話の通じない奴は、力が有効だと思いました
盗賊の待ち伏せに気付いたオレたちは、商人たちの守りは商会の用意した護衛に任せて、冒険者たちで攻撃を仕掛けることにした。
「それじゃ行って来ますよ? フレッドさん、オレだけで片付けてもいいですよね?」
先行して引っ掻き回すように言われたが、フレッドさんたちが到着する2分以内に、オレだけで倒すつもりだ。
「それは構わないけどな、無茶はダメだからな? 俺たちはチームなんだから、1人で片付けようとする必要はない」
「無茶はしませんよ。100人くらいじゃオレは負けませんから」
強い魔力も感じないし、纏めて倒すこともできる。
「ユートの実力は冒険者ギルドじゃ有名だから大丈夫だろうけど、俺たちにも仕事はさせてくれよ」
フレッドさんの諦めたような声を背に、飛び出して行こうとしたオレに、ダニエルの怒鳴り声が飛ぶ。
「貴様ら! 勝手に決めるな! 護衛を優先しろ! まさか盗賊に怯えて逃げ出すつもりじゃないだろうな?!」
なんで先制攻撃を仕掛けられるのに、護衛を優先して倍の戦力に囲まれないといけないんだ?
この人数での防衛戦は、荷物や商会員に被害が出るだろ。
守りながら戦うのは難しいんだから、先にオレたちから仕掛けたほうがいい。
数の少ない側が有効な防衛戦をするのは、かなり難しいぞ。
「我々は逃げたりしない。戦力差を考慮した作戦を実行したいだけだ」
「そんなことを言っても誤魔化されんぞ! 見捨てて逃げる気だろう!」
さすがに面倒になるな。そもそも護衛の仕事を頼んだんだから、戦えない奴が作戦に口出ししないで欲しい。
護衛対象がプロの作戦に口出しして上手くいくはずがないので、契約の時に取り決めたはずだぞ。恐怖で頓珍漢なことを言い出すなよ。
「フレッド、むこうにだって斥候はいるんだ! 時間を掛ければ見つかるぞ!」
「無視して仕掛けよう!」
フレッドさんの仲間も焦っているようだ。
「許さんぞ! ワシを守れ!」
責任者のくせに見苦しい奴だな。
女の子たち全員、ドン引きしてるぞ。
無能な味方が1番怖いな~。敵なら倒せばいいだけなのに、味方だと足を引っ張られ続けるんだもんな。
「あなたもウンザリでしょ? まだ若いから慣れてないだろうし」
呆れた目で見ていたオレに、偵察に出掛けた女性冒険者が声を掛けてきた。
「まだ20代に見えるのに何を老け込んでるんです?」
「あはは……他人と組む仕事だと結構あるのよね、こういうことが。だから達観しないとやってられないのよ」
「達観して仕事が上手くいくんですか? あれの言うことを聞いてたら死人が出ますよ?」
「…………」
ぐうの音も出ないらしい。
「ん? フレッドさん! 気付かれたみたいだ! 連中が動きましたよ!」
索敵を続けていたオレが、盗賊が動いたことを告げる。
「本当か! クソッ、迎撃準備だ。馬車を下げろ。商会員は馬車の下にでも入っておくんだ!」
人数が多いから、馬車の中に全員は無理だしな。
「お前ら! 勝てるんだろうな! ワシは死にたくない! なんとかしろ!」
自分で首を絞めておいて何言ってんだ?
「ねえねえ、結衣も魔法を使ってもいーい?」
袖を引く感触と、可愛らしくノンビリした声に振り向く。
結衣がオレを見上げてニコニコしていた。
後ろにはレイラが付いていて、常に結衣から目を離さないようにという指示を守っていた。
「いいけど、戦うのはダメだぞ?」
「うん! 守ってあげる!」
結衣が声をあげた途端、盗賊が来る方向とこちらの間に結界が張られた。
通せんぼするように腕を広げて、結衣が立ち塞がっていた。
守ってあげるが言霊か? 結衣の呪文は相変わらず気が抜けるな。
結衣の後ろにはレイラがピッタリと張り付いて、いざという時は結衣をかばうつもりのようだ。
そんなことまで指示してないんだが、うちのメンバーは結衣に甘いからな。
「すげえ結界だ。こんなに強力な魔力を、あんなに小さい子が……」
商会員たちも結界が張られたので落ち着いたのか、呆然と結界を見ていた。
盗賊たちが来るまでに落ち着いてよかったな。オレたちも仕事がしやすい。
「さて、エルトンさん。ユイが結界を張ってくれたんだ。守りの心配はまだあるか?」
「な、ない。ないから早くなんとかしろ!」
困ったオッサンだな。
「勇人、アタシも魔法を撃とうか?」
アリス先生はそう言うけど、微かに震えているから、前に殺した時のことが、まだ消化できてないんだろう。
「先生、無理はしなくても、オレが守りますから大丈夫です」
「……恥ずかしいこと言うなよ。ドキッとしちゃうじゃないか」
そう言いながらも、嬉しそうにモジモジしている。
先生とイチャイチャしてると、身体強化で走ってきた盗賊たちが、弓を射掛けてきた。
当然のごとく、結衣の結界に阻まれて弾かれる。
「てめえら! この数が見えねえのか! おとなしくすれば命は助―――――」
「聞く耳持たん!」
結界から出たオレが、サイレント・キルレーザーを連射して股間を撃ち抜く。
「ぐあぁぁぁぁ」
「ぎゃぁぁぁぁぁ」
「いてえぇぇ」
「クソックソッ!」
次々に股間を撃ち抜かれた盗賊たちが、痛みと屈辱で地面を転げ回る。
逃げる盗賊も容赦なく撃ち抜き、辺り一帯に恐怖の悲鳴が響き渡った。
仲間を盾にして防ごうとする奴もいたけど、仲間ごと撃ち抜いて、逃げられないことを知らしめた。
「股間を撃つならアタシも大丈夫そうだ! 勇人にばかり負担は掛けないぞ!」
そこへアリス先生も参戦し、味方の男たちまで恐怖のどん底に落とした。
アリス先生はまだ下手なので、怪我をする範囲が広いうえに、炎の魔法を使っているので怪我の見た目が酷い。
アリス先生は怒らせないようにしようという、冒険者ギルドの決まりごとを再確認した。
あっと言う間に100人を超える盗賊たちを無力化したオレたちは、痛みに呻く盗賊を冒険者全員で縛り上げた。
「手当てはしないぞ? どのみちお前たちの末路は決まってるんだ。それよりアジトの場所を話せ。ついでに潰してきてやる」
オレは盗賊の胸ぐらを掴んで尋問した。
「ユートは意外に容赦ねえな……」
「冒険者にしちゃ礼儀正しいのにな」
「何の迷いもなく股間を撃ったな」
「そのうえ、即行で縛り上げてアジトまで潰す気だ」
「全て奪い尽くす気だな」
うるさいよ。冒険者なら当然の判断だ。
アジトを残せば、また盗賊のアジトとして使われるだろうし、資金まであるなら簡単に盗賊団を結成できる。
「俺たちはこんな恐ろしい奴らに絡んでたのか……」
「謝れば許して貰えるかな?」
「あんなに凶暴で強い奴を弱そうだとバカにしたんだぞ! その場で殺されなかったのが奇跡だ!」
一応の護衛対象を殺すわけないだろ。
オレを何だと思ってんだ?
気を取り直して、盗賊たちからアジトの場所を聞き出すと、エルトンにアジトに向かう許可を取って向かう。
「ワシの命は大丈夫なんだろうな? いきなり股間を撃たれたりしないようにして貰うぞ!」
勇人が1人でアジトに向かうと、エルトンのオッチャンがブルブル震えながら、フレッドさんに詰め寄った。
アタシが近付くと男連中が股間を押さえて逃げるのが気になるけど、あのオッチャンが大人しくなりそうでよかった。
「ギルド員が護衛対象に攻撃するわけがないだろう」
「でも怒らせないほうがいいぞ」
「護衛に嫌われて、いざという時に命懸けで守ってくれるはずないだろ?」
「普段から言動には気を付けとかないと、部下に裏切られてもしらねえぞ?」
冒険者のオッチャンたち、ここぞとばかりに忠告してるなぁ~。
なんか動物の調教に似てるな。動物もどっちが上か理解させてから調教するもんな!
異様に早い時間で勇人が帰ってきたので、アジトを潰すのに失敗したんじゃないかと心配してる商会員たち。
そんなわけないじゃんか。あんなにニコニコしてるんだから、戦利品がいっぱいだったに決まってる。
早くアタシたちの家が手に入りそうでよかったな~。




