表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 2 第4章 天使にレクイエムを
115/194

Episode 4


探すのが大変だった、というよりは大変だと考えていたノームを倒した後は言ってしまえば順調だった。

何せ、サラマンダー達はノームと違って大地の中に隠れることはできないのだから当然だ。


探し方も単純で。

攻撃が飛んできた方向へと素早く移動し、それっぽい所を攻撃するだけだ。

但し、それだけでも効果があるのだから簡単……というよりは、本当に多数との戦いのチュートリアル、勉強的側面が強いのだろう。

ある程度【決闘者の墓場】で多数との戦闘に慣れている私にとっては余裕があるのだが。


「おっと、そこね」

『ぐッゥ……!』


横降りに振ったハンマーに何かに触れたような感触があり。

それと同時、印章による追加の衝撃が加えられ、見えていなかった姿がそこに現れた。

水気を纏った少女の姿をした精霊、ウィンディーネだ。


水を司る彼女に、普通は私の持つような打撃攻撃は通用しないのが無難なのだが……恐らくは【衝撃】によって引き起こされた衝撃波が、実体のないはずの彼女にダメージを与えたのだろう。


『私は近接は専門じゃないのよッ!』

「【デュアルシギル】。逃さないわよ?」

『あぁッ……!』


空中に掻き消えるようにして姿を隠そうとしたウィンディーネに対し、私は【デュアルシギル】を発動、そのまま先ほどと同じようにハンマーを振るう事で、二重の衝撃波を彼女へと叩き込んだ。

そのお陰か否か。

恨みがましい表情をこちらへと向けながら、ウィンディーネは光となって消えていく。


「残りは2体、と。うん、ノームを先に倒せて良かったわ。分かりやすい」


炎を司る精霊、サラマンダー。

風を司る精霊、シルフィード。

どちらも今まで倒した2体よりも見つけやすい。


というのも、サラマンダーはその司っている属性からか、彼が身を隠している場所の近くまでいけば、熱を感じることが出来る。

シルフィードに関して言えば、段々と風の勢いが強くなっていくのだ。


その為、


「【強欲性質】、【デュアルシギル】」

『きゃっ!?』

『グゥ……ッ!!』


すぐに発見し、逃げられる前にハンマーを振るう。

今回、私が発見していたのはシルフィードのみだったが二重に発生した衝撃波によって、近くにいたのであろうサラマンダーにもダメージが通ったようだった。

瞬間、私の発動させた【強欲性質】によって、私のステータスが強化される。

その後の展開はほぼほぼ一方的だった。


ステータスが一時的ながら強化され、ダメージを与える度にその度合いも増えていく私を前に逃げられるはずもなく。

そのままハンマーに潰され、衝撃波によって散らされて。2体の精霊は光となって消えた。


-【四大精霊】が討伐されました-

-次の階層へと続く階段が出現しました-

-決闘イベントを終了します-


システムログが流れたのを片目で確認しつつ。

私はやっと終わったという疲れと、これからここに来る度私も酔鴉のような扱いをうけそうだという悲観から息を吐いた。



階段が現れた、ということで探してみると。

荒野の中にぽつんと扉が出現していたのを発見した。


恐る恐るその扉を開いてみると、その先には何処かの廊下のような通路が広がっており。

そこには酔鴉が何やらスクワットのような事をしながら私の事を待っていた。


「お疲れ様。意外とかかったわね」

「生憎と、こっちは機動力に乏しいのよ。代わりのものはあるんだけど……それも条件付きだし」

「成程ねぇ。よし、じゃあ行きましょうか、4階」

「あら、いいの?少しは休憩しなくて」


筋トレのような事をしていたのだ。

少しは休憩が必要なんじゃないかと思いそう聞けば、


「要らないわ。ある程度身体が冷えないようにするためのものだもの。ゲーム内でも意味があるかは置いておいて……気分的には大丈夫だしね」

「そう?じゃあ行きましょう」


身体を冷やさないため。よくスポーツをする人などが試合や練習の前に身体が万全に動かせるようランニングなどをすると聞いたことがある。

詳しい効果のほどは知らないが、酔鴉のやっていたこともそれと同じようなものなのだろう。

本人が大丈夫というのであれば、とそのまま私達は階段でそのまま4階へと降りていった。


--第三区画 第一階層ダンジョン【喪揺る地下都市】 Hard 4F


階数表示が出た瞬間、私達の目に飛び込んできたのは何処かでみたような研究施設の廊下だった。

ほぼほぼ【決闘者の墓場】の内装と同じようなそこに私が驚いていると、酔鴉は得意そうにこちらを見て笑った。


「ふふ、驚いた?ダンジョンって言ってもオリエンス(うち)にこんな近代的な階層があるとは思わなかったでしょ?」

「あー……なんというか、えぇ。驚きはしたわね」

「でしょうでしょう」


良い機嫌になっている彼女に真実を伝えるのは忍びないため、そのままそっとしておくことにする。

今度彼女が【決闘者の墓場】に挑む時に教えればいいだろう。


「一応想像はつくけれど、この施設は?」

「まぁ前の階層に居た精霊達が良い例ね。あんなのを作ってるのがここってわけ」

「うん、まぁ予想通りねぇ……」


精霊を作り出す。

言葉にすれば単純ではあるものの、それを簡単に成せるとは思えない。

前にやっていた魔術のみのVRMMOでも、精霊を『生み出す』という事に関してはそれ専用の魔術が必要だったくらいなのだから。


「さて、とりあえず先に進みましょうか。5階層がボスよね?」

「えぇ。一応ここは迷路になってるけど……敵が来る方向に階段があることが多いわよ」

「成程。じゃあ行きましょう」


まずは敵を探すところから。

そう思いながら、酔鴉と共に1歩4階層へと踏み出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ