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避難民の現状

 万能薬を5人分買ったので、また稼がないと立派な屋敷が買えない。

 できれば10億シリンはする豪邸がいいので、稼ぎまくらないと。

 結衣のためにも、結婚のためにも妥協はしたくない。


 オレたちは仕事のために、アッカー伯爵領の領都カレイラに戻った。

 ランドのオッサンたちに挨拶しようと思ったけど、盗賊退治に出掛けたらしい。

 復興のために集まる金や資材を狙う盗賊団も多く、かなりの商人が被害にあっているらしい。

 そのため、商人たちが金を出し合い、盗賊退治を依頼した。


 本来は兵士の仕事だけど、帝国との小競り合いが発生しているので、伯爵も防衛のための軍隊を出している。

 そのせいで盗賊退治に出す兵士に余裕がなく、領地の治安を守る兵士が足りない。

 復興にも金が必要なので、頭が痛い話だろうな。


 だからこそ冒険者ギルドも、盗賊の被害は見過ごせない。

 現在は、予定の7割の資材が届けばいいほうらしい。

 冒険者ギルドが退治に乗り出すまでは、半分以下の資材しか届かなかったそうだ。


 おまけに、復興中のユアンの街まで入り込んで、資材を奪っていく盗賊もいるらしい。

 警備の兵士が数十人、気付かれることなく殺されていたそうだ。

 どうやって街に侵入したかも、どうやって大量の資材を奪ったのかも判明していないと聞く。


「ねえねえ叔父ちゃん、あの人たち、病気になっちゃったの? 助けてあげないと! 結衣が治してあげてもいい?」


 結衣が言っているのは避難民だろう。路上に座り込んだ老人や、女子供が多い。

 男は働き口を探してるのか、復興の仕事のためにユアンに行ったんだろう。

 村なんかから逃げて来た人は戻れただろうけど、ユアンの街から逃げて来た人は戻れない。


「あの人たちは病気で座り込んでるわけじゃないと思うぞ。家に帰れない人たちだ」


 慰めるように結衣の頭を撫でて、彼らの境遇を伝えた。


「迷子になったの?」


「違うよ。オレたちと同じように、家を壊された人たちだ。復興するまで帰れない」


 はっきり教えるのは胸が痛むが、目を逸らしていい問題でもない。


「……結衣もお家が壊されて、凄く悲しかった」


 結衣の目が潤み始めた。

 結衣はオレの服に顔を押し付けて涙を隠す。


「でもみんな生きてるだけ良かった。あの人たちを逃がすために戦った人たちは死んじゃったからな」


 顔を押し付けたまま、コクンと首を動かす。


「叔父ちゃんも頑張って復興の仕事をするから、あの人たちもいつか帰れるさ」


「……ありがとう、叔父ちゃん……」


 まだ涙目だったが、笑顔を見せてくれた。


「それじゃ勇人、商人の代わりに資材を運ぼうか!」


「私だって頑張るわよ?」


「復興現場でも、ユートさまたちに生活の不自由はさせませんよ~」


 みんな復興に乗り気だな。

 オレたちは(はや)る気持ちで冒険者ギルドに向かった。

 ギルドの掲示板には、もっと高額な依頼もあったけど、復興を優先する方針に変更した。

 今回も伯爵やギルドに資材を集めて貰い、オレたちで運ぶんだけど、商人の護衛も一緒に請けた。

 行き先も同じだし、復興も進むし、報酬も増えて誰も損をしない。


 商人と言っても資材だけでなく、建設関係の事業もしているらしいので、大工や人足も連れていくので数が多い。

 複数の冒険者パーティーを雇っているが、戦力が足りずに不安だったようだ。

 割のいい仕事も残っていたので、相当数の冒険者が盗賊退治に出てるんだろう。

 退治できなきゃ報酬も入らないのに、割のいい仕事を放置して退治に行くなんて、やっぱり冒険者はいい人が多いな。


 護衛の仕事を請けたと連絡が行ったようで、オレたちは伯爵やギルドから物資を受け取ることを優先する。

 商人の都合にもよるが、出発は準備を終えて2~3日後になるだろうと言われた。

 ギルド職員の話によると、戦力が足りずに足止めをされていたので、保存食などを食べて、滞在費を節約していたらしい。

 だからすぐには出発は無理だそうだ。2~3日必要だというので、その間に更に資材を集めるそうだ。


「2~3日の間はどうしようか? アタシは魔法の練習をしたいんだけど」


 アリス先生は仕事より修行を優先したいようだ。

 強敵に狙われているという実感があるので、最近のアリス先生は修行に熱が入っている。


「私も魔力を上げる訓練をするわ! 今度は旦那様と一緒にテロリストと戦うんだからっ」


 さすがにすぐには無理だろうけど、マリーナは剣の腕はいいから、魔力が今の倍くらいになれば、多少は安心できるかもしれない。

 と言っても、魔力なんて簡単には上がらないから、剣の訓練と一緒にいつもやってる。

 剣の訓練を減らして、魔力を鍛えるつもりなんだろう。


「結衣はお料理する! 叔父ちゃんに変な物を食べさせちゃったから……」


 料理は食材から覚えないと厳しいだろうな。

 レイラが教えてくれると思うけど、図書館に連れて行ったほうがいいな。


「レイラ、結衣に筆記用具を買って、図書館に連れて行って教えてやってくれるか?」


「もちろんです~。……そういえば~、ユートさまから離れてもよろしいんですか?」


 テロリストの件で離れないように言ったからだろう。


「離れてる間は、索敵は常にするつもりだ。強い奴が居たら確認しに行くから大丈夫」


 それに、奴らが無意味に結衣たちを襲撃するとは思えないし。

 奴らにとっては、オレ以外はあまり興味がないだろう。出会えば攻撃してくるかもしれないけど、殺す相手は誰でもよさそうだったからな。

 暴れている時に近付かないなら危険は少ないだろう。殺すのは目的のついでみたいだったし。


「目的を果たした時の引き際もよかったし、以前はどうかしらんけど、今は目的が優先じゃないか?」


 どのみち誰かが暴れれば気付くし、オレも煌力の修行を街でしてるだけだから、街のどこでも1分以内に向かえる自信がある。


「オレは資材が集まりしだい、冒険者ギルドや伯爵の屋敷に向かうから、宿に居なかったらどっちかにいるから」


 必要な確認をお互いにしてから、それぞれの目的を開始した。

 アリス先生とマリーナは魔物相手に練習するらしいので、危なくなったら魔力を高めて報せることになった。

 オレの探知の範囲は1kmほどだが、魔力を高めたら範囲外でも気付ける。

 オレも煌力の使い方を訓練して、更に範囲を延ばしてみたい。

 より遠くの煌力を操れるようになれば、探知範囲も増すし、いろんな技の精度もよくなる。


 あとは、より多くの煌力を操ることが課題だな。グレッグ・アークライトとかいうテロリストにフルパワーの一撃が防がれたのがショックだ。

 現時点で破壊力が1番高い技だし、あれで仕留められないと厳しい。

 複数の敵を相手にするには、なるべく早く数を減らさないと押されるだろう。

 決め技で確実に倒さないと、2人出た時点でオレはともかく誰か死ぬかもしれん。


 オレが強くなるのを期待していたようだし、オレの力を利用したいんだろうけど、確実に殺せれば利用はされないはずだ。

 技の威力は大事だ。今は修行中の技が完成すれば、どんな相手も一撃で殺せる。

 少なくともコントロールさえミスらなければ、致命傷は与えられるだろ。


 オレたちは商人の用意が整うまで、それぞれ自分を高めるために時間を使った。

 3日後、冒険者ギルドから連絡が来て、待ち合わせの場所に向かった。

 正門に100台くらいの馬車が並び、50人くらいの護衛らしき人がいる。

 冒険者の数はオレたちを含めて21人だと聞いてるから、商人お抱えの護衛は30人だろう。


 オレたちが最後みたいで、合流すると自己紹介が始まった。商人の名前はダニエルさん。傲慢そうな目で護衛や冒険者を見ていたので、あまり印象はよくない。

 冒険者たちの名前すら聞かずに、出発を告げた。

 冒険者たちは慣れているのか、驚くオレたちに肩を(すく)めたり、ウインクしたりして出発した。


「なんか面倒そうな仕事だな~」


「その意見には同意します、アリス先生」


 世の中にはいろんな人がいるな~。

 日本では礼儀知らずに会うことはあまりないからな。

次の話から、午前0時に投稿します。

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