家族会議
「昨日の晩飯の時にも言った通り、仲間を増やすことに力を入れようと思う。みんなはどんな条件の仲間がいいか、考えておいてくれたか?」
レイラが用意した軽食をつまみながら、オレはみんなに意見を聞いた。
アリス先生は起きるのが遅かったので、朝飯抜きだった。
口いっぱいにオニギリを詰め込んでいたので、意見は後回しにしろと目が言ってる。
「はい! 結衣は美人のお姉さん。お化粧とか教えて貰うの!」
それは戦力になるのか?
戦闘能力があるなら別にいいけど、ないなら美人でもダメだぞ。
「私も女の子じゃないとイヤ! 貞操の危機だもん」
マリーナは男は嫌と。
女所帯だから無理もないけど、ランドのオッサンみたいな人もダメか?
「レイラもアリス先生の口を拭いてないで意見してくれ」
腕は治ったのに、未だに世話をされるのはどうなんだ?
「私も意見を言ってもよろしいんですか~?」
「もちろん言ってくれ。合わない人間と暮らして行くのはツラいだろ?」
それが原因で転職したようなもんだし。
「ん~? 性格の悪い人じゃなければ、私は構いませんけど~」
総合すると性格の悪くない、化粧の上手い美人のお姉さん?
「あとはアリス先生の意見ですけど……」
もぐもぐ小さな口を動かして、一生懸命食べていたが、やっと食べ終わったので聞いてみた。
「んっ、ふはー! お腹いっぱいだ! アタシの意見はアタシの活躍を奪わないことと、アタシよりおっぱいが小さいことだ!」
すげー大人げない意見だ。
「勇人の意見は何なんだ?」
「オレの意見は戦闘能力ですね」
全員の意見を総合すると、顔と性格がいい年上で、おっぱいが小さい前衛職?
「もうちょっと真面目に考えてくださいよ」
「アタシは真面目だぞ! おっぱいが大きかったらアタシが毎日落ち込むからな! おまけに活躍まで奪われたら泣くぞ!」
「わ、解りましたよ」
必死なのでおっぱいが小さい人を選ぼう。
「とりあえず、その条件で捜してみます」
条件が厳しいな。
人の多い領都カレイラか、王都スケイルレーセの奴隷商でも当たってみよう。
1人1人捜していくのは不可能だ。冒険者は大抵チームを組んでるし、新人を勧誘してもヤバい奴らに狙われてるから危ない。
戦闘能力が高いのが最低条件だ。
「旦那様、私より美人はちょっと……」
女の子のワガママを全て聞いていたら、纏まる話も纏まらないな。
「じゃあ今からオレ1人でカレイラに行くんで、みんなは休んでてくれ」
「結衣も付いて行ったらダメ?」
奴隷商に行くから結衣は連れて行けない。
「飛行円盤より、オレが全力で飛んだほうが5倍は速いからな」
全力で飛んだら、今のオレでは制御できないから飛ばないけど、倍くらいの速度なら出しても問題ない。
「わかった、我慢する」
「結衣ちゃんの面倒はアタシたちが見るから心配しないで、いい仲間を見つけて来るんだぞ?」
「側室はいいけど浮気はダメだからね!」
貴族的な考え方だな。
まあ、そう教育されて16年間生きてきたんだし当然か。
この街は復興途中だから、新しい仲間の実力を確認するための仕事がない。先にマキナまで行って貰うことにしよう。
「お気をつけて行ってらっしゃいませ~」
レイラが急いで支度をしてくれて、小屋の前でみんなが見送ってくれる。
結衣は支度をする間、ずっとオレの服を掴んでいたけど、ワガママを言わずに見送ってくれた。
「先にマキナに行ってるから、早く来るんだぞ?」
「気をつけてね!」
「お化粧道具をお土産に買ってきてくれる?」
「念のために10日分のお弁当を入れておきましたから~」
みんなの声を聞きながら、オレは空高く舞い上がった。
街の上空ではあまりスピードを出さず、抜けた所でスピードを上げた。
景色を楽しむようなスピードではないので、領都の方角だけ見て、ひたすら飛んだ。
いくつもの村を越えていく。
ユアンの街から砦に誘導したので、ユアン以降の村には被害はない。
もう村人は戻っているけど、どこか不安そうな表情をしている。
避難中に盗賊の被害に遭ったのか、少しだけ荒らされている村もあった。
こっちは帝国の工作員ではなく、本物の盗賊の仕業だと思う。
3時間ほど飛ぶと、領都カレイラが見えてきた。
門の前で下りて門番に挨拶すると、特に調べられたりすることもなく、素通りさせて貰える。
そこから冒険者ギルドに報告をしたあと、領主のアッカー伯爵に会いに行った。
報告を聞いているのか簡単に会えた。
詳細を報告し、アーノルドさんの罷免をしないで欲しいと頼んだ。
オレの指輪の秘密もあるので、最初から罷免するつもりはなかったらしく、安心するように言われた。
泊まっていくように言われたが、仲間を増やすために奴隷商に行くと伝えると、紹介状を書いてくれた。
ありがたく受け取り、街に2つある奴隷商のうち、近いほうから回ることにした。
奴隷商に着くと、オレの顔を知っていたようで、紹介状が無意味になってしまった。
下にも置かない扱いを受け、応接室で食事まで振る舞われた。ちょうど腹が減っていたので助かる。
食事中に自己紹介をして、奴隷商人と会食した。
食事を終えると、奴隷の購入について話を切り出した。
「強い仲間を捜してるんですけど、強い冒険者は1人というのが少なくて」
少ないというより、ほとんど居ない。
有名になるくらいの活躍をするには、やはりチームを組まないと難しい。
1人というのは問題があるか、1人が好きな冒険者くらいだろうから、どのみち仲間になってはくれない。
「そこで1人1人捜していくより、奴隷商に条件を伝えたほうが早いかと思いまして」
「確かにその通りで御座います。条件に合う方を捜すよりは、大勢の中から選ばれたほうが早いですからな」
「それで家族と話し合った結果なんですけど、うちはオレ以外が女の子で、男は貞操が危ないから嫌だと」
まずはマリーナの意見を伝えていく。
1番、条件が弛いと思うし。
「それはそうでしょうな。法で縛っているとはいえ、強制的に従える魔法があるわけではないのですから」
手元のメモに書き込んでいる。
主人を害したり逃げ出したりすると逮捕されるし、やったことによっては処刑される。
「あと、オレの姪っ子の条件なんですが、美人の年上のお姉さんがいいそうです」
「ええ、ええ、甘えたい年頃なんでしょうな。ユート様が仕事に行くと寂しいんでしょう」
子供の可愛いワガママにニコニコしている。
「それとメイドの意見なんですが、性格の悪い人の世話はしたくないようですね」
「誰でもそうでしょう。基本的な条件で御座います」
まあそうだよな。
性格の悪い奴隷って、それほんとに奴隷か?
「それでオレの条件なんですけど、戦闘能力の高さと索敵の上手い人を」
「戦闘メンバーなら当然ですな。そのような条件は冒険者の方ならよく言われます。ですから大勢取り揃えておりますよ」
索敵の大事さを知らない奴は、長生きできないだろうからね。
オレも常に索敵をしているわけじゃないし、交代で索敵してくれる人が欲しい。
それに、オレの留守中や別行動の時に、アリス先生たちだけでは索敵が心許ない。不意打ちで大怪我されるのは嫌だし。
「最後の条件なんですけど、これくらいの小さい女性がいまして」
立ち上がり、手でオレの鳩尾あたりを指す。
「おおっ! 知っておりますとも。アリス様ですな。御披露目の時に拝見致しました。とても愛らしい少女でした」
27歳だから少女じゃないけどな。
「魔法の名手とお聞きしました。なるほど、アリス様の得意な魔法とは別の魔法が得意な仲間をお求めですな?」
1人で納得しているところに悪いけど、全然違う。
「いえ、欲しいのは前衛です」
「そうですね! 魔法使いの方は魔法を使う時に無防備になりますからな」
オレにとってはそれもあるが、本人はただ自分の活躍の場を奪われたくないだけだ。
英雄を美化しすぎじゃないか? オレたちは強いだけで立派かは知らん。
「で、アリス先生の条件なんですが、自分よりもおっぱいが小さい子じゃないと嫌だそうです」
「…………えっ?」




