オレたちの今後
バルコニーに設置されたイスに座って、アリス先生と話し合う。
結婚式をどうするのか、マリーナたちのことをどうするのか、などを相談して決める。
「マリーナたちのことは好きですけど、アリス先生が嫌なら結婚はしません」
「ちょっと抵抗はあるけど、あいつらは家族みたいなもんだし、今の生活とあんまり変わらないだろ?」
変わらないだろうな。
まあ子作りとかはするだろうから、そこは変わると思うけど。
「みんなで結婚ということでいいんですか?」
「アタシが結婚できるなんて思ってなかったからな~。それを思えば大した問題じゃないぞ。アタシが結婚しようと思ったら変なロリコンが相手になりそうだしな!」
世知辛いな。可愛いのに成長が止まったせいで寄ってくるのはロリコンだけ。
普通に成長していたら、美女になったんだろうな……切ね。
まあずっと若いお嫁さんだと思えば、みんな羨ましがるな。
「アリス先生は成長すれば美人になりますよ。今は美少女みたいですけど」
「なんか褒められてるのか子供扱いされてるのか微妙だけど……ありがとな!」
やっぱり笑顔が子供に見えるな。
イスに座ると足が地面に着かないのも、嬉しいと足をブラブラさせるのも、子供みたいで可愛いな。
「じゃあみんなで結婚するとして、結婚式はどうします?」
「それは1人1人希望を聞いたほうがいいんじゃないか? アタシにも結婚に対して夢があるし」
女の子だしな。男のオレには式なんて面倒に感じるけど。
「それなら1人1人個別にやりますか? マリーナとレイラは親に挨拶してからのほうがいいし、国も違うから作法も違っているかもしれないですし」
「いいのか? アタシは嬉しいけど、勇人は面倒じゃないか?」
「お嫁さんを幸せにするには努力が必要だと思うんで、面倒は面倒ですけど嫌ではないですよ」
「そっかそっか…………面倒なのは確かなんだな~。でも嬉しいぞ!」
面倒な気持ちまではどうしようもないから、そこは面倒でもお嫁さんのために頑張ることを評価して欲しい。
お嫁さんには出産とかを頑張って貰うわけだし、オレはオレで頑張ってお嫁さんを幸せにしようと思う。
結婚してから着ける指輪は、サイズを合わせて作って貰わないとダメだし、式の準備もあるし大変だな。
マリッジブルーになる前に準備を終わらせよう。それなら式に出るだけだし、面倒ってほどじゃない。
「そ、それとだな~。……初夜なんだけど……どうする?」
真っ赤になって可愛いな。
「それは結婚してから、アリス先生の準備ができてからでいいですよ。ただでさえ小さい体なんだし、覚悟ができてからで」
「なんか大切にされて嬉しいけど、求められなくて寂しいぞ! アタシの体が貧相だからか? 魅力がないのか?」
アリス先生のはマリッジブルーなのか、たんに自分に自信がなくて不安定なのか判りにくいな。
「アリス先生は可愛いですよ。体は小さいけど、可愛い体形ということで。色気はないですけど、そのぶん可愛いさがあるということで納得してください」
「……いまいち納得できないけど、とりあえず納得しておく。話が進まないしな。進まないと結婚が遠のくから」
少しだけ大人になったな~、アリス先生も。
30歳までに結婚したいという必死な女心かもしれないが。
こっちの世界では12歳くらいで結婚する貴族もいるらしいから、ロリコンという概念がないかもしれないけど、そのぶん年齢が高くなると行き遅れ扱いされるからな。
若いと思ってアリス先生に寄ってきても、年齢が27歳だから問題があるんじゃないかと思われる。
体に問題があるか、心に問題があるか、家に問題があって嫁に行けなかったと思われる。
この世界での結婚は、家を繁栄させるのが重要だから、逆に没落しそうな要素があると結婚しにくい。
子供を産めないとか、病気を持っているとか、問題行動を起こしそうとか、実家が借金まみれとか、実家が嫌われてるとか、実家に厄介者がいるとかだと嫌がられる。
そうは言っても、自分に問題があるなんて宣伝する奴はいないので、結局は年齢で判断されたりする。
この年齢まで結婚できないのは、何かしらの問題を抱えているからじゃないか? と思われて、行き遅れた人は結婚が更に遠のいてしまう。
まさに行き遅れスパイラル。はまると抜け出せない蟻地獄のようだ。
だからこそこの世界の女性は、条件のいい男と結婚するのに必死になるんだろう。
誰だって結婚できないから、あの人は問題がある人なんだと陰口を叩かれながら生きるのは嫌だろう。
親だって子供が結婚できないと、家に問題があるかもと噂されかねない。
借金があるのでは? と思われたら、商人とかとの付き合いにも支障が出るだろう。ツケはダメとか。
商売を持ち掛けても詐欺を疑われかねんし、親だって必死で娘を嫁に出そうとするだろう。
アリス先生が結婚を諦めかけてたのも納得できるな。
「アリス先生はオレが幸せにしますから、もう何も心配しなくていいんですよ」
「異様に優しい目で言うのはやめろ! なんか同情されてるっぽいぞ! 失礼なこと考えてるだろ!」
テーブルを飛び越えてオレにしがみつき、ユサユサ揺らしながら問い詰めてくる。
こんなに小さいのに女の勘が働くのか、たんに自分に対する同情とかに神経質になっているのかは知らないけど、結婚したら隠し事はできないかもな。
「失礼なことは考えてないですよ? この気持ちは愛です」
人類救済レベルの大きな愛なのである。
「そっ、そっか……照れるじゃないか~」
やっぱり騙されやすいから、オレがしっかりしないとな。
隠し事はできなくても簡単に誤魔化されるから。
そんなことを考えているオレに気付かず、アリス先生は顔を赤くして、オレの胸に顔をグリグリしている。
恥ずかしいのを誤魔化すためだろうけど、小動物がじゃれているように見える。
「それで……アリス先生はどんな結婚式がいいですか?」
「そうだな~…………身内だけでコッソリやりたいな~。勇人は英雄だから、式に誰か招待すると結婚式とは別の物になりそうだしな。結婚式に夫が別の嫁を勧められたりしたらヤダし」
想像できるな。貴族とかならまだ体面を気にするかもしれないけど、商人とかが来たらグイグイ来そうだ。
貴族でも弱小だと体面も気にしないかもしれない。せっかくの結婚式にそれはちょっとな。
ウェディングドレスのお嫁さんを見るより、娘や妹をオレの嫁にしようとするオッサンたちの顔を見るはめになりそうだ。
やっぱり結婚式には可愛いお嫁さんを見ていたいからな。
「それなら王都の教会の人に相談してみます。コッソリ結婚式ができないか」
「教会か~……結婚式っぽいな。神前式だとアタシには似合わなそうだし、アタシもウェディングドレスが着たいしな!」
「オレもアリス先生のウェディングドレス姿は絶対に見たいので、ドレスも注文しましょう。デザインは考えておいてください」
こっちの世界にウェディングドレスなんてないからな。
地球の真っ白なウェディングドレスは、女の子の憧れだろうけど、男にとっても嫁さんに着せたい衣装だと思う。
「綺麗なのがいいか? それとも可愛いのか?」
「う~ん…………可愛いほうが似合いそうですね」
「わかった! 夫の好みに合わせることにする!」
好みと言えば好みだけど、似合うのが1番重要だ。
「披露宴はしないほうがいいですか?」
「人は呼びたくないぞ。余計なことは考えないで、幸せに浸ってたいしな」
マリーナは貴族だし、人を呼ばないわけにはいかないだろうな。
アリス先生のいろんな希望を聞きながら、2人でつつき合ってイチャついた。




