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3.違和感

 

 学校で、裕也という男の子がいた。こいつは学校のガキ大将で、いつも教室を仕切っていた。掃除当番はいつも人に押し付けて、外に遊びに行っていくような奴だ。

 それでも根のいい奴で、たまに暴力も振るうが、人を虐めたりすることはしなかった。孤立している子がいれば何かとサッカーや野球等の遊びに誘ったりしていた。 

 だから、クラスメイトも裕也の事を好いていたと思う。


 そんな裕也に、一つ不幸が起きた。所属するサッカー部の活動の上級生の子に意地悪をされたのだ。最初は小さなもので、声をかけても無視されたりする程度のものであったが、いつの間にかモノが無くなっていたり、陰口を言われるようになった。


 勿論クラスメイトは裕也の事を好意的に思っていたので、最初は裕也を庇いたてしていた。一緒に無くなった上履きを探したりした。上級生の虐めの理由も、裕也がサッカーが上手いというだけの仕様もない理由だった。

 そんな事で、裕也も上級生にしょっちゅう喧嘩を売っていた。


 「上級生は、根性がねぇからこんな事をするんだ。俺は絶対に、抵抗を辞めないぜ」


 そう言って上級生複数に喧嘩を売っては怪我をしていた。裕也はそれなりに喧嘩も強く、勝つことはなくても負ける事もなかった。


 だが、ある日の事。

 裕子が見た時、裕也の足には分厚いギブスと包帯が捲かれ、車いすに座っていた。

 後で聞いた話だが、上級生に足を折られたというのだ。野球のバットか何かで叩かれたらしい。


 だから裕子は裕也を慰めようと思って、一言声をかけたのだけど、それが良くなかった。

 

 「足が治れば、またサッカーもできるじゃない。大丈夫よ、あんた上手だし」


 いつもの裕也ならおどけて冗談の一つでも返してくれるのだけども


 「裕子、俺の足。治んないんだってよ。神経が傷ついたらしくて、リハビリに何年もかかるらしい。もうサッカーできないってお医者さんが……」


 裕也は泣き出してしまった。私はその話を聞いてとても驚いてしまった。

 そんな事知らなかったし、裕也も一月もすればいつも通りに生活になると思っていたから。

 裕也の足は二度と戻らない。無慈悲な現実だけが目の前にあった。


 そんな出来事の後、裕子は裕也をひどい目に合わせた上級生の事を調べてみた。

 聞くところによると引っ越すらしい。中学生では停学処分も退学処分もなく、裕也に謝らずそのまま逃げるように転校してしまうらしい。


 裕子はそれを聞いて、怒りに身を震わした。だから、上級生が転校するまでの僅かな時間に、上級生に言ってやった。私もきっと酷い目に会うと思ったけど、それでも黙っていられなかった。そんな事、何かがおかしいと思った。


 「あんた、裕也に酷いことしたやつね。裕也に謝らず、逃げるように転校するなんてどういうつもり」


 「あんなの、あいつが悪いんだ。後輩の癖に身の程を知らねぇ。あいつのせいで俺が転校しなきゃなんねぇ。おかしいだろ? あいつさえいなけりゃな」


 上級生は悪びれずにそう言った。私はそれを聞いた瞬間に、上級生を頬を叩こうとして止められた。優実先生がいた。


 「貴方達、何してるの! ほら、裕子さんも離れて。上級生君もなんてことを言うの! きいてたわよ」


 優実先生は上級生を職員室に呼び出して、裕子は先に帰してくれた。

 裕子は優実先生に上級生の事について教えてもらいたかったけど、教えてもらえなかった。数日後、上級生は転校した。


 残されたのは、足を折られた裕也だけだった。


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