王女と再会
風呂から上がったあとは、せっかくだし食堂で食べようということになった。
アリス先生がまだ少し落ち込んでいたので、気分転換を兼ねた。
城に詳しいレイラのあとをついて行く。
「レイラはお尻もムッチリと色気があっていいよな~、アタシのお尻なんて71cmしかないのにさ~。羨ましいな~」
「アリスさま、私のお尻を揉まないでいただけますか?」
部屋の外なので話し方が堅い。
いつもは弛い表情だけど、真面目な表情でお尻を揉まれているので、仲がいい女の子のじゃれ合いではなく、痴漢行為に見えるな。
「……マリーナのお尻も色っぽいよな~。ライラちゃんも絵に描くはずだよな~」
「姉様、メイドたちが見てるから止めてよ! 恥ずかしいからちゃんとして!」
ぺしっと揉んでいた手を叩かれて、アリス先生はターゲットをフィーリアに移した。
「フィーリアのお尻は落ち着くな~。アタシより小さいから、色気なしだ」
しゃがみ込んで、フィーリアのお尻をグニグニ揉み始めた。
アリス先生より小さいかは未確認だろうに。どっちにしても小さいから、ドングリの背比べだな。
「先生、抱っこしてあげますから落ち着いて」
「なんでだよ! アタシを子供扱いするな!」
「お姫様抱っこならいいですか?」
オレの服を掴み、ユサユサして抗議の声を上げていた先生が、ピタッと止まる。
「お姫様抱っこは大人扱いだからいいぞ!」
こういうところが子供っぽいと気付いてないんだろうか?
素直な女の子は可愛いからいいけど。
「叔父ちゃん、結衣はオンブして?」
しゃがんでやると、結衣が背中に飛び付く。
アリス先生もお姫様抱っこして立ち上がると、2人してはしゃぎ出した。
「よく見えるよ、叔父ちゃん!」
「お姫様抱っこされてると、アタシも立派なレディになった気がするな~、にははっ」
耐えきれないように、アリス先生から笑い声が溢れた。
「楽しそうですわ。わたくしもご一緒してもいいかしら?」
はしゃいでいた2人の声を聞き付けたのか、セイラ王女殿下が近寄ってきた。
「あっ! お姫様だ!」
「ユイ様もお元気そうですわね。皆様もお久し振りです」
動きがゆったりしていて上品だな。
「王女殿下、城にお邪魔させて貰っています。騒がしいとは思いますが宜しくお願いします」
2人を抱えたままだと挨拶しにくいので、軽くお辞儀をしておいた。
「騒がしいなんて……わたくしの周りは静かですから、賑やかで羨ましいですわ、ユート様」
「……それでは、これから食事なので、オレたちと一緒に食べますか?」
寂しそうな顔をしていたので誘ってみる。
「宜しいのですか? ぜひご一緒したいです! アビー、いいかしら?」
御付きのメイドに、上目遣いで恐る恐る確認している。
この王女は人当たりが柔らかいな。
しつけもシッカリされているのか、目下の人間にも丁寧な言葉で話すし。
「もちろんです、姫様。陛下や殿下も、ユート様と仲良くなさって欲しいようですから」
ぶっちゃけたな、このメイド。
それはオレに仲良くしろとアピールしてるのか?
「それではどこで食べますか?」
まさか兵士とかも使う食堂に、王女殿下を連れて行くわけにもいかないだろうし。
「わたくしのお部屋はどうでしょう? 給事をしてくれるメイドもおります」
ポフッと手を合わせて提案してくる。
「お姫様のお部屋を見てみたい! 叔父ちゃん、いいでしょ?」
背中で体を揺すって、結衣がお願いする。
「わかッたよ、結衣。……王女殿下の部屋にお邪魔させて貰います」
「ふふふっ、ユイ様は可愛いですわね」
結衣がお気に入りなのか、前の祝勝会でも結衣の面倒を見てくれていた。
場所も決まったので、アビーが廊下の端で待機していたメイドに指示を出し、オレたちは王女殿下の部屋に歩き出した。
王族の部屋は、城の奥まった場所にあるので少し歩くらしい。
「ところで、この可愛らしい方は新しい仲間ですか?」
「フィーリアだよ? お姫様。お兄ちゃんに仲間にして貰ったよ」
「ずいぶん可愛らしいですわね。ユート様は小さな女性がお好みなのですか?」
おいおい、オレにロリコン疑惑が発生したぞ。
たまたまアリス先生が見た目ロリなだけで、オレはマリーナとかレイラだって可愛いと思ってるぞ。
「こう見えてエルフなんで強いんですよ」
「そうでしたの……お耳のことは聞かないほうが宜しいですわね。それでは、最近の活躍をお聞かせください」
気を使い、話題を変えてくれた。いい人だ。
王女殿下の要望に応え、最近のことを話していく。
20分ほど歩きながら話していると、王女殿下の部屋に到着した。
途中で何十人もの兵士が警備してるのに遭遇したが、王女殿下がいるので止められることはない。
お姫様抱っこされてるアリス先生や、オンブされてる結衣を微笑ましく見ていた。この国っていい人が多いよな。
油断してると、よその国に行った時にショックを受けそうだ。
部屋に入るとメイドたちがもてなしてくれた。
ソファーに座り、お茶やお菓子を食べる。食事前なのでお腹に溜まりそうにないお菓子だ。
「このソファー、叔父ちゃんのお膝の上みたい!」
それは誉め言葉としてどうなんだ?
結衣からすれば誉めてるんだろうけど。
「ホント、座り心地がいいわ。旦那様、お家を買う時に、足りない家具があったら、この家具を作った工房に頼みましょう」
ソファーも機煌都市で作って貰ったけど、部屋数しだいで増やす必要があるからな。
あの時より1人仲間が増えてるし、フィーリアの部屋も作らないといけないからな。
必要そうなので、王女殿下にどこの工房に注文したのか聞いてみたら、王女殿下が発注したわけではないので知らなかった。当たり前か。
その代わり、側に控えていたアビーが教えてくれた。
メイドが発注するわけでもないのに知っているあたり、さすがは王女付きのメイド。
仕える主人に関わる情報は何でも知ってるのかもしれないな。
王女が紹介状をくれると言うので、ありがたく書いて貰った。
「ふふっ、1度紹介状を書いて見たかったんです。お父様やお兄様ばかりズルいと思っていましたから」
上品なタイプかと思ってたけど、意外にお茶目なところも有るようだ。
年相応の笑顔を見せて、立派な机で紹介状を書き出した。
「あの机……大人っぽいな! アタシの部屋にも置きたいぞ。勇人、買ってくれ!」
大人っぽいより、使いやすいで選んだほうがいいと思うんだけど、アリス先生には大事なことなんだろうな。理解は難しいが。
「買うのはいいですけど、アリス先生には大きくないですか? 手、届きます?」
「う? 届くかなぁ? って届くに決まってるだろ!」
面白がった王女がアリス先生を座らせてくれた。
「ほ、ほら、届くだろ~」
足も着いてないし、腕はめいっぱい伸ばしてプルプルしてるじゃんか。
小さな体のほとんどは机に隠れて、肩くらいから上しか見えてないしな。
この机を買ったとしても、アリス先生の部屋で100%置き物になるな。
「わかりましたよ。インテリアとして買いましょう」
「インテリアって! ちゃんと使うよ! でも買ってくれてありがとな!」
まだ買ってないけどね。
高いだろうけど、一生暮らすかもしれない家だし、気分よく過ごせるようにしてあげたい。
1時間ほど話をしていたら食事の用意が出来て、部屋に運ばれてきた。
豪華な料理に驚いたが、今は戦争準備中なので、普段は節約しているそうだ。
オレたちをもてなすために、高価な食材を使ったらしい。他国の使者と同じような厚遇をされているみたいだな。
前菜から順番に出てくるようだ。
次の品は、この場で調理して出来たてが食べられるようになっている。
下拵えだけして、あとは焼くだけや温めるだけになってる。
美味い飯を食べながら、話も弾み、その日の王女の部屋は、日付が変わるまで笑い声が絶えなかった。
何時間も立ちっぱなしだけど、メイドたちの嬉しそうな顔から、王女がどれだけ好かれているかが解り、この国をなんとしても守ろうと思う気持ちが強くなった。




