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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 1 第3章 オンリー・ユー 君だけを
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Episode 37


--第二区画 第二階層ダンジョン 【決闘者の墓場】 5F

■【食人鬼A】CNVL


「やってるわけないでしょ!追撃ッ!」

「あはッこういうのは気分なのに分かってないなぁ!」


後ろから聞こえてくる怒声に笑って返しながら、今もなお黒い煙が漂っている爆心地の中心へと視線を向ける。

黒い煙の中、何かが動いてこちらへと近づいてきているのがそれだけで分かり。

私は新しくシェイクスピアの腕を取り出した。


ボス素材、それもノーマルモードの巨大な方の腕を取り出した私はそのままそれに食らいつき、再び【食人礼賛】を発動させた。

シェイクスピアの腕の便利な所はこれだ。

単純に大きさからなのか、1本だけで他のゾンビやスケルトンの部位とは違い【食人礼賛】を発動させることが可能であるという点。少しだけ集めるのは面倒だが……現状の私にとってそこまで強いとは言えないボスであるため、苦ではない。


私は新しく作られた異形の肉の腕を大きく振りかぶり、煙の中でこちらへ襲い掛かる好機を伺っているであろうグレートヒェンへと叩きつけた。

腕の勢いか、それとも他の要因もあったのか。

兎に角、私がそれを行った瞬間。その場に留まっていた黒い爆煙は周囲へと散り、その中にあったものの様子がきちんと視認出来るようになってくれた。


そこにはHPを既に半分以上減らしながら、叩きつけるように振るわれた私の腕を盾で防ぎながらこちらへと視線を向ける骨の化け物の姿があった。


「わぉ、すごいなぁ。流石にどこかしら部位破壊とかされてるんじゃないかと思ってたんだけど特になしか」

「関心してないで追撃追撃!早めにこっち倒せば倒すほど向こうも楽になるんですから!」

「あは、せっかちだねぇ。いいかいマギくん。こういうのはじっくりと観察する事が大事なのさ。なんで相手は生き残っているのか。見えていなかったであろう私の攻撃に反応できたのか。そこを考えなければ――」

「絶対そんなこと考えてないですよね先輩!」

「――あはッ、バレちゃ仕方ない。まぁでも実際観察は大事さ。今もこっちへ近づこうとしているグレートヒェンを腕で抑えてはいるものの……前から思っちゃいたが、彼女は少し脆い(・・)


そう、脆い。

盾による防御や骨の鎧によって堅く見えているものの、実際の所相対してみるとそれが見かけでしかないことが分かる。

確かに強い。強いし、脆いとは言ったもののきちんとした防御能力自体は持っている。

しかしながら、そんな相手に私とマギの2人でほぼほぼ一方的にダメージを与えている状況を考えると、少しだけ考えてしまうこともある。

……そう、例えば……ファウストから見えない形でバフを掛けられていたとか。


明らかに、前回戦った時よりも弱い。

ならば差異は何か、といえば。今回はファウストが応戦しなければならない状況となっていることだろう。


「強化無しだったらこれくらいの強さ、ってことかぁ。うん、役割分担はしっかりとって意味かな。……まぁ、考えるのは任せよう」


腕が消え、自由となったグレートヒェンがこちらへと剣を振り上げながら駆けてくるのを見ながら【菜切・偽】と【解体丸】を構え、マギへと声を掛ける。


「マギくん、次最大火力!」

「ッ!了解!」


返事が聞こえた瞬間、目の前で剣を振り下ろそうとしているグレートヒェンに対し、にっこりと笑いかけた。

そしてそのまま横へと跳び、剣を避け前転する事でグレートヒェンの股下を通って背中側へと出る。

すぐに立ち上がり、こちらへと背中を向けることになっている骨の化け物へと飛びかかった。

しかしそれは攻撃するためではなく。

この骨の化け物の首筋、骨の鎧で普段見えていない部分へと近づくためだ。


「骨も元々は肉があったもの、だからこういう弱点は変わらないと私は思うんだよねッ!」


骨の鎧だからか、所々に突起があり。

それを足場に跳ねるように登って、目的の場所までたどり着き。

両手に持つ、得物をそこへと叩きこんだ。

瞬間、何かをこすりつけるような甲高い音が聞こえ始めるが気にしてはいられない。


「マギくん!」


声を掛けた瞬間、こちらへと投げられるソレは白く輝いているフラスコで。

丁度、私を巻き込むようにそれはグレートヒェンの頭へと直撃し白い光と共に爆発した。

避けられる位置でも、防御の姿勢をとれるような状態でもなかったため、両手の得物を離し私はインベントリから在庫の残っていたゾンビの腕やスケルトンの腕などを取り出して出来る限り口に詰め込んだ。




「……派手にやったねぇ。けほっ」

「いやぁ、先輩が最大火力っていったので。研究中の熱を発する薬品と、熱によって発火する薬品、可燃性で現実の爆薬も真っ青な大爆発をする薬品を組み合わせたわけなんですよ」

「君そんなものを愛する先輩に向かって投げつけたのかい?」

「愛する……?」

「あは、後で覚えてろよ」


先程とは違う白い爆煙の中から、私は這うようにしてマギのいる方へと移動する。

周囲には敵影はなく、代わりに何か光るものが上へと上がっていくのが見えた。


溜息を吐きつつ、駆け寄ってきたマギに治療されながらハロウが戦っているであろう方を見る。

彼女も頑張っているのだろう。少し休んだら私も行かなければならない。

……あと、半分。頑張るしかないねぇ。




――CNVL・マギコンビ、グレートヒェン撃破。


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