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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 1 第3章 オンリー・ユー 君だけを
109/194

Episode 40


--第二区画 第二階層ダンジョン 【決闘者の墓場】 5F

■【印器師A】ハロウ


ファウストが白い骨の装甲を纏った瞬間。

私の顔に浮かんだのは、笑みだった。


手に持つ双剣をハサミへと変えながら。

彼の目の前に立ち、【HL・スニッパー改】を彼の胴体を装甲込みで鋏み込んだ。


「【洋墨生成】、【印器乱舞】ッ!」


ガキンッ、という音が聞こえると共に私は【印器師】のスキルでインクを再び身体に纏わせるように生成し。

懐に入れてある攻撃と拡張の印章を選択し、自身へと捺印する。

瞬間、ハサミを持っていた手の片方を使いスキルの効果で宙に浮いていた印章を捕まえて、無理やり【HL・スニッパー改】へと捺印した。


攻撃の印は、そのままダメージ増加。

そして、拡張は射程の増加。

ハサミの場合、射程の増加の効果はどこに現れるかといえば。分かりやすく刃と刃の間に現れる。

刃が当たっていないのに断ち切れたりするようになるのだ。


そして今のように硬く、ハサミの刃が入っていかない相手を鋏み込んでいる状態でそれを行った場合どうなるか。


「グッ、オォオ……ッ!!」

「硬ったいわねぇ!」


結果から言えば、無理矢理にその射程を増加させる。

バグなのか仕様なのかは分からないが、鋏んでいる状態で射程を延長するため、射程増加で現れた不可視の刃が相手の身体へとめり込むように出現するのだ。


ミシミシミシと徐々に侵食するような音が小さく聞こえ、私は笑みを、ファウストは少しの理性くらいはやはり残っているのか焦ったように私と上の異形の足へと視線を彷徨わせる。

そうして覚悟が決まったのか、上の足へと視線を定めた。

恐らくは【外骨装甲】があるため、少しの間ならば時間を稼げると思ったのだろう。


確かにそれは正しい。

このままならば、私の攻撃がファウストの身体に到達するまでにCNVLの【食人礼賛】の効果が切れるだろうし……そうなればこうして近くにいる私なんて格好の的だろう。

しかし、彼は目の前の事に集中しすぎて忘れている。

彼に大ダメージを与えたのは私ではないことに。

今も、1人。ファウストへと確実に攻撃を与えられる者がいることに。


『Good Bye :-)』


この戦闘中何度目かの風切り音が私の耳の横を通り過ぎていく。

巨大な杭のような金属製の矢が何本か連続で後方から放たれ、ファウストの頭と胴体へと突き刺さっていく。

それを見た私はハサミから手を離してその場から離脱、CNVLも察したのか空中でどこか遠い目をしていた。


瞬間、金属製の矢に張り付けられている爆発する紙のようなものが発光し、起爆する。

撃ちだした矢全てが爆発するようになっていたのか、連鎖するように爆発を起こしそのまま黒い煙によって彼の姿が見えなくなる。


-【魔骨学者 ファウスト】、【死骨王者 グレートヒェン】が討伐されました-

-MVPが選出されました:プレイヤー名 メアリー-

-撃破報酬、およびMVP報酬が配布されます-

--System Message 『称号【決闘場の真実を知る者】を獲得しました』

--ALL System Message 『【決闘者の墓場】が攻略されました。これにより第二階層ダンジョンのHard modeが解放されます。また、これにより3週間後に第二回大型アップデートを行います。詳しい時間帯などは公式HPに記載されますので、そちらをご確認ください』


「……ぉう!?」


【食人礼賛】による足の生成、ファウストによるその足の受け止めによって空中にいたCNVLは、爆発により足が破壊されたと同時に支えるものがなくなったのか私の近くへと落下してきていた。

高さが高さなためやろうと思えば受け止めることが出来ただろうが、落下地点から少しだけ離れておく。


べちゃり、という音が聞こえてきそうな感じでそのまま地面へと落下したCNVLは、すぐに身体を起こしこちらへと恨みがましい目を向けてくる。

が、それに反応せず私は爆心地に落ちている【HL・スニッパー改】を回収した後に、メアリーの方へと歩いて行った。


「メアリー、凄いじゃない。おめでとう」

『あ、ハロウ!お疲れ!ありがとう!(*‘∀‘)』

「いてて……皆お疲れ様。マギくん悪いけど回復ちょーだい」

「はいはい、このゲームに痛覚設定ないでしょう。皆さんお疲れ様です。【散布】」


あっけない、といえば間違いがありそうだが……それでも思ったよりもパっと終わったボス戦だった。

初トライ時にあそこまでボロボロに負けたのは何だったのかと言いたくなるほどに。


「あは、これからもあんな感じの特殊なギミック持ちが出てくるのかねぇ」

「まぁ……ボスってのは基本的にどのゲームでも先のステージの警告に使われたりするから。最近は少なくなってきたけれどね」

「次、といっても僕達が挑むとしたら次はここのハードですよね?」

『はーど……スケルトンどうなるんだろう……』


そんなことを話しながら、私達はダンジョンから出るべくテレポーターへと向かい。

第二階層のコロッセウムへと出た瞬間に、多くのプレイヤーへと囲まれることとなった。

今回は称号とか関係なく、単純に【決闘者の墓場】へと挑んでいるプレイヤーが少なかったために情報を聞きたいプレイヤーや、騒ぎたいだけの野次馬、ここぞとばかりに私達をPKしてこようとする者など兎に角大変だった。


何とかしてそこから抜け出した私達は逃げるようにセーフティエリアへと駆け込み、ログアウト。

掲示板の方にはメアリーが情報をあげておくと言っていたため、騒動に関してはある程度したら収まるだろう。


なんにせよ、今日は戦闘続きで疲れてしまった。


「……あぁ、でも悪くない疲労感ねぇ」


そう、ぽつりと漏らしてベッドへとダイブした。

意識は、すぐに闇へと落ちていく。



―――――――――――

PLName:ハロウ Level:8

【犯罪者】:【印器師A】

所属区画:第二区画 デンス


・所持スキル

【洋墨生成】、【デュアルシギル】、【印章暴走】、【印器乱舞】、【強欲性質】


・装備品

【HL・スニッパー改】、【Model:Flame】、【BW・ブラック】、【HL:ミリタリー】、【ヒューマニックHP】、【人革の手帳】、【人革の腕輪】、【革造りの網】、【劇場作家の炯眼】×2


・称号

【第二区画所属】、【娯楽を解放した者】、【本当の娯楽を知った者】、【廃都の決闘者】、【決闘場の真実を知る者】

―――――――――――


見覚えのない名前の装備は、コートとホットパンツです。

【HL:ミリタリー】の方がコート。

【ヒューマニックHP】の方がホットパンツですね。

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