女の子の手料理は残しちゃダメな空気ってあるよね?
意外に消耗が激しい戦いになったオレたちは、十分な休養を取ってから次の敵に向かう。
特に避け続けなければならないマリーナは消耗が激しい。
1日に1体を倒すことにして、安全に気を使った。
3日目には必要な分を確保できたんだけど、アリス先生もマリーナも修行がしたいと言うので、確認できた6匹全部倒すことにした。
「姉様の魔法、当たるようになってきたね?」
「命が懸かってると集中できるからな~。避けるのはマリーナに任せてるし」
レイラに料理を習いながらマリーナと話しているので、食材の切り方が不揃いだ。
「アリスさま~、食材ごとに均等に切ってくださいね~? 味や食感が変わってきちゃいますから~」
「お、おー、わかった……」
レイラの笑顔に妙な迫力を感じたのか、アリス先生は冷や汗を流して頷いた。
「食材を入れるタイミングや順番が変わると、食材の切り方も変えないとダメですからね~?」
「なんでか解らないけど、怖いから従っておくことにする」
包丁を持って笑顔で注意されると、レイラでも怖いな。
殺人鬼のほうが殴り飛ばせるだけ、オレにとっては恐くないぞ。
「解らない時は質問してくださいね~?」
「は、はい! …………で、なんでだ?」
「火の通りにくい食材や味が沁みにくい食材がありますから~。そういった食材を相応しい大きさに切っているのに、入れるタイミングや順番が変わると、更に小さくしたり大きくしたり、味の沁みやすい切り方にしないといけませんよ~」
そういえば、こっちの食材は味が同じでも見た目や硬さが違う場合があるからな。
大根の味が欲しいけど、同じ味の食材は硬さがトマト並みとかだったら、地球と同じタイミングで投入はできないよな。
これは地球で料理上手だったとしても、こっちで料理は無理だろうな。
最初にアリス先生が作った料理が、凄まじく人生に後悔する味だったのも仕方がない。
「叔父ちゃ~ん、これ味見して?」
結衣が差し出した肉を食べてみる。
ちょっと薄いような…………
「辛っ! 急激に来たぞ?! ゲホッゲホッ」
「ちょっと多すぎかな? あんまり辛くなかったから使いすぎたけど、あとから辛くなるんだね」
「おいおい! オレで実験するなよ、結衣」
結衣がくれた水を飲みながら文句をつける。
「ごめんなさい。でも叔父ちゃんの好きな味が解らないと……」
……オレのために料理してくれてると、文句が言いづらいな。
「お肉の味も薄いし、この調味料は使いにくいな~」
結衣の料理好きは今に始まったことじゃないけど、レイラに聞いてから使えよ。
「レイラ、私の分は終わったわよ! 褒めなさいよね!」
「マリーナ奥さまは切るのはお得意ですね~」
そこはかとなく褒めてない気がするが。
「そうでしょ! 私の花嫁修業は順調ね!」
相変わらずのチョロさで気づかない。
料理の教師としては注意したいけど、メイドとしては褒めないといけないレイラの苦肉の策か?
女の子が料理をしている姿は可愛いけど、出てくる料理が心配で楽しめないな。
何を食わされるんだ? 味付けはレイラがやってくれないかな? ……無理か。本人たちが張り切ってるしな。
「結衣お嬢さま~、その調味料は分量を間違えると毒になるので使いすぎには気を付けてくださいね~?」
本当にオレは何を食わされるんだ。
その日の夕飯は夜営地にオレの悲鳴が轟いた。
その時に煌力を込めていたようで、デスアイヴィーを引き寄せてしまったようだ。
しかし、オレがダウンしていたので地面から引きずり出せずに、結局はツタをダメにしてしまったらしい。
なんかダメージを受けていた女性陣に文句も言えず、戦える人間が損耗しているので、おとなしく帰ることにした。
ツタは35本手に入れているので問題はないけど、レイラが監修してもダメだったか。アリス先生たちの料理を甘く見すぎていたようだ。
まだ吐き気のする体を結衣に和らげて貰ったら、即行で飛行円盤に飛び乗り、機煌都市マキナに帰った。
思わない所でピンチになったけど、全員が無事に帰れてよかった。
宿に帰ると、注文した家具が出来たと伝言を聞いたので、疲れている女性陣を置いて取りに行った。
宿に帰ったオレは、お茶を飲んでいた女性陣をどかして、テーブルやベッドを端に寄せて場所を作り、結衣のベッドを出した。
「やったぁぁぁ! みんなで寝れるベッドだぁぁ!」
結衣がピョンと跳び上がり、空中で靴を脱いでベッドにダイブした。
ボフッとした音と共に、結衣の体がマットレスに沈む。頭の部分が角度を調整できるので、少しだけ起こしてやると、頭を乗せて目を閉じた。
「寝心地がよさそうだな~。アタシが15人くらい眠れそうな大きさだし」
アリス先生も我慢できずにダイブすると、結衣がぽよんと跳ねた。
「おもしろ~い。アリスお姉ちゃん、もっとやって!」
「任せとけ! えいっ、えいっ」
2人してはしゃいでいるので、パンツが丸見えになっているけど、嬉しそうなので止めない。オレもいろんな意味で嬉しいしな。
「ねえ旦那様。映像モニターをベッドの前に置きましょう? 大きなやつ」
確かに寝ながらテレビを見るのはいいかもな。
因みに正式名称は、煌力送受信映像モニターだけど、この世界の人は映像モニター、もしくはモニターと言っているように訳される。
「メイドとしては夜はしっかり寝てくださると~」
レイラは朝飯を作ってからオレたちを起こすからな。なかなか起きないから困ってるかもしれん。
「カーテンも見せてくれ! アタシの青いカーテン!」
アリス先生の上にカーテンを被せる。
「おおー、綺麗な青だな~。少し透けてるし光も入ってきていいな!」
「ユートさまがカーテンを被せると、ウェディングベールを被ったみたいですね~」
そういえば確かに。
「ばっ、ばかレイラ! 恥ずかしいこと言うな! 11歳も違うんだぞ!」
「年齢は気になさらなくても~。アリスさまはお若いから大丈夫ですよ?」
「……そうか? 若いってよく言われるけど、11歳差はキツいんじゃないかな~?」
きっと最大限に気を使って若いと言ってるんだろうな。
見た目的には幼いだもんな……アリス先生は。
「先生、オレは年齢は気にしませんよ。先生は魅力的だと思ってますからね」
「そうかそうか~。アタシはエロ可愛いからな!」
エロかどうかは知らんけど、可愛いのは確実だろう。
結衣と一緒に食料の買い出しに行くと、近所のオバちゃんにお菓子を貰って帰って来る。
本人は結衣が貰ってると思っているが、近所のオバちゃんに挨拶をした時に、アリスちゃんにお菓子をあげてるけど、太らないように気を付けてね~って言われたぞ。
アリス先生が休みの日にはグータラしてるのは、近所で有名だったからな。
妹のユイちゃんはよく家の仕事をするのに、アリスちゃんはあんまり動かないわね~って言ってた。
宿暮らしだから別にいいはずなのに、結衣がよく働くのでそんな扱いだ。
「それじゃオレはツタを届けてくるんで、先生たちは家具に不具合がないか確認しといて下さい」
「わかった! 早く帰って来るんだぞ?」
お嫁さんか母親か解りにくい言葉だな。
母親気分だったらショックだ。
オレは家具を全て出して、依頼者の所にツタを届けに行った。
デスアイヴィーを丸ごと出すと、作業員がツタを丁寧に切り取り、両端を加工し始めた。
「この端の部分にコネクターを付けないといけないんだよ。だから繊維を傷付けないように切り取らないと、素材としては使えないんだ。素材が出回らない理由の1つだね」
なるほど、ケーブルで言うなら、中の銅線がグチャグチャに潰れたみたいな感じだとダメなんだな。
敵が強いうえに、本体は土の下でツタを斬り落とすわけにはいかないんじゃ、素材が出回らないのは当然だな。1本の値段が高いのも頷ける。
早く帰って来るように言われていたけど、作業を見ながら説明を受けていたら、3時間くらい経っていた。
慌てて依頼達成証を書いて貰って、冒険者ギルドに報酬を受け取りに行ったが、遅く帰ったので叱られた。
「ちゃんと狙われてる自覚を持てよ! アタシたちみんな心配したんだぞ!」
また心配を掛けてしまった……迂闊。




