表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/245

しばしの休息

 翌朝、痛む体をおして街に帰る。

 ちゃんとした食事と睡眠で、人質の体力もそこそこ回復していた。

 歩みは遅かったが、適度な休息を挟みつつ街までの行程を消化していった。


 休憩中にいろいろと話しておく。

 この人たちは、国の仕事で使者として赴いていたのに、失敗してしまった。

 それでも、自分の仕事に責任があるので、オレたちから敵の情報を聞いて、王に伝えなければならない。


「奴らをの目的ってなんですかね?」


「お察しとは思いますが、帝国兵でしょうから。その目的については政治に関わるので私の一存ではお答えできません。助けて頂いたのに、申し訳ない」


 オレが尋ねると、言葉を濁しながら答えた。

 まあ仕方ないか。国に所属する人間ではないので、戦争ですとは言えないだろう。

 民間人には正式に発表があるまでは内緒のはずだ。


「気にしないでください。念のために聞いただけですし、冒険者ギルドの長以外の人に、何も言うつもりはありませんので」


「助かります。各ギルドのほうには、そのうち通達があると思いますので、先にある程度伝えて頂けると助かります。ギルドに混乱されると治安の乱れに繋がりかねないので」


 女性たちは男たちの話し合いを遠巻きに見ながら、オレのことをアリス先生たちに聞いている。

 貴族としては、力ある人間を取り込みたいのは当然の反応なんだろうけど、会う貴族会う貴族こればかりではキツいな。

 なんか種馬みたいな扱いをされてる気がして微妙だ。


「だからっ! 私の未来の旦那様なの!」


 ついにマリーナが怒り出した。


「こら、お前たち。助けて頂いたお嬢さん方に失礼なことをするんじゃない」


「申し訳ありません、お父様。お2人も失礼しましたわ」


 父親に叱られて素直に謝るあたり、かなり素直な娘さんたちだ。

 両親の躾がしっかりしてるんだろう。王がマトモなだけあって、マトモな貴族が多い国だから、オレはこの国を気に入ってる。


 水分補給と軽い食事が終わり、峡谷を抜け森を歩く。

 何度か魔物が襲ってくるが、魔力の回復したオレたちの敵じゃない。

 使者の人たちも、オレたちの力を知っているので落ち着いたものだ。

 オレの怪我を気にしてか、アリス先生とマリーナが張り切って戦う。

 腕にヒビが入っているアリス先生のほうが心配だが、魔法で倒すので平気だと答えた。




 飛行円盤が使えないので、何日も掛けてようやくユアンの街にたどり着いた。

 修理中の門が見えると、使者たちの顔は明るくなり、歩く速度も上がった。

 門に着いた所で力が抜けたのか、みんなして座り込んでいたが。

 オレたちが門番に話をして、助けた人たちを運んで貰った。


 オレたちは全員、医者に診て貰って治療を済ました。

 アリス先生の腕はポーションを併用すれば数日で完治するらしい。

 オレの怪我もマリーナの怪我も2日で治るそうだ。

 オレの怪我は1番酷かったそうだが、煌力の影響か回復力が高い。医者が頭を捻っていた。


 アーノルドさんへの報告は兵士がしてくれるそうなので、悪魔の死体を預けて自分たちの小屋に帰る。

 傷が治るころにアーノルドさんが来て事情を聞くそうなので、それまでのんびりしよう。


「叔父ちゃんおかえりーー!」


「皆さまおかえりなさいませ~。ずいぶんお怪我をなさってますね」


 小屋に帰るなり結衣が飛び付いてきたが、オレが怪我をしてるのを見てすぐに離れた。


「結衣が治すね?」


「待った。骨折は変にくっつくとマズイから、マリーナだけ回復してくれ。オレとアリス先生は医者が診てくれる」


 結衣に回復魔法を無闇に使わないように教えておかないと、そのうちヤバいことになるかもしれない。

 勝手に回復魔法を使わないように言い含めておく。


「む~、せっかく叔父ちゃんたちの役に立てると思ったのにな~」


 結衣はブツクサ言いながら、マリーナの怪我を治してくれた。


「ユートさまとアリスさまのお世話は私に任せてくださいね~。お風呂もお食事も手ずからして差し上げます」


 オレは別に腕は折れてないんだけどな。

 アリス先生は腕にヒビが入っただけだから、痛みを我慢すれば動くし。

 オレは肋骨を折っただけなので、腕は痛くないし。そこまでの世話は必要ない。


 しかしアリス先生は面倒臭がりなので、メイドに甘えるのが大好きだ。

 大喜びで風呂の世話や、食事を食べさせて貰っていた。



 怪我が治った次の日、アーノルドさんが訪ねてきて、事情の説明をしてくれた。


「ユート殿たちが捕まえた盗賊を取り調べた結果ですが、持ち物や言葉、食事の時の仕草などから帝国の人間だと確定しました。目的については陛下に報告をして判断されるので、ここでは控えさせて頂きます」


 ここでいったん区切り、レイラの淹れた茶で喉を潤してから話を続けた。


「そしてユート殿が倒したアークデーモンですが、奴が物資を奪った犯人だったようです。空から襲撃し、有りったけの収納の指輪を使って奪ったようです」


 予想通りだな。

 あの真っ黒な見た目じゃ、復興途中で煌力灯が少ない街の夜に、空から飛んで来たんじゃ見つからないだろう。

 かなり速い速度で飛んでいたし、警備の兵は訳も解らず殺されたはずだ。


「それで、戦利品なんですけど、回収していますから返しましょうか?」


 さすがに復興のための物資を、毎回オレが貰うのは気が引けるし。


「前にも言いましたが、タダで返されると困ってしまいますので代金は払います」


「前回は商人から買い取る前だったけど、今回は買い取った後ですよね? 大丈夫なんですか?」


 金を二重に払うはめになるんだけど。

 商人が奪われた物もあるだろうから、その分はアーノルドさんに被害はないが。


「おそらく私は罷免されるでしょう。後任に託すことになるかと思います」


 代官を辞めるのか。


「オレが伯爵に掛け合ってみましょうか?」


「いえ、結構です。ご厚意だけ頂いておきます」


 清廉潔白な人が辞めさせられるのは、領地に取っても街に取っても損失だと思うけど。

 どうせ王都に行く途中、領都カレイラに寄るから、その時に伯爵に掛け合ってみよう。

 減棒は仕方ないとしても、代官の罷免は厳しい。今回の件は誰でも防げないだろうし、オレの指輪の秘密もあるので頼んでみよう。


「それで使者の方々ですが、捕らえた敵兵の取り調べが終わってすぐに、王都に帰還されました。護衛を200人付けたので大丈夫だと思います」


 それじゃあ、この街の戦力がかなり減るな。

 しばらくは様子見で留まろうかな。


「帝国兵も一緒に護送していますから、陛下と閣僚の方々が話し合いを終えたら、ユート殿にも説明があると思われます」


 オレに報告をする理由はないはずだけど、仕事でも頼みたいのかね?



「ふぅ……なんか面倒な事態になりそうだな」


 アーノルドさんが帰ったので、レイラにマッサージをして貰っている。

 傷が治ったとはいえ、数日間運動をしていないので体の調子が悪い。


「戦争が始まるんですか?」


「……可能性はある。でも言いふらさないようにな」


「これでも王城で働いていましたから~、そういったことに気を付けないとクビになってしまうんですよ~?」


 守秘義務とかしっかりしてそうだな。


「貴族の方たちの秘密なんか知っても、知らないふりをするくらいでないと~、派閥争いとかに巻き込まれてしまうんですよ~? 酷いですよね~」


 オレは一生、城で働きたくないな。

 しかし、戦争が始まるとなると、戦力を増やすために動いたほうがいいな。

 今回もキツい戦いだったし、明日にでも皆で相談してみるかな? 希望とか聞いておこう。

 オレはマッサージを受けながら、ゆっくりと(まぶた)を閉じていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ