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戦場に響く爆発音は、オレを悲しい気持ちにさせる

 フィーリアの実力を確認したところで、アリス先生たちの訓練のために、キラースネークと戦って貰う。

 フィーリアには手を出さないように言っておく。


 フィーリアは耳がいいらしく、自分から50mの距離にキラースネークが近寄ってきたところで、蛇が地面を移動する音に気付いたらしい。

 あくまでも耳や気配で索敵しているようなので、捜せる距離は70~80mくらいの範囲内だけだそうだ。


 捜すのはオレの索敵のほうが優れているが、常時使っているわけじゃない。

 常に索敵していないぶん、近寄ってくる敵には効果が薄い。

 そういった点はフィーリアのほうが優れているだろう。

 フィーリアは元暗殺者なだけあって、癖で常に索敵しているらしいからな。


 オレは敢えて索敵せずに、キラースネークを捜して回る。

 キラースネークがどれだけ厄介な魔物か確認するためでもある。

 いざという時に油断するようなことがないように、奇襲が得意な魔物を、普通の冒険者と同じ条件で戦ってみる。

 索敵しているから大丈夫という気持ちじゃなく、いつ襲ってくるか判らない緊張感がある。


「勇人の索敵がないと、お化け屋敷にいる気分になるな~」


 だからといって、オレの腰にしがみつき、お尻を突き出して歩くのはどうなんだ。

 及び腰という言葉を体現してるな。見た目も中身も。


「アリス、面白いポーズしてるね」


 フィーリアが興味を持ったのか真似してアリス先生の腰を持った。


「アリス先生、動きにくいですよ。それと、ピンチには助けますから、ちゃんと周りを警戒してください」


「……別に怖くて助けて欲しいわけじゃないぞ? ちょっとストレッチ中だ」


 そんなストレッチはない。

 助けがあると判って落ち着いたのか、オレから手を離し、周りをキョロキョロし始めた。

 オレとフィーリア以外の女の子たちは、物音がするたびにビクビクしている。

 周りを探ることに集中しすぎて、自分たちの足音にさえビクついていた。


「叔父ちゃんが見つけてくれないと怖いよ~」


「索敵の大事さが解りますね~」


「姿が見えない敵なんて剣士の天敵だわ!」


 いつもより体力と集中力の消耗が激しいな。

 警戒しながらだから、オレも含めて気が抜けない。

 普段と変わらないのはフィーリアくらいだ。

 その時、(かす)かに這いずるような音がオレの耳に聞こえた。


「音が聞こえたぞ! 周りを見るんだ!」


 オレの声にまでビクッとしながらも、みんなで背中合わせに警戒する。


「ぜんぜん見えないぞ! 音は少しだけするのに!」


「岩とかの出っ張りに隠れてるとか?」


 アリス先生が少し慌てすぎな気がするが、マリーナは意外に落ち着いている。

 結衣のことはフィーリアが背中に庇っているので大丈夫だろう。

 オレはレイラのことを守ろう。

 しかし、本当に見えないな。擬態能力が凄いと聞いてたけど、ここまでとは。


「あっ! いたぞ! アリス先生の見てるほうの地面だ!」


 デコボコの地面に擬態しながら、ゆっくり近寄ってきていたらしい。

 オレもじっと見てなかったら気付かなかっただろう。


「このっ!」


 マリーナが剣を逆手に構えて、動く地面を突き刺そうとしたが、体をくねらせて簡単に躱す。

 その動きを利用して、尻尾でマリーナとアリス先生を狙う。


「させない!」


 巻き付かれそうな2人を抱えて飛び上がる。

 フィーリアが結衣とレイラを連れて離れたのを空中で確認していると、アリス先生が魔法を撃って攻撃した。


「フレアバースト!」


 小さな手の平から炎を連続で放つと、シュルシュルと岩や地面を這いずり回り、爆発を避けて隠れた。


「また見失ったじゃない! 姉様、視界が悪くなる攻撃は必ず当ててよ!」


「仕方ないだろ! クネクネして当てにくいんだ!」


 予想以上に厄介な魔物だな。

 いったん見失ったらヤバい。まったく判らなくなった。


「フィーリアみたいに先に見つけて、一撃で仕留めないとダメみたいですね」


「勇人も少しは慌てろよ! ピンチだぞ!」


 いや、索敵すればオレはすぐに見つけて殺せるし、フィーリアだってそうだろう。

 オレとフィーリアが守ってるから、ピンチなのは実質誰もいないぞ。


「落ち着いてください。まず風の魔法で粉塵を吹き飛ばして視界を確保してください」


「そ、そっか、ウインド!」


 突風が吹き、煙を晴らすがキラースネークの姿は見えない。

 索敵しないとパッと見ただけじゃ判らないな。

 これは確かにキラースネークと呼ばれるだけはある。何人もの有名な戦士がやられるわけだ。

 索敵が得意じゃないと不意打ちは防げずに、簡単に巻き付かれて殺されるだろう。

 全身をミスリルの鎧で固めた騎士が、あっさり捕まって骨ごと砕かれた話は有名らしい。


「旦那様、どうするの?」


「現状でアリス先生が打てる手は、広範囲を吹き飛ばすか、撃ちまくって偶然当たるのを待つしかないな」


 アリス先生はまだ索敵できないし。


「攻撃はそれしかないですけど、魔力を感じることができるなら見つけることもできますよ」


「練習はしてないけどやってみる!」


 攻撃魔法の練習はいつもしてたけどな。

 他の方法もなくはないんだけど、囮を使うなんて戦術は覚える必要ないしな。

 ここは魔力感知を覚えて貰ったほうがいい。


「いつも魔法の練習をしてるんですから、落ち着いてやればできるはずですよ」


「ねえ、旦那様。私が戦うにはどうしたらいいの?」


 マリーナも魔力感知するのがいいと思うけど、マリーナは魔法関係は得意じゃないしな。

 身体強化は得意だけど、あれは魔力を体に纏うだけで簡単にできるからな。

 効率よく使うには練習が必要だけど、魔力を纏うだけなら誰でもできる。

 体の中に充実させたり、少ない魔力を集中させたて効果を上げたり、瞬時にオンオフを切り替えて節約するのは難しい。


「マリーナは剣の腕はいいから、襲い掛かってくる時にカウンターを食らわすとか? 剣士じゃそれくらいしか対処法は思いつかないな」


「……凄く危なくない? ミスしたら死にそうなんだけど」


「仲間がいないとヤバイな。巻き付かれたら10秒も耐えられないんじゃないか?」


 マリーナが落ち込んでしまった。

 戦いに関しては嘘をつくのも危ないから仕方ないけど、もう少し気を使うべきだったか?

 それにしてもフィーリアは凄いな。(たく)みにキラースネークから離れていく。

 2人も連れながら敵の感知範囲から余裕で外れるな。

 あれができるならマリーナも簡単に戦えるだろうな。


「なんとな~く見つけたような……」


 アリス先生がようやく感知したらしい。

 こんなに時間が掛かったら、1人で戦うのは無理だな。


「そこだぁぁぁぁぁ!」


 ぜんぜん見当違いだった。

 爆発音が虚しく響く。

 倒したと勘違いしてドヤ顔をしてるアリス先生に、なんて声を掛ければいいんだ。


「凄いじゃない、姉様! 私は魔法が苦手だから」


 おい、やめろ。

 それ以上褒めたら余計に言い出しにくくなる。


「アタシは魔法の天才だからな! 神様もトップクラスの魔力だって言ってたしな!」


 もうコッソリと倒してしまおうか?

 オレには言えない。キラースネークが元気に動き回ってますよなんて。

 しかし、言わないことには成長にならないし、魔力感知ができるようになったと勘違いしたままは危険だ。

 先生が落ち込んだとしても、心を鬼にして言うしかない。


「…………先生、まだ生きてますよ。惜しかったですね」


「………………………………」


 まったく惜しくない場所を攻撃したんだが、かなりマイルドに言ってしまった。

 それなのに落ち込んでるな。どうしようもないが。


「もう! 姉様! ちゃんと当ててよ! 褒め損じゃない!」


 やめてあげろ、マリーナ。

 当てるも何も見当違いの場所を撃ってるんだから当たるはずないだろ。

 追い打ちを食らって、更に落ち込んでしまったアリス先生をとりあえず励ましてから、キラースネークを今度こそ仕留められるように誘導して、アリス先生の自信を回復させた。

 

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