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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 2 第4章 天使にレクイエムを
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Episode 9


どうやっているのか、酔鴉はそのまま空中でカウンター攻撃を周囲へと放っているパラケルススへ継続してダメージを与えているようだった。

それも、自身はダメージの一切を負わない形で、だ。

あとで聞く事が増えてしまったなと思いつつも、声をあげる。


「そろそろ4割に届くわよ!」

「了ッ解!【酒吞】!」


私の声を聞いた酔鴉は、虚空から何か液体が入った瓶を取り出しそれを一気に呷った。

……しゅてん……酒を呑むって書いて【酒呑】?CNVLと同じ系統のスキルかしらね。

恐らくは酒を呑んだ酔鴉は、その身体から淡い赤色の光を放ち始めた。

私のよく知るコスト消費型の【食人鬼】のスキルと似ているのならば……彼女の使った【酒呑】は元となった素材と似たような性質を一時的に得る事が出来るのだろう。


そのまま彼女は腕を振り下ろし、パラケルススを地面へと叩き落とす。

それと同時に彼女の身体の光が消えていったため、恐らくは回数制限でもついているスキルだったのだろう。

よほどの威力だったのか、パラケルススが落ちた地点からは土煙のようなものがあがってしまい、彼の姿が確認できなくなっている。

実験室なのに土煙が発生しているのにも疑問は覚えるが、今はそれを考えている暇はない。


「順調にいけば次はシルフィードの筈よね……ッ!?」


未だ飛んできている水弾を切り落としつつ、土煙の方を睨む。

しかし確認できたのはパラケルススの姿ではなく、土煙の中からこちらへと向かって放たれた炎の弾だった。

水弾と同じ要領で対処しようとし、すぐさまその考えを捨て横へと避ける。

水弾はまだ勢いを失いその場に落下するだけだからよかったものの、炎でそんな事が間近で起こったら私の身体が焼かれるだけだろう。


……シルフィードは3階層で見た通り風の攻撃を使ってくるはず……カウンターでも今までと変わらないなら使ってくるのは風じゃないとおかしい……?

未だに払われずパラケルススの姿を隠している土煙を見ながら考える。

今まで私が考えていた【精霊外装】の法則が間違っていたのか、それとも先程の炎の弾がシルフィードでのカウンター能力なのか。


「あっちゃー……ごめん、やりすぎたっぽい」

「……説明してくれる?」

「アレ、というかさっきの炎弾はサラマンダーでの攻撃なんだけど、アレがカウンターとして出てくる時の条件っていうのがねぇ――」


近くに降りてきた酔鴉が苦笑しながら話し出す。

その視線は鋭く、土煙の方を睨んでいたが。

……そういえば、なんであの土煙は消えていかないの……それに水弾もいつの間にか止んでいる……?

そう、疑問に思った瞬間の事だった。


「――ダメージを一定量一度に与えるとなる、隠し形態の攻撃なのよ」

『Mode All Elementals。最後に戦闘能力の確認だ。お客人方、どうか最期までお付き合い願おう』


土煙が何処からか吹いた風によって払われた。

否、その風は声の主である彼の身体から生じていた。

先端に火が灯った尻尾を持ち、どこか岩を思わせる鎧を身に着け。

天女のような水の羽衣を周囲に漂わせ、そして彼の周囲に薄緑色の風が彼を守るように吹き荒れていた。

今まで戦った全ての形態の特徴と、1つ知らないがその出自が予想出来る特徴を持った状態で現れた彼は、今までのようにただ棒立ちになっているのではなく、こちらへとゆっくりと歩いてきていた。


「……カウンター主体のボスじゃなかったの?」

「今までは、ね。この形態から普通に戦闘になっちゃうのよ」

「もしかしてあんなこと言いながら狙った?」

「……なんのことやら」


はぁ、と息を吐く。

どうにも私の周囲にいるアタッカーに分類される人間は好戦的な性格をしているのが多い。

大方、ただただカウンターだけを避けて攻撃を与えるだけの作業に嫌気がさしたか、暇だったから面白くしたいとかそういう理由だろう。


「まぁ、ただ」


彼女の気持ちは分かる。

分かるし、事実私もそう思っていたために少しばかり笑みが零れてしまう。


「いいわね、ここからが本当の本番?」

「そういうこと。トップギアに一気に上げていきましょう」

「場合によっちゃ爆発モノよそれ」

「それくらいの覚悟って事よ」


そんな事を言い合いながら、私と酔鴉は構える。

こちらが話している最中にもゆっくりではあるものの、パラケルススは近づいてきているのだ。

彼のHPを確認してみると、残りは3割。

5割程から一気によくそこまで減らしたものだと感心する。


双剣からハサミ状態へと変え、切れかけていた強化を全て掛けなおし一度大きくジャキンとハサミを閉じる。

良い音だ。最近は双剣の状態で使っていることが多いものの、この武器は元々この状態で使うのが正しい使い方。


「さぁ、パーっと倒してお茶にでもしましょう」

「よっしハロウの奢りでデンスの方の喫茶店でお願いするわ」

「別にいいわ、収穫もあったからそれくらいは奢りましょう――行くわよ」


私の合図で酔鴉と共に走り出す。

予期せぬ状況にはなったものの、これが【精霊学者 パラケルスス】との戦闘の最終ラウンドだ。


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