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第13話 民を守る者達の戦い

※主人公視点ではありません

※視点が何度も変わります

 ガーネリフ




 私の名はガーネリフ、今回の任務は魔物の討伐と聞いたので隊長に志願させてもらった。

 過去に一度だけ魔物の討伐に赴いたことがあるのだがその際に多くの仲間を失う結果になってしまったからだ。


 その原因は対応の遅さにあったのだと思う。


 当時は知らなかった事だが、魔核が発生しておりそれを長期間放置してしまった事で魔物の大量発生を許してしまったようだった。


 核は周囲の生物を引き寄せる性質をもっており触れた物を手当たり次第魔物に変異させてしまう。

 さらに魔物に変異したもの自身も他の生物を核に誘引する性質を持っているので加速度的に増えてしまうのだ。


 単体で発生した魔物であれば核が存在しないので問題ないのだが、核が発生してしまった場合はどれだけ早く封印を行えるかが作戦の要になってくるはずだ。


 その為私は急いで部隊の準備をした。

 山と森の規模を確認し必要最低限の人数を確保してからすぐに現地へ行ってもらった。


 魔法薬の準備だけはしておきたかったが人数分の魔法薬を作るのに10日もかかると言われてはさすがに待つわけにもいかない。

 必要最低限の準備だけをして私自身もすぐに現地へ向かうことにした。


 現地は馬車で1日の距離にあるミルス村という小さな農村だ。

 こんな平和な村に魔物の群れが出てしまえば一溜まりもないだろう。

 一刻も早く核を封印しなければ…


 だが分隊長の1人からは今回の強行軍に対しての反対意見も出ていた。


 捜索中の村の警固を冒険者のみに任せるのか?

 魔法薬の支給も無しに部下を危地に行かせるのか?


 もっともな意見だと思う。

 私も通常の化物や魔獣が相手であればこんな強行軍はしなかっただろう。

 最低100人の人手が必要であれば200人で向かい、魔法薬を300は用意して行くだろう。


 だが魔物相手にそれはダメだ、仮に分隊長の意見を取り入れて十分な準備をしようとしたら準備に20日はかかるだろう。

 報告では4体の魔物が確認されたという事だったが20日もあれば200体以上には増えているはずだ。

 単体でも強い魔物がそこまで増えてしまうと派遣部隊だけでは相手を出来なくなるだろう。


 魔物の報告から日が浅い今なら多くても30体程度のはずだ。

 数が少ない今のうちになんとしてでも核を封印しようと思う。




 ―――――――――――――――――――――――

 コビ




 僕の名前はコビ、領主の軍に所属してから10年程だろうか。


 今回の任務は農村近くに現れた魔物の退治という事だった。

 魔物って何なんだろうね?魔獣かなんかの1種かな?


 まあ相手がなんであれ僕がやることはいつもと一緒さ。


 上の命令に従い下の意見を報告する。


 これさえ守っておけば任務に失敗したとしても大して責任を取らされることはない。

 今回も下から魔法薬の支給についての意見があったのでガーネリフ隊長に報告だけはしておいた。

 まあ報告したところで隊長からは支給が無いって指示を受けているんだからどうしようもないよね。


 僕らの分隊の任務は森北東部の捜索と魔物討伐だ。

 本命は本隊の向かっている北部と山なのでこちらにはいても魔物が1,2体程度だろう。

 指示された範囲だけを捜索したら後の仕事はガーネリフ隊長にお任せしよう。




 ―――――――――――――――――――――――

 レオーネ




 私の名はレオーネ、今回は魔物討伐の分隊長として任務に就く事になった。


 だが今回の任務はいつもとは様子が違う。

 コビのやつのやる気が無いのはいつもの事なのだがガーネリフ隊長のあの焦りようはなんだ?

 いつもは必要以上に慎重な人なのに今回に限っては異常なまでの早期解決を目指している。

 魔核を放置すると加速度的には魔物が増えるという話は聞いている、だがそれでももう少し慎重に行動すべきではないだろうか?


 私の分隊は今、森の北西部を捜索中だ。

 既に予定の7割の範囲は捜索したが魔物とやらが出て来る様子はまったくなかった。

 この辺りはかなり木々が多いので最初は視界の悪さに警戒していたのだが、ここまで何も出ていない事もあってか隊員達の緊張が緩んできている。

 良くない傾向である、この辺りで一度気合を入れなおす必要があるかもしれないな。


 このまま何事もなく終わってくれれば良いのだがこの静けさはある種不気味でもあった。




 ―――――――――――――――――――――――

 ガーネリフ




 どういうことだ…?


 我々本隊は森の北部から初めて山までが捜索範囲となっている。

 魔物の目撃情報があった位置から考えてここが本命だと思っていたのだがここまで1度も魔物と遭遇していない。


 すでに森北部の捜索は終えて山の捜索も半分以上は終わっている。

 このままいけば魔核の発見も間近だと思われるが…



「隊長!核と思われる黒い塊を発見したとの報告がきました」


「有ったか!」



 思っていたよりも早期に発見出来たことは喜ばしい。

 だがその報告を聞いてますます疑念が深まった。


 魔核が有ったという事は魔物の目撃情報が誤報である可能性は消えた。

 つまりは魔物はいるはずなのに魔核を無防備な状態で晒していることになる。


 なぜ魔核を守るやつがいない? いや、それよりも魔核を確認する事の方が先か? 封印処理班を先に呼ぶべきか?


 これからの行動について思考を巡らせていた私は、この時すでに後手に回っていた事に気付いてすらいなかった。




 ―――――――――――――――――――――――

 コビ




 まずいまずいまずい!何なんだよこいつら!これが魔物ってやつなのか?

 だとしてもなんでこんなに…10体以上も出て来るんだよ!



 早々に北東部の捜索を終え軽く休憩を取っていた時だ。

 隊員の1人が発した「なんだあれ?」の言葉と同時に10体以上の獣が現れた。

 気を抜いていた隊員たちは対処も出来ずに攻撃を受けてしまい7人がかなりの重傷を負ってしまっていた。



 くそっ、どうする?逃げるか?こいつらを囮にしてしまえば逃げるのは難しくないはずだ。

 だがその為にも逃げるための大義名分が欲しい…何かないか?…ん?


 なんだあいつら?なぜ襲ってこない?


 俺たちを警戒しているようだが襲い掛かって来るような気配がまったくなかった。

 それどころか徐々に俺たちから離れて村の方に移動しようとしていた。


 これは…もしかして…。



「皆下がれ!本体から応援を呼ぶ、一度引いて体制を立て直すんだ!」


「は、はい!」



 隊員達は俺の号令でケガをしたやつを助けながら本体に向けて後退していく。

 それと同時に魔物は俺たちを無視して村の方へ駆けて行った。


 よっしゃ、狙い通りだ!



「た、隊長、魔物が村の方へ!すぐに追いましょう!」



 こいつは何をバカな事を言ってるんだ?

 せっかく助かったって言うのにわざわざ危ない場所に行くわけないだろうが。


 だが俺の立場としては無視するのもまずい。

 なんとか頑張りましたという体を演じないといけない。



「よし、俺はすぐに本体に応援を要請するからケガをしていないやつだけで先に村に向かってくれ。

(よし、俺は一人で逃げるから助けたいならお前らだけで行け!)

 村は冒険者が守ってくれているから大丈夫だがお前たちも可能な限り手助けをしてやれ。

(村の雑魚どもだけじゃまず無理だからお前らもエサになって少しでも時間を稼ぎな!)」


「了解です!」



 バカどもが村の方へ駆けて行った。

 頭悪いなーあいつら、別に村の連中が何人死んでも良いじゃねーか。

 結果として魔物をどうにか出来りゃ任務としては成功だろうに。


 ま、あいつらにああ言った手前応援だけは呼んでやるかね、間に合わないだろうけど。




 ―――――――――――――――――――――――

 レオーネ




 北西部の捜索を終えて一息ついたタイミングで敵に襲われた。

 様々な獣の姿をしていたがあの冒険者が言っていた触手の様な物が生えているのであれが魔物なのだろう。


 休憩時にも警戒を続けていたおかげもあって負傷者は3人に抑えられた。

 だが敵の数は14体、私が加わったとしても1体につき2人で対処しなくてはならない。

 このままでは防戦一方でいつかはやられてしまうだろう。


 負傷した2名は先ほど購入した魔法薬を飲んでいた。

 少しでも効果があれば命に別状はないだろうがどちらにしてもこの戦闘には参加できまい。


 む?なんだ?あいつら何故襲って来ない?


 14体の魔物は最初の奇襲から一転、こちらを警戒するばかりで一向に襲ってくる様子が無かった。

 少しずつ移動をしているようだがそっちは…まさかあいつら村の方に行くつもりなのか?


 くっ、これでは引くわけにもいかない。


 冒険者が警固についているとはいえこんな数が行ってしまえば防ぎきれるものではないだろう。

 なんとかチャンスを見つけて数を減らさなければ…。



 ガキンッ!!



「隊長お待たせしました!もう大丈夫です!」


「俺も行けます!こんなやつらさっさと片付けてしまいましょう!」


「なっ!お前らもう動けるのか!?」



 対策を考えていると負傷していた2名の隊員が復帰して敵の攻撃を防いでくれていた。



「はい!もうばっちりですよ」


「傷も見て下さいよ、ほら、もう完全に塞がってます!」



 言われてから二人の傷を確認するともはや傷があった事すら分からないくらい綺麗に治っていた。

 1人は腕に大きな傷があったしもう1人にいたっては腹部を貫通されていたはずだ。

 いくら魔法薬が劇的な効果をもたらすものだとしてもこの回復速度は異常だった。



「しかしお前ら、傷が治ったのは良いがそんなにすぐに動けるのか?」



 そうだ、私の知っている魔法薬は使用するとしばらくまともに動けなくなるほどに体力が減退するはずだ。



「全然いけますよ!」


「むしろケガをする前より調子が良いくらいです!」


「そうなのか…」



 確かに二人の状態を見ても無理をしている様子はなかった。



「にしてもさっきの魔法薬美味かったな、また飲みたくなるぜ」


「ふっ、そんな冗談が言えるのならもう大丈夫だな、よしっ!一気に片付けるぞ!」


「「了解」」



 魔法薬の効果に思う所はあったが今は魔物の相手をするのが先だ。

 分隊長としてこの場を任されたのだ、一匹たりともここは通さん!

キリを良くするために今回は短め

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