結婚に向けて金を稼ぎたい
王女の部屋で食事をした翌日、国民へ向けて戦争の発表を正式に出した。
商人などは、商品の流れなどから気付いていたようだが、普通の国民は戦争が始まるかも、という不安な状態だったようだ。
国が正式に発表したことで、戦争になる実感を得たのか、不足しそうな商品の買い占めなどを行う人間も出始めた。
帝国のしてきたことや、これからするはずだった計画をオレが潰したことなども発表され、国民は帝国への怒りを感じているようだった。
そのぶん、オレへの賞賛は激しかった。自分たちが危機に曝されていたので、それを事前に潰したオレは、どこへ行ってもヒーロー扱いだった。
街頭に設置された巨大なモニターに、オレの顔が映されてしまったせいで、顔も完全にバレてしまったのだ。
「勇人は顔を隠せ。取り囲まれて怖いぞ……」
「私もあの人数は捌けないよ? 護衛の仕事が不安になったよ……」
「叔父ちゃんは結衣の叔父ちゃんなのに……」
ちびっ子たちはグッタリしているな。
兵士がやって来て助けてくれなければ、はぐれていたかもしれない。
「旦那様に色目を使う女の子が増えたわ! なんとかしないと……」
「マリーナ奥さまは、見た感じ奥さまに見えませんからね~、若々しくて。だから牽制になっていないんですよ~」
「そんなに若く見えるかしら?」
マリーナは同じ歳だけど、13~14歳くらいに見えるからな。
レイラは寝る時以外はメイド服だから嫁や恋人には見えんだろうし。
アリス先生たちに早めにプロポーズするかな。女の子にモテるのは嬉しいけど、あれはなんか違う気がする迫力だった。
しかし、アリス先生を嫁さんにできたとして、一夫多妻制だから意味がない気もする。
家を建ててからプロポーズしようかと思ってたけど、家を建てる資金が貯まったらプロポーズして、夫婦で暮らす家を作るという感じのほうがいいかもな。
資金は十分といえば十分だけど、建てるからには男のプライドとして凄い家を建てたい。
幸い、この世界で金を稼ぐのは簡単とは言わないけど、日本よりは若者が稼ぎやすいのは事実だ。
稼げる以上は、めいっぱい稼いだ大金で立派な屋敷を建てて、可愛いお嫁さんを貰うのが男のロマンだと思う。
みんなが羨む立派な屋敷に帰ると、なんか死ぬまで老けそうにない可愛いお嫁さんが出迎えてくれるとか。
「なんかやる気が出てきた! ちょっと稼いで来ます!」
「えっ? えっ? あ、うん」
手を掴んで宣言するオレを、ビックリした目で見詰めて、アリス先生はわけも解らず頷いた。
それを見届けて、オレは窓から飛び出した。
「あっ、旦那様、変装して!」
マリーナの叫び声で変装を忘れてたことに気付いて、空中でメガネを掛けたり帽子を被ったりした。
テンションの上がったオレは、猛スピードで強い魔物がいる場所に飛んで行った。
「勇人の奴、急にどうしたんだ? アタシは稼いで来て欲しいなんて言ってないぞ? 男心は難しいな。男も女心は難しいと思ってるだろうから、お互い様だけどな!」
アタシは恋人もできたことがないから、さっぱり解らないな。
でも、ちょっとドキドキしたな。
勇人は10歳くらい年下だけど、ハンサムで強くて真面目な男に真剣な目で見詰められるのは嬉しいな~。
よく解らない宣言だったけど、つい頷いちゃったよ。
マトモな男が真剣な目をして言うと、反論できないもんだな。
いつもなら危ないことはするなくらい言うのに、何も言えずに見送っちゃったし。
「旦那様も殿方だし、戦争に張り切ってるのかしら?」
「街に頼まれた食材を買いに行った時にも~、男の方たちが騒いでいましたよ~、手柄を立てて出世してやるって」
日本人の勇人が戦争に張り切るとは思えないけど、出世したいってのはあるかな?
勇人はまだお金を貯めて、もっと大きな家を建てるって言ってたしな~。
もう豪邸を建てるくらいのお金を貯めているのに……城でも建てたいのかな? 一国一城の主になりたいとか?
「叔父ちゃん、昨日行った森のほうに飛んでっちゃったけど、大丈夫かなぁ?」
「森に行くなら変装って必要ないよ?」
勇人にしては珍しく冷静じゃなかったけど、なんでいきなりテンションが上がったんだ?
モテたのが嬉しかったとかでテンション上がったなら、凄くイヤな気分だけど。
「ユートさまの今晩のお食事はどうしましょう~? お弁当を作っておくんでしたね~」
いや、いきなりテンション上げて飛んでく男に、予想してお弁当を作っておくのは無理だろ……レイラならやりそうで怖いけど。
「お兄ちゃんの本気の戦いも見たかったよ? 捜しに行ったらダメ?」
「1人じゃ危ないからダメだぞ?」
フィーリアの強さなら大丈夫だと思うけど、見た目が子供だから心配になる。
勇人だと年下だけど、あんまり心配にならないな~。信頼感が凄いもんな。
あのテロリスト相手でも、必ず最後には勇人が勝つって思えるしな~。
「旦那様が戦いに行ったなら、私も修行しよっかな。差が広がると胸を張って妻だって言いづらいしね」
マリーナは将来的に結婚するつもりみたいだけど、勇人はどうするんだろうな。
この2人の仲が良いのは見てれば判るけど、日本人の感覚的に16歳で結婚を考えるのか?
勇人は普通の男と違うけど、モテる男は結婚をしたがらないって聞くしな~。
2人が結婚したらどうなるんだ? アタシたちはお邪魔虫になったりしないよな?
なんか将来が不安になってきた。アタシも30歳までには結婚したいな~。
でも、アタシって家事ができないしな~。
おっぱいなんてペタンコを通り越してる気がするし、身長だって低いし、腰のくびれは辛うじててあるくらいだ。
なんか絶望的な気分になってきたぞ?
このままだとアタシ、一生結婚できない気がする。
なんかテンション下がってきた。
「レイラ! 家事を教えてくれ!」
「それは構いませんが~、どうしたんですか、アリスさま~?」
「姉様まで急にやる気に! 戦争に不安を感じて落ち着かないのかしら?」
戦争は実感がないせいか不安はないけど、結婚できない実感はあるから将来が心配になったんだよ、マリーナ…………。
「よく考えたら、姉様に落ち着きがないのはいつもだったわ! 旦那様は普段と違うから心配ね」
アタシの心配もしろよ! 30歳までに結婚できるかどうかの瀬戸際だぞ!
アタシが結婚できなかったら面倒みてくれるのか? もっと真剣にアタシの結婚を考えて、家族会議を開催して欲しい。
「とにかく家事を教えてくれ! 花嫁修業をしないと結婚できるか不安になったんだよ~」
「それで急にやる気になったんですね~。わかりました! アリスさまが結婚できないと、私も妾にして貰えませんからね~。自分のためにも厳しく教えますよ~?」
なんで妾になりたいんだ? こっちの世界の人は妾が基本なのか?
そもそもアタシの結婚と何の関係があるんだ?
「それなら私も花嫁修業をするわ! 姉様だけに任せて、旦那様がお腹を壊したら大変だし」
マリーナってアタシに遠慮がないな~。
あの地獄料理は忘れてくれよ~。
「結衣も花嫁修業するよ! 叔父ちゃんに食べて貰うの!」
結衣ちゃんは小さいのに立派だな~。
アタシも結衣ちゃんくらいの歳から、お母さんに習っておけば良かったよ。
結局、アタシの花嫁姿を見せることはできなかったし、親不孝しちゃったな~。
「私は料理はできないから見てるよ? そしたら覚えられるし」
フィーリアに焦りとかないのかな?
アタシよりかなり年上なのに。
コテンと首を傾げて、無表情にボーッとしたフィーリアを見て、何となく落ち着いたアタシは、張り切って料理の練習を始めた。
上手く出来たら帰って来て欲しいけど、失敗したら外で食事してきてくれよ~、勇人。




