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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 2 第4章 天使にレクイエムを
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Episode 7


ドカン、という音と共に。

私の身体は弾かれたように後ろに向かって飛んでいき、分かっていたかのように動いていた酔鴉に受け止められた。


「ありがとう」

「いえいえ。回復は?」

「自力で出来るわ。それより、アレがサラマンダーでのカウンターかしら?」

「えぇ、所謂爆発反応装甲(リアクティブアーマー)って奴ね。ダメージに反応して爆発するの。爆発の規模はダメージに比例するから……」

「成程ね、だからこんなことになった、と」


……完全な格上殺しじゃない。

【印器乱舞】によって再生の印章を捺印しながら、パラケルススの方を見る。

彼のHPは先程に比べ減ってはいるものの、与えられたダメージはまだ4分の1にも届いていない。

恐らくは一度に与えられるダメージに上限が設けられているのだろうが……それでも中々に面倒な相手であることには変わりない。


「……あ、【強欲性質】(スキル)切れたわ……っていうか、貴女も参加しなさいよ、戦闘」

「いやぁ、したいんだけど……相性が最悪に今悪くて」

「は?……あぁ、成程ね。確かにお酒と火じゃ悪いってレベルじゃないか」


酔鴉の【犯罪者】は【酔拳士】。

詳しいスキルの内容は聞いていないものの、その名称からお酒を使う程度の事は予想出来る。

というか、彼女の通り名である『泥酔姫』という名前からそれくらいは分かっていた。


「火酒とか使えば何とかならないの?」

「生憎と、こっちの区画ではそういうのは生産してなくて。他の区画なら……っていうか娯楽区画のデンス(そっち)からの輸入待ちよ」

「あらそう。なら検討しましょうかね」


今後の話も交えながら、私と酔鴉は再度構える。

私はハンマーを仕舞い、【HL・スニッパー改】を双剣状態で。

彼女は素手と、何かの液体が入っている瓶を。

結局の所、近接アタッカーしかいない私達には取れる選択肢は少ない。

いや、ほぼほぼ1つのみだ。


「さて、じゃあ行きましょうか」

「近接アタッカーの悩みって奴ね。こういう時にコレしかないのって」

「もう少し、というか次のアプデである程度緩和されるとは思うけれど」


ちまちまと遠距離攻撃でカウンターを受けないように攻めることが出来ないのなら、私達が出来る近接での攻撃で、ゴリ押すしかない。

瞬間、私達は飛び出した。

左右に大きく弧を描くように別れ、そして次の瞬間深くダメージを与えないように斬りつける。


斬りつけたと同時に爆発が起こるものの、先程のハンマーで引き起こした爆発と比べるとその規模は小さいものだ。

爆発の勢いで剣を持つ腕が弾かれそうになるものの、しっかりと握って離さないように気を付けて、二撃三撃と連続で攻撃を加えていく。

無傷とは言えず、度々発生している爆発によって削られていくHPを、無理やり再生の印章による回復効果で回復していく。


反対側も同じように……否、私の方よりも爆炎が高くあがっているのが見える。

攻撃力的にも、酔鴉の【犯罪者】特性的にも炎との相性が良すぎるのだろう。

あちらにも【印器乱舞】によって再生の印章を回してはいるものの、このまま長引くのは不味いだろう。


左手で切り上げ、右手で外側に払う。

パラケルススは自身のカウンター以外には目立った攻撃はせず……たまに頭部を狙った攻撃に対して腕をかざすことによって防御する程度の行動しかしていない。

相手の攻撃を避ける必要がないというのは非常に楽だ。ダメージを受けるだけの案山子を相手にしているのと同じだけなのだから。

そんなことを思いつつ、頭以外の急所……肝臓の辺りへと右手に持った剣を突き入れようとした瞬間。


『……耐久試験、終了。――Mode Gnome』

「あっぶなッ?!」


突然、パラケルススが口を開いたかと思えば、彼の身体から無数の石と砂利が放たれた。

反応出来たものを弾きつつ、急所にそれらが当たらないように距離をとっていく。

弾けず、避けきれなかったものも多いため、HPが約3割ほど減っているものの……問題はそこではない。


「……また姿が変わったわね。言ってた台詞的に今度はノーム?」

「ノームは見ての通りよ。爆発することもないし私も本気で戦えるけど……どうする?」

「やるしかないでしょう。あんまり時間をかけて、後でうちのアタッカーに煽られるのは嫌よ私」

「ふふ、じゃあ行きましょう。あぁ、見た目通りに硬いから」

「了解」


パラケルススの姿は、大きな岩を思わせる姿へと変わっていた。

人型であることには変わりない。

しかしながら、その身体には顔までも岩で覆われており……大きさ自体も元の姿から比べると二回りほど大きくなっている。


「ちなみにアレのカウンターは?」

「石礫を散弾みたいに撃ってくるわよ。でも爆発よりはダメージは少ないわ。数は多いけれど」


やはり先程喰らった石などの攻撃はこの状態でのカウンターだったらしい。

私は【HL・スニッパー改】を仕舞い、ハンマーをインベントリから取り出しながら相手のHP残量を確認する。

……残り7割とちょっと。大体2~3割削るごとにモードが変わるタイプかしら。


今までにパラケルススが変化したのは、現在も合わせて2つ。

サラマンダーとノーム、ということはだ。彼の提唱した四大精霊に合わせているのであれば、あと2種変化を残しているということ。

それも、水と風という少し嫌な想像が出来るものが残っている。


「今考えても仕方ない、か」


そういって、私は足に力を入れ……る前に切れかけていた印章を全て捺印し直し。

ついでにハンマーに対して拡張の印章を捺印し、その攻撃範囲を拡張しておく。

さぁ、第二ラウンドの開始だ。


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