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第5話 探索

今回は主人公視点ではありません

 クリフ




 ミルス村についた翌朝、俺たちはさっそく森に向かうことにした。

 一通りの準備は昨日のうちに済ませてあるので朝食だけをとってからすぐに出発した。

 森の入り口では昨日約束をしたハンスが待っていたが若干緊張気味だった。



「ようハンス、今日はよろしくたのむぜ」


「ああ、案内役はまかせてくれ」



 楽観されるよりはこれくらいの緊張感を持ってくれた方が良いだろう。



 昨日は馬車の旅ということもあって皆ラフな格好をしていたが、今日は全身をきっちりとした装備で固めている。

 まあレノンだけはいつも同じ格好なので変化は無いがな。



「それではさっそくですが森に入りましょう。

 各々の役割は昨晩決めた通りです。

 ハンスさんはすみませんが私のそばで案内をお願いします」



 こういった作戦はレノンに一任している。

 俺が考えてもろくな事にならないのは実証済みだし何よりめんどくさい。


 隊形はそれほど凝ったものではない。

 シアが進行方向周囲の偵察、カリンが前方警戒、俺は殿で後方の警戒、レノンは中央で指揮を執る。

 今回はハンスが一緒なのでレノンの傍に居てもらう。


 最初に組んだ時はシアに偵察が務まるのか?と思ったがそんな心配は杞憂だった。

 光と風の魔法を駆使して周囲の警戒にあたるその姿は並の冒険者と比べ何倍も優秀だった。

 周囲の偵察をしているという事は俺たちよりも多くの距離を移動しているはずだが、たまに指示があるだけでその姿はほとんど捉えることが出来ない。



 森の中はぱっと見だと平和そのという感じだ。


 肉食の獣も山に近づかない限りはおらず、話に聞いていた通り絶好の狩りスポットだと思う。

 俺も仕事が無ければ狩り道具を持って来たいくらいだ。


 だが今回狩らなければならないのは魔物と呼ばれる化物らしい。

 聞いたことはなかったがギルド長が危険だと言うのだ、生半可な相手ではないだろう。


 


 今回は案内役がいるので第1の目的地までは問題なく到着出来た。

 話に聞いていた通り鹿の死骸だと思われる物はあった。

 だがもうほとんど骨になっており、臭いがするというだけで黒い液体の付着やその痕跡を見つけることが出来なかった。



「おかしいな、あの時はあれだけ派手に撒き散らかされてたのに痕跡すらないなんて」


「鹿の死骸っぽいのはあるけどここで合ってるの?

 そんな化物が居たような様子はないけど」



 確かにカレンの言うとおり何かが居たような痕跡は無かった。

 動物の死骸くらいなら別段珍しい物ではなく、それだけでは肉食の獣の存在すら疑わしいくらいだ。

 だが俺はハンスが嘘をついていたり見間違えたりしているようには思えなかった。



「とりあえず周囲の調査をしよう。

 シアは偵察、俺は調査に出るからカレンとレノンはハンスの護衛をしながらここの調査をしてくれ」


「うん」「おっけー」「分かりました」



 分担を決めてしまえば行動は早い。

 シアの姿はすぐに見えなくなって、カレンとレノンはハンスと一緒に死骸を詳しく調べ始めた。


 俺もさっそく周囲を調べて回る事にする。

 とは言っても聞いた限りここに例の魔物が出たのは半月くらい前の話だ。

 情報を集めるには些か時間が経ち過ぎていた。

 その為、痕跡を見つけるというよりは当たりを付ける為の情報を集めるといった感じだ。


 魔物とは言っても野生の獣の一種だと思われる。

 ならば縄張りは持っているだろうし今回の現場もその範囲に入っているはずだ。


 しばらく周囲を調査していたがいくつかの獣の足跡を発見したくらいで他に有用な情報は得られなかった。

 足跡の位置は死骸が有った場所から見て村とは反対方向に点在していた。

 

 山方面と川方面、森の深部である北西方面に足跡はあったが、正直どれも似たような足跡で確証を得られるような物ではなかった。

 だが俺はどうしても森の深部が気になった。

 冒険者としての勘とでも言えばいいのか、肌がぴりぴりとして危険を感じ取っているのかもしれない。



 ぐだぐだ考えるのは苦手だ、ならとりあえず行ってみるか。



 決めてしまえばすぐ行動だ。

 シアに合図をしてからさきほどの地点に戻った。



「そっちの様子はどうだ、何か分かったか?」


「いえ、鹿を襲ったのはやはり狼くらいのサイズの獣だろうという事くらいですね」



 レノンは鹿の骨に残って噛み傷などから相手を調べようとしていたみたいだがやはり情報は少ないようだった。



「クリフの方はどうなのよ、何か手掛かりはあったの?」


「獣の足跡がいくつかあったがおそらく魔物の縄張りは北西の森の奥だな」


「なんでそう思うのよ?」


「勘だ」

 

「勘…ね。

 まああんたの勘だけは当てになるから信じてみましょうか」



 だけってなんだよ…と思ったが今更なのでいちいちツッコミを入れたりはしない。俺も大人になったもんだ。

 



 方針は決まったのでさっそく歩を進めたい所だが、さすがにハンスを連れて危険度の高い場所へ行くことは出来ない。

 なので昼の休憩を取った後、今日の所は山方面と川方面の確認だけをしてから村に戻る事にする。

 ハンスの案内で川の近辺や山の麓あたりを見て回ったがやはりこちらはハズレだったようで、変哲の無い森が広がっているだけだった。


 だが山の麓についたときに少しだけ気にかかる事があった。

 いつも無表情なシアが山頂の方を見て少しだけ険しい表情をしていた。



「何かあったのか?」


「…特に何も」



 俺には何も見えないがシアには何かが見えているのだろうか? 

 ここからだとけっこうな距離があるし今から調べに行くのは流石に難しい。


 それに今回は魔物の討伐が目的だ。

 山頂付近は縄張りの範囲に入っているとは思えないのでわざわざ行く事は無いだろう。


 気になっているようだが今日の所はそろそろ戻らないといけない。

 夏に近い時期ではあるが森の中は暗くなるのが早いのでそうなるまえに森を出たい所だ。



「今日はこのあたりで引きあげましょう。

 これ以上暗くなると森の中を歩くだけでも危険があります」


「そうね、一応当たりは付けられたし明日には片付けられるかな?」


「ああ、思ったよりも早く片付きそうだな。

 今回は報酬も良かったししばらくはうまいもんが食えそうだ」



 帰り道も行きと同様の隊形をとり警戒しながら森を抜けた。

 森を抜けたところで緊張感から解放されたハンスはへたり込んでしまった。



「あー…ただ歩いているだけのはずなのにどっと疲れちまったよ」


「そりゃそうだろ。

 俺たちだって慣れてきているとはいえ周囲を警戒しながら進むのは楽じゃないぜ」


「だろうな…やっぱ俺には気ままな農家生活の方が性にあってるみたいだよ」



 まあ冒険者なんてまともな神経のやつなら進んでなろうとは思わないだろう。

 よっぽどの物好きか一獲千金を夢見ているようなやつがほとんどだ。



「おつかれ様ですハンスさん。

 明日からは我々だけで森に入りますのでゆっくりと休んでください。

 本日はどうもありがとうございます」


「明日には討伐出来ると思うから楽しみに待っててよ」



 カレンとレノンもハンスの事を労ってくれている。

 だがシアだけは先の事が気にかかっているのかいまだに山頂の方を見つめていた。




 _______________________




 翌日

 俺たちは昨日当たりを付けた現場の北西側、森の深部に向けて歩を進めている。

 昨日と同じ隊形だが昨日よりも慎重に進んで行く。

 すでに敵の縄張りの中心地に大分近づいているというもあるが、それ以上に周囲の視界が著しく悪くなっているが原因だ。

 視界や太陽光を遮る草木が増え、まだ昼前だというのに周囲はかなり暗くなっている。

 目印を残している来ているのでなんとか分かるが、方向感覚すら曖昧になりそうな程の天然の迷宮だった。



「そろそろ中心に着くはずですが今の所それらしい痕跡はありませんね」


「なんか誘い込まれているような気もするんだけど大丈夫なのかな?」


「野生の獣なんだろ?そこまでの知性があるもんなのかね」


「獣だからと言って侮ってはいけませんよ。

 人間よりも頭の回転が早い生物は案外多いものです。

 ましてや今回は通常の獣ですらありません。

 魔物になった事によって知性が増している可能性もありますのでこちらが罠にかかる可能性も考慮しなくてはいけません」


「ならこのまま進むのは危険だな。

 直接中心地に向かうのは避けて…っとどうやら今回は杞憂だったみたいだな」」


 いつの間にかシアが近くまで来ていた。

 こちらまで来たという事はおそらく対象を発見したのだろう。



「対象…多分発見した」

今回も短いので2、3日後に次をあげます

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