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4.優しさ

 

 その後しばらくして、裕也は転校する事になってしまった。何でも、有名な医者の近くに引っ越すらしい。すごく有名な先生で、裕也が負った怪我を治せるらしいのだ。

 

 裕也と別れる時、クラスメイトは悲しみながらも、裕也の足が良くなるように寄せ書きを書いたりして教室から送る事にした。


 裕也は泣きながら、それでも笑った顔をして転校していった。最後の台詞は、裕也らしかった。


 「皆ありがとう。俺は絶対に足を治すからよ! またサッカーしようぜ!」


 ◇◇◇


 裕也が転校してからというもの、クラスでは祐也のことは話題に上がることは無かった。


 祐子自身も転校した祐也のことは数日もすると気にならなくなったし、クラスメイトも同様のようだった。


 祐子にとって裕也が転校した事よりも、上級生の方が気になっていた。

 上級生の言い放った台詞は心に残り続け、祐子の心の奥深くに染みついていた。


 罰を受けずに逃げた上級生は新しいクラスで幸せに過ごしている。そう思うと心が痛くなる祐子だった。


 祐也は何が悪かったのだろう。祐也はどうしてそんな目に合わなければならなかったのだろう。

 何と理不尽でやるせない事なのだろうと、心からそう思った。

 だから裕子は、放課後に優実先生を見つけて、もう一度、聞くことにした。

 

 「優実先生、上級生は何故、罰を受けないのですか? 裕也は足を折られました。サッカーもできなくなった。上級生は転校して、新しい学校で元通りです。先生に怒られただけです。裕也の足は戻りません」


 「裕子さん、貴女の言う通りよ。先生も許せないわ。でもどうしようもないの、御免なさい」

 

 優実先生は悲しそうな顔をして、裕子にそう答えてくれた。 


 「違う、私は先生に謝ってほしいわけじゃない。上級生が裕也に謝らなきゃいけないのに、それをしてないから怒ってるの。上級生は、意気地なしのヘタレよ」

 

 「えぇ、そうね。謝る事のできない上級生君はダメだわ。どうしてあんな風に育ってしまったんでしょう。裕子さんみたいな優しさが少しでもあればよかったのに」


 優実先生はそう言って、私の頭を撫でてくれた。 


 裕子は思った。きっと、優しくても同じことをしたに違いないと。裕也に酷い事をした上級生は、そういう生き物なのだと。


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