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フィーリアの実力

 フィーリアの実力を確認するためと、家を買うために仕事に向かう。

 冒険者ギルドで討伐依頼を確認して、金になりそうな魔物を何体か選んだ。


 討伐依頼は、本来その場所にいないはずの危険な魔物が現れたり、もともと生息していた魔物が増えすぎた場合に発生したりする。


 だいたいは兵士が定期的な調査をして、国の機関から依頼を貰い、冒険者ギルドが対処する。

 この場合は国にとって重要な場所になる。

 街道とか鉱山のある場所とか、国民の生活や仕事に影響しそうな場所だ。

 そのために税金を取っているんだから、当たり前ではあるが。


 そうでない場合は、国民がめったに行かない場所に商人とかが行きたい場合や、素材などを求めて商人や職人が個人的に依頼する。

 他にも研究者とかが、調査したい魔物を頼む場合なんかだ。


 今回の狙い目は、国からの依頼で危険な魔物の間引きだ。

 定期的に出るので、生息圏が判明しているから探し回る手間が省ける。

 危険な魔物なので依頼料は高いし、そのわりに対処法は確立されている。

 経験しておけば、また依頼を受けた時に安全が増すし、不意の遭遇でも経験が助けになる。


「このキラースネークとか高いぞ? 皮が売れるし、討伐報酬だけでも、1匹58万シリンも貰えるじゃないか!」


「アリス姉様ったら……何で残ってるか考えてよ! このヘビは5~8mくらいのやつばかりだし、体色を変化されて奇襲して丸呑みするの! あと気持ち悪いし」


 個人的な感想が混じってるが、言いたいことは解る。

 アリス先生だけで仕事しないように言っているのは、こういう心配があるからだ。


「でも狙い目なのは事実だ。オレなら索敵で近付く蛇はすぐに判るし」


 特徴的な形をした魔物は判りやすいから助かる。


「結衣も大きなヘビさん見たい!」


「庶民の私たちには、普段は見れない魔物ですからね~、興味は理解できます」


 たまにやってる危険な生物を紹介するテレビ番組を、2人して真剣に見てたからな。

 オレも日本にいる時は、スズメバチの特集はよく見てた。

 あいつらほど怖い顔の生き物は、他にいないんじゃないかと思ってる。

 あんなのが巨大化したような魔物は存在するし、見たいような見たくないような複雑な気分だ。


「リアからも言ってやってよ! 危ないから気を付けてって」


「私はよく倒していたから、別に危なくないよ?」


 さすがは森に(ひそ)みまくった女。

 マリーナの気持ちはさっぱり理解できないらしい。


「アタシはスライムも見てみたいぞ! 可愛いかもしれないし」


「先生、こっちのスライムはアメーバみたいなタイプらしいですよ」


「それはそれでホラーっぽくて見たいぞ!」


 ホラー映画とか苦手そうなんだけど、意外に大丈夫なんだな。


「オレはこのスラッシュスライムって戦いたいですね」


「それなら私も戦いたいわ。剣の訓練にもなるし」


 スラッシュスライムは体を硬質化させて、刃にして攻撃してくるので、マリーナの言う通り訓練になるだろう。

 オレも刃物相手の訓練をしながら、打撃が効きにくい敵との戦闘練習がしたい。


 スライム全般に言えることだけど、打撃を完全に無効化するわけじゃない。

 許容範囲を超えた打撃は効くらしい。

 でも、数十tの大岩が落ちてきても潰れないらしいから、瞬間的に炸裂する相当な威力の打撃か、相手の体が衝撃を吸収するよりも、圧倒的な速さの攻撃で貫く攻撃しか効くとは思えないんだよな。


 そんな威力の攻撃ができる人間がいると思うと、オレも頑張ってダメージを与えないとな。

 早く試したいな。ただのパンチじゃ厳しいかもしれないけど、身体強化だけで倒してみたい。

 必殺技なら倒せるだろうけど、ただのパンチで倒せる威力か技術を身に付ければ、オレの必殺技を防げる奴なんて居なくなりそうだし。


「剣の相手としても凄いのよ。スライムだから予想外の動きで斬撃を放ってくるんだから! 私の剣術が通じるのか試したいの!」


 オレとマリーナの意見に少し引き気味だけど、みんな納得して、この2種類の魔物を狙うことに決まった。



 機煌都市を出ると、まずは鉱山に向かった。

 キラースネークの棲みかになっていて、鉱夫が何人も犠牲になったらしい。

 鉱山の中ではなく、鉱山の周りの岩山に住み着いているようなので、特に準備もなく向かう。


 飛行円盤なら5分ほどで到着するので、旅の気分は味わえない。

 もっとも、近くに鉱山があるからこそ、機煌都市として作られたとも言える。

 近くにないと、鉱石を運んだりするのに輸送費が掛かるから、高くなってしまい、ここに街を作る意味が薄くなる。

 他の街より安く作れるのが、この街の利点なんだから仕方ない。


 鉱山のある山に着くと、飛行円盤をしまって、フィーリアが先頭で歩き出した。

 事前の打ち合わせで、フィーリアの実力を見ることと、フィーリア自身が仕事をしたいと言い出したからだ。


 出掛ける前に買った小剣を腰に差し、動きを阻害しないように、魔法の布で作られた戦闘用の黒い服を纏い、周囲を警戒しながら進む。

 動きやすいショートパンツから伸びる華奢な足は、デコボコな岩山でも乱れることはない。

 チラチラとこちらを見ては、ちゃんと付いて来ているか確認もして、結衣に合わせるという気の使いようだ。

 仲間のことは気に入っているようで何よりだ。


「あれっ? フィーリアが消えたぞ? 勇人、どこに行ったんだ?」


「そこにいますよ」


 斜め後ろに視線を向けると、みんなもそちらに顔を向けた。

 そこには、岩陰から出てきたオークの首を切り落としたフィーリアがいた。

 さすがのスピードと索敵だな。アリス先生並の魔力で身体強化してるだけあって、オレ以外には見えていない。


「すごいじゃないか! 頼りになるな~」


「……戦ったら私負けるかも」


 アリス先生は素直に喜んでいるが、マリーナは自分の未熟さを悔しがってるようだ。

 いつもは生き生きとした可愛らしい顔が、落ち込んで暗くなっている。


「お兄ちゃんたち、倒したよ?」


 相変わらずのボーッとした半眼で、コテンと首を傾げている。


「リアお姉ちゃんカッコいい!」


「う~ん、メイドの私には何が起きたのかすら解りませんでしたね~。私が1番役立てそうにありません」


 そのわりにはニコニコして嬉しそうだ。

 フィーリアは自分の指輪にオークの死骸を収納する。


「うわっ、5匹もいたのか~。アタシはまったく気付かなかったぞ? ヤバイな」


「悔しいけど旦那様に頼りきりだったかも。私も修行して気配察知できるようになろうかな。リア、今度教えてね」


 10代なんだから仕方ないと思うんだけど。

 フィーリアはああ見えて217歳だぞ。経験値が違いすぎるのは当然だ。

 まあ、いい刺激になったようだしな。修行に身が入るならいいか。


「あれ? またフィーリアがいないぞ?」


「ほんとだ! リアお姉ちゃんがいなくなっちゃった」


 オレも考え事をしてたから見失ったな。

 やるな。考え事をしてたとはいえ、見失うなんて。

 索敵の反応で近くにいるのはすぐに判ったけど、50mは離れた位置にいる。


「大丈夫、近くにいるよ」


「さすがはユートさまですね~」


 オレも見失ったのは秘密だ。

 フィーリアがすぐにこちらに向かって走ってきた。


「ヘビいたよ」


「うわ~、あれがキラースネークか~。でかいな~、あっさりやられたけど」


 自分のほうから殺しに行ったな。

 こうなるとキラースネークも立つ瀬がないな。

 アリス先生たちの修行にもならないし、近くに来たら報せるだけにして貰おう。


「フィーリア、よくやったな。フィーリアがいればアリス先生たちの安全も大丈夫そうだ」


 小さいので、つい頭を撫でたが、よくよく考えればアリス先生よりも年上だから変か?


「褒められた……」


 褒めたのが不思議らしい。どんな暮らしだったんだ。

 ほんとに悪徳貴族はどうしようもないな。

 全員に褒められて居心地が悪くなったのか、岩陰に隠れてジーっと見ている。


「またリアお姉ちゃんが消えた!」


 お前の後ろの岩陰にいるぞ、結衣。

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