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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 2 第4章 天使にレクイエムを
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Episode 16


--浮遊監獄都市 カテナ 第三区画 オリエンス 第一階層


これまでに約2回ほど訪れていた第三区画オリエンス。

通称ファンタジー区画所属のプレイヤーと天使の戦闘は、どこかのアニメのような様相を呈していた。


革の鎧のような物を着て、粗末な鉄の剣を持って天使へと切りかかる戦士らしきプレイヤーに、それを補助するように動く、僧侶らしき服を着たプレイヤー。

その後ろでは『これぞファンタジーの魔法使い!』と言わんばかりな、黒いローブと三角帽を被り杖を持ったプレイヤーが何やら詠唱のような事をして魔術のような何かで攻撃をしている。どこかで見た覚えがあるが思い出せないのは、他人の空似とかいう奴だろうか。

基本的に近接戦闘や、遠距離攻撃は投石や矢、それ以外はスキルでの基本物理攻撃の私達デンスからすれば、この光景は異様だった。


「……流石に凄いわね。コレ」

「あは、割とこれはオリエンスでも普通じゃない方のプレイヤーだけどねぇ」

「なんで知って……ってあぁ、無駄に交友関係は広いものね」

「無駄とはなんだ無駄とは。ちなみに今目の前で戦ってるのは通称『勇者パーティ』って呼ばれてる所だぜ?彼らの恰好は趣味らしい」


一応オリエンスでも珍しいものではあったようで。

この区画順位戦が終わったら2つの区画の交流会も大々的に企画していけたら面白そうだ。


「……あ、禍羅魔さんと繋がりました。……はい、はい。境界近くです。はい、了解です」

「禍羅魔はなんて?」

「近くにいる天使を倒してから行くから動かないで欲しいそうです。場所は伝えてあるので、僕達も僕達で適当に戦ってましょう」

「了解。じゃあそういうことで行きましょうか。……そこのパーティ!私達はデンスからの援軍よ!キツそうなら加勢するわ!」


私の声に、やっとこっちに気が付いたのか前衛をしていた革鎧のプレイヤーがこちらを見て首を縦に振った。

どうやら参戦してもいいらしい。


「よし、了承も取ったってことで。CNVL、スポナーの在庫は?」

「残り30かな。集めたんだけど割と出現率低くてねぇ」

「了解、じゃあそれは温存で……それとボス以外のアイテムなら使っていいわよ」

「了ッ解!」


私がそう言った途端、天使の方へとマグロ包丁をもって駆けていくCNVLの背中を見ながら、私もインベントリから【HL・スニッパー改】をハサミ状態で取り出し印章を捺印する。

攻撃と拡張の印章を武器に、それ以外のバフ系印章を【印器乱舞】を使い、革鎧のプレイヤーを含めた前衛に対して使い、その能力を強化していく。

革鎧のプレイヤーは、一瞬自分の方へと飛んできた印章の彫ってあるトンカチにビクついたものの、私やCNVLが受け入れているのを見てそのまま受け入れてくれた。


これで強化は完了した。

あとは目の前の天使を狩るだけだ。



天使を狩るのに初め程時間は掛からなかった。

というのも、単純にCNVLが大技を使わずにずっと接近し続けていたのが大きな理由だろう。

彼女の戦闘スタイルは基本至近距離での多種武器を使った近接戦闘。

自身の身体すらも武器にするそのスタイルは、一撃に重きを置いたものではない。


その戦闘スタイルに、私と革鎧のプレイヤーの相性が良かったというのも勿論存在する。

私は今まで彼女と共に経験してきた戦闘から、革鎧のプレイヤーはその戦闘におけるセンスから。

自身の得意な距離で適度に攻撃を加えていき天使の守りを削りきった。


「ありがとう、助かった」

「こちらこそ。そっちのパーティが居なかったらあんなに早く倒せなかったわ」

「はは、世辞はやめてくれ。……自己紹介を。オリエンス所属の日向(ひゅうが)だ。【リッパー】系統とだけしか伝えられないのを許してほしい」

「大丈夫よ。私はハロウ、こっちはCNVL……と、説明は要らなかったかしら」


革鎧のプレイヤー、もとい日向のパーティの顔を見るにこちらの名前は知っているらしく、大丈夫だと首を縦に振って肯定された。

私はオリエンスで何か悪事を働いた覚えはないため、覚えられるようなことは……と考え、前に行われた決闘イベントの事を思い出した。


「もしかして決闘イベントに参加してた?」

「あぁ。2回戦で負けたが……一応そっちのCNVLさんと同じブロックだったかな。うちの魔法使いのLilyはハロウさんと一緒だったらしい。僧侶の方はケイデンスって名前だ」

「「よろしく」」

「あー……既視感があったのはその所為ね。改めてよろしく、Lilyさん」

「こちらこそ。いつかお手合わせ出来たらしましょう」


魔法使いと言われたLilyさんは【ラミレス】系統のプレイヤーらしい。

ちなみに本人は意外と声が渋い青年だった。


「ところでみなさんはどういった要件で、今のオリエンスに?」

「あー、争う意味はないわ。そっちの酔鴉と同盟の話をしようと思ってたのに全く来ないし、そもそもフレンドコールすらも繋がらなかったからこうして出向いただけよ」

「……成程。連絡は取れました?」

「えぇ、先程ね。そろそろ来るんじゃないか――「悪ィ!待たせた!」――ほら来た」


ドシン、とすぐ近くに大剣を手に持った赤い髪の青年が空から落ちてきた。

私達の待ち人だ。


「ん?日向ンとこのパーティじャねェか。共闘でもしてたのか?」

「えぇ。丁度天使と戦ってて」

「成程な。……すまねェ遅れちまッて。連絡出来たらよかッたんだが……」

「大丈夫よ、こっちも連絡できないのは気が付いていたから問題なし。じゃあ行きましょうか……酔鴉は?」

「天使の所に置いてきてる。あれならフラッとどッかに行かねェからな」


そんな話を軽くして、日向達のパーティとフレンド交換をした後に禍羅魔の案内で酔鴉の待つ方面へと走って向かうことにした。

その道中、お互いが分かっていることを掲示板を随時確認しつつ交換し合い、穴を埋めていく。

するとだ。


「……中央区画に天使が大量にいる?」

「あからさますぎねェか?」

「でも放っておく意味もないわね……一度合流してからまた考えましょうか」


デンス、オリエンスともに共通して、中央区画に天使が大量に集まっているという旨の書き込みが何個か発見出来たのだ。

何か獲物を発見し、そこに集まっているだけならばそこまで話題にはならないだろう。

現にこうしてオリエンス内を走っていても、2~3体ほどの塊ならばちょくちょく見かけることはあるのだから。


しかしながら、中央に集まっているのはその比ではないらしい。

調べる事が増えたなと少しだけ頭が痛くなるのを感じた。


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