階層。

やはり目に見えた変化は特になく、それこそ1Fで見たようなソルジャーゾンビがそこらに倒れているということもなかった。


ただし、ノーマルモードではここからソルジャーゾンビを初めとした新しい敵性モブが出現し始めたのだ。

ハードモードでそれがないとは限らない。

事実、既に1Fではコマンダーゾンビが出現しているわけなのだから。


……倒れてるゾンビの姿、どれも一緒に見えるのよね。

ここで一つ、おかしな点に気が付いた。

先ほどまで居た1F、それとノーマルモードの【劇場作家の洋館】で廊下で倒れているようにしてスポーンしているゾンビたちは、基本的にそれぞれ服装や体格がそれぞれ違うものとなっていた。


しかしながら、この2Fにて倒れているゾンビたちはどれもこれもが同じ顔、体格、服装。ゾンビらしく欠損している箇所まで同じと少しばかり不気味だった。


「【シャープエッジ】、【霧の外套】発動。……ってもしかして」


ナイフを構えながら、スキルを発動し近くの倒れてるゾンビに近づいていく。

と、ここでふと新しく手に入れたスキルを思い出した。


「このゾンビたちって、近づくか敵対行動すれば起き上がるのよね……?【ディア・ボス】」


指定した対象を弱体化させる効果を持つ【ディア・ボス】。

それを発動させた瞬間、私が今から近づこうと思っていたゾンビの身体がビクン!と電気が走ったかのように跳ね、姿が変わる。


「……あー、認識阻害というか偽装というか。見た目じゃなんなのか分からないようになってるのね」


突如虚空から剣と盾が出現し、甲冑を見に纏う。

右目を細めてみてみれば【ナイトゾンビ】という名称なのが分かった。

HPバーの横に、招待状のような手紙マークがついている。恐らくはアレが【ディア・ボス】の対象となっている証拠なのだろう。


通常のソルジャーゾンビよりも早い動きで、こちらへと迫ってくるナイトゾンビに対し私は逃げを選択した。

ナイトゾンビの戦闘力を確かめるのは大事だが、それにしたってこちらがナイフしかまともな武器がないのはダメだろう。


これまではまだ、剣や盾をもっただけのゾンビたちだったためになんとかなってはいたが、甲冑相手ではそもそもダメージがきちんと入るかどうかも怪しい。


故に撤退。

今回の探索の目的である素材も、ソルジャーゾンビをいくらか倒した為にある程度集まっているし。

そう考え、そのまま来た道を戻りテレポーターによって帰還しようとして……弾かれる。


--System Message 『戦闘状態の為、テレポーターを起動できません』

「あー……いやまぁ道理よねぇ……」


面倒だ、そう思いながら振り返る。

すると意外にも近くまで迫っていたのか、剣を上に振り上げているナイトの姿が目に入った。

咄嗟に左へと飛べば、今までいた位置に目にも見えない速さでソレが振り下ろされた。


ブォン、としか聞こえなかったソレをみてゾッと冷や汗をかきながら、どうするべきかを考える。

攻撃が効かなそうな相手に対し、どうやって攻撃を通すか。これに限る。


「これ流石に私相性悪すぎよね?」


結局私が出来るのは、ナイフでちくちく刺したりズバッと切ったりするだけ。

一応武器としてはハサミも持ってはいるものの、どう見ても甲冑相手には相性が悪いだろう。


まだスキルの効果は全て残っている。

一度溜息を吐きつつも、私はナイフを握りしめこちらへと向き直りつつあるナイトゾンビに対し駆ける。

そしてそのままの勢いでまず脇腹へ一撃。

切るのではなく、突くようにして入れてみた。


鈍い金属音と共に、ナイフを持つ方の腕が痺れる。

HPバーを見てみても、やはりというかなんというか1ミリも減っているようには見えない。

そもそもナイフが甲冑を貫通出来ていないのだ。本体にダメージが入るはずがない。


それくらいは分かっていた為、姿勢を低くしながらその場からすぐに離れる。

ヒットアンドアウェイ、基本的にナイフを使った戦闘の組み立てはそれが基礎となる。

と、攻撃されたのは分かっているのか、ナイトは剣を振りつつもその勢いを使ってこちらへと身体ごと振り向いた。


よくよく見てみれば、私の攻撃した部分は凹んでおり。

これを繰り返していけばいずれ貫通くらいはするんじゃないだろうか。


「じゃあ追加よ。……【ディア・ボス】」


切れかけていたスキルを掛け直し、再度同じように攻撃を仕掛けるべく、横へ横へと移動しながらチャンスを伺う。

この戦闘も長くなりそうだ。




--System Message 『あなたはデスペナルティとなりました。一定時間全ステータスが低下します。』

「いやそりゃそうよ」


結果から言えば、あの後普通に盾でナイフを防がれた後に突き刺されて殺された。

技量以前にそもそも私の防具側の強化も足りていなかったのだ。

……流石にいつまでも初期はダメね。


区画に出てみれば、最近は少しお洒落な囚人服を着ているプレイヤーを見かけることも増えてきた。

私もそろそろ何かしらの防具を探すか作って貰うべきなのだろう。


「んんー……体が重い。これがデスペナルティね。時間は1時間ってことは……だいたい10レベ単位でペナルティ時間変動かしら」


色々と考えることが出来たが……それを考えるのは一度休憩した後でもいいだろう。

私はそのままログアウトした。

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