表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/245

戦争に備えて

 オレたちは城から冒険者ギルドに通い、情報交換や仕事をする。

 すでにオレには王からの遊撃依頼が出ているので、冒険者ギルドに手続きがてら情報を渡しておく。


 冒険者ギルドからも戦争に参加する人はいるだろうとのことだ。

 こちらの世界に限らず、侵略戦争の悲惨さは誰もが知っている。

 だからこそ国を守るために戦争参加を言い出す男は多い。

 オレもアリス先生たちに被害が及ばないように、侵略者に容赦するつもりはない。


 ギルドの掲示板には、煌力砲などの材料と燃料である魔石集めや、砦の建材である石の運搬などの仕事が掲載されるようになった。

 オレは砦の建材を運ぶ仕事を請け、国の守りを固める。

 アリス先生たちは煌力砲の材料と魔石を集める仕事を請けた。

 オレの移動スピードと運搬能力なら、簡単な仕事で報酬もいい。

 アリス先生たちは魔物と戦うことで、戦闘に馴れて死ぬ可能性を減らすためだ。


 国境の砦に移動すると、急スピードで砦の増築が進められていた。

 以前は、ヴォールディア帝国を刺激しないように、申し訳程度の砦だったらしい。

 戦争が始まりそうになってから、帝国の侵略に備えて砦の防御を鉄壁の物にしたいそうだ。

 この砦が完成すれば、5万人の兵力を収容できるようになる。

 補給は砦から徒歩で2日の距離にある街、スタンエールから届くらしい。

 この砦を無視すれば、帝国軍は背後を突かれるし、スタンエールから出撃する軍と挟まれる。

 ここで帝国軍を迎え撃つことになるだろうとの見解だ。


 空から近付いたおれに、煌力砲が向けられる。

 冒険者ギルドからきた冒険者だと伝え、王から貰った命令書を見せると、すんなり入れた。

 司令官に挨拶する。クリフォード将軍というらしい。

 帝国との戦争で、カウニスハーナ王国軍全軍の司令官を務める将軍らしい。


 挨拶のあと、資材を管理している人に付いて行き、資材置き場まで歩く。

 資材置き場に到着すると、オレは指輪を手の中に隠して反対の手をかざす。

 次々と石材を出したオレを見て、その場に居た人間がギョッとした。


「凄いですね! こんなに大量に。どうやってるんですか?」


「一子相伝の魔法です」


 適当に、突っ込んで聞きにくい嘘をつく。


「空まで飛んで来れるだけあって、さすがは大魔法使いですね」


 そういえば空を飛ぶのは魔力が凄く必要だったな。

 なんにしても誤魔化せるのは助かる。

 これなら指輪が欲しいとか言う人も出ないだろう。

 オレの勧誘は増えるかもしれないけど、王が無理な勧誘をしない以上は、他の人も無理な勧誘はできないだろう。

 オレを雇えても、王に嫌われては本末転倒だしな。


「それでは受け取りの証明書を発行しますので、お待ち下さい」


「砦の中を見て回っていいですか?」


「本来は許可できませんが、陛下から遊撃依頼が出ているので構いません」


 スパイかもしれない奴に見せられないだろう。

 オレは王から指名依頼を貰っているから、部外者ではなく味方扱いしているんだな。

 礼を言ってから、砦の中をブラブラ散策した。


 身体強化した兵士たちが石材を運び、職人らしき人が砦の増築をしている。

 魔法があると、重機がなくても早いな。

 重機を使うよりも、自分の体を使うほうが圧倒的にやり易いし。


 砦の中を歩いているが、道が複雑で迷うな。

 敵を迷わせるためだろうけど、砦の中に突入された段階で、すでに敗北が決まってそうだよな。

 兵士たちは外で作業しているためか、砦の中はガランとしている。

 道を聞きたいんだけど、居ないものは仕方ない。

 どうしても判らなければ、窓から外に飛び出ればいいだけだし。




 なかなか頑丈そうな砦だったな。

 5万の兵士が守るようだし、オレはここで戦う必要はなさそうだ。

 オレは遊撃担当だし、防衛には加わらず、帝国軍に直接攻撃を仕掛けるかな。

 あるいは、帝国軍が帰還する砦に奇襲を掛けて、帝国の砦を落としてみるか?


 帝国軍に攻撃を仕掛けるメリットは、防衛の手助けになるから被害を減らせるかもしれない。

 帝国軍の撤退が早ければ、確実に味方の被害が減るだろう。

 攻撃を仕掛けるデメリットは、オレ自身が危険に曝されること。

 纏めて吹き飛ばすのは人道から外れそうだし、近接戦を仕掛けるなら危険はある。

 綺麗事を言ってられない状況になったら、オレも容赦なくやるけど、余裕のあるうちは非人道的な戦い方は避けたい。

 名声を得るという目的にも、その方がいい。どうせ戦うなら、得る物は少しでも多い方がいいからな。


 帝国の砦に仕掛けるメリットは、帝国軍が出撃したあとに仕掛ければ危険は少ないことだろう。

 それでいて砦を落とすのは効果が高い。ローリスクハイリターンだな。

 デメリットは、防衛の手助けにはならないから、砦の防衛は軍任せだ。

 オレが砦を落としたと報告が届くまで、帝国軍の攻撃は続くだろう。

 そうなると、味方の軍の被害が大きくなるはず。守りに徹してくれるなら、それほどの被害にはならないかもしれないけど。


 オレからしたら、敵の砦に攻撃をしたほうがラクだし早い。

 敵の砦が無事なら、戦力の補充をされてしまい、国境での防衛戦が長引いてしまう。

 砦を落としさえすれば、補給が困難になった帝国軍は、大きく後退しなければならない。

 戦況はこちらに傾くだろう。あとは、同盟国の軍と合わせて攻撃すれば、さらに領地を削り取れる。


 防衛だけしていても、相手のほうが戦力は多いし土地も広い。

 泥沼の戦争になってしまえば、この辺りの国は全部不景気になりそうだし、ガンガン進攻して早く終わらせたほうが、最終的には被害が少ないと思う。

 人命を数の論理で考えてはいけないんだろうけど、これは戦争であってヒーローゴッコじゃない。


 青臭い正義感で戦争を長引かせるよりは、助けられない命は捨てて、戦争を早期に終結させるほうが、みんな助かる。

 死んでしまう人と、その家族には冷たいかもしれないけど、オレは神様じゃないので、出来ること出来ないことはハッキリさせて割りきるしかない。



 オレの方針は決まったので、司令官のクリフォード将軍に面会を申し込む。

 依頼の達成証を貰い、将軍が来るのを待つ。

 メイドとかは居ないので、お茶が出たりもしなかったが、さほど待たされることなく将軍がやって来た。

 立ち上がって挨拶をする。


「先ほどはどうも。オレの方針が決まったので伝えておこうと」


「それはありがたい。遊撃がどう動くかで戦況が変わることもあるからな。ましてや君は英雄だ。どう動くかによって、兵士の士気が段違いに上がるだろう」


 士気まで考えないといけないなんて、指揮官は大変だな。オレには面倒なことは無理だ。


「オレにどこまで影響力があるか判りませんが、オレが帝国の砦を落とせば戦況は変わるでしょう?」


「砦に仕掛ける気か!? ……いや、君は戦い馴れているから、勝算はあるんだろう」


 もちろんある。

 拠点攻略は盗賊のアジトで馴れてるし。


「大声を出して失礼した。具体的な作戦を聞かせて欲しい。その作戦に合わせてこちらも動く」


「分かりました。まず帝国の砦の近くに潜みます。そして帝国軍が出撃したら、簡単に戻れない距離に行くまで時間を潰します。かと言ってこの砦に近付きすぎると、こちらに被害が出るので、半日くらいの距離を進んだら仕掛けます」


「それだと引き返してくるまで、あまり時間がない。君が砦を短時間で落とさなければいけなくなる」


「半日あれば十分です。そのあとは、砦で籠城しているので、なるべく早く来てください」


 奪った砦の維持は、オレにはできないからな。


「ふむ…………わかった。帝国軍が引き返したら、我が軍も出撃して背後を突こう」


 大まかにだけど作戦は決まった。

 あとは帝国が仕掛けてくるのが先か、こちらの砦が完成するのか先か、時間の勝負だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ