冒険者ギルドの仕事
冒険者ギルドの調査が終わったようで、ギルドに呼び出されたオレたちは、急いでギルドに向かった。
ギルドの仕事は冒険者に仕事の斡旋をすることだけど、そのために依頼の違法性などを調査される。
犯罪に関わる依頼ではないか、依頼の内容に食い違いがないか、依頼料は適切かどうかなどを調査する。
犯罪に関わる依頼とは、依頼者が娘が家出したので連れ帰って欲しいなどと嘘をつき、冒険者を誘拐に使ったり、奪われた物を奪い返して欲しいと嘘をついて、強盗を働かせたりなどだ。
依頼の内容の食い違いについては、敵の正確な数などを調査する。
敵は1人だけとか1匹だけなどと依頼者が伝えたのに、数が多かった場合には命に関わってくる誤情報だ。
敵の数によっては複数の冒険者が請けるべき依頼になる。
そうなると依頼料は跳ね上がるし、執るべき作戦も考えなければならない。
準備だって変わってきてしまい、必要な日数や経費が違うので、請けられない冒険者も出てくる。
それで、請けたはいいが失敗したり依頼を撤回した冒険者に、違約金を払えと言われても払うのは可哀想だ。
そして依頼料に関してだけど、相場などを知ってる冒険者は少ないし、薬草などが取り尽くされたり、天候不順などで稀少価値が高くなっている場合がある。
他にも護衛の依頼で距離が遠いのに安いとか、盗賊が多く出る場所なのに、同じ距離だからと安全な場所の料金で依頼してくる商人もいる。
あらゆる場合に相場は変わってきてしまい、不当な報酬で冒険者が困窮しないように配慮されている。
こういった調査は、依頼者のためでもある。
正確な情報がなくて仕事に失敗すれば、依頼者だって困るからだ。
冒険者ギルドにとっても、適切な依頼を適切な冒険者に回すために必要なことだ。
それが出来なければ、依頼者と冒険者の両方の信頼を失なってしまう。
そうなるとギルドに依頼は来ないし、冒険者も依頼を請けない。
大量の失業者が出るし、兵士の手が回らない部分も放置されて治安が乱れる。
商人や一般人にしても、必要な素材などが入りにくくなれば生活に影響が出る。
完璧な調査は無理でも、出来る限りの調査をしないと、国全体が困る事態になりかねない。
もっとも、緊急性の高い依頼もあるので、全てが調査されるわけじゃない。
その場合は、冒険者にきちんと説明することが職員に義務付けられている。
依頼料も高めに設定され、冒険者ギルドも仲介料などを取らずに税金だけ徴収される。
オレは税金の処理だけでも面倒だと思うので、手数料を取ってもいいと思う。
他にも、犯罪に巻き込まれないように、兵士などが立ち会って依頼を請ける。
例えば、誘拐されたから助けてくれという依頼だと、兵士に相談すべき内容だから、冒険者ギルドに来ることがおかしい。
犯罪の捜査などは兵士の仕事だけど、被害者が被害届を出す出さないは自由だ。
兵士に不信感などがあって、冒険者を希望する人もいるので、そんな場合は兵士を呼べば仕事なので来てくれる。
兵士の立ち会いのもとに、冒険者が依頼を請ければ、ギルドと兵士が証人になるので、犯罪に利用されることは少なくなる。
なんにせよ、どんな仕事に就くにしても、ギルドに所属していたほうが安心だ。
商人ギルドでも、冒険者ギルドに不当な依頼料の請求をさせないなどが、ギルド同士の会合で決まっている。
ギルド同士の繋がりも非常に大事なことで、話し合って取り決めをし、お互いの利益を守っている。
複数のギルドが関わる案件などは、利益のことで揉めることもあるらしいが、大抵は落とし所を見つけて、全てのギルドが利益を得ることになるらしい。
なんで遅いの? と聞いてきた結衣に、あれこれ説明をしながら歩いていると、ギルドの看板が見えてきた。
結衣以外もそうなんだ、みたいな顔で聞いていたけど、頼むから勉強して欲しい。
オレだって修行の合間に図書館に行ったり、ギルド職員や先輩冒険者に聞いて回ってるのに。
異世界なんだから、知らないことのほうが多い。オレ1人でカバーできないから本当に頼むよ。
冒険者ギルドのドアを開ける寸前に、中にいる何人かの反応が、武器に手を掛けるような動作になった。
手練れの冒険者が何人かいるらしい。街中でも油断がない。
強い魔力、おそらくアリス先生と結衣の魔力を感じ取ったんだと思う。
「どうしたんだ、勇人? お腹でも痛いのか?」
「いや、体は大丈夫です。中に強そうな冒険者が何人かいるので考え事を」
「ふ~ん、強そうなのに仕事してないのかな? こんな時間に冒険者ギルドにいるなんて」
アリス先生の疑問もわかるけど、オレたちみたいに指名依頼の調査を待ってるだけじゃないか?
少し時間が掛かったものの、中に入るためにドアを開けた。
中に入ると冒険者たちの視線が向いたが、オレたちを見るとすぐに収まった。
「毎回見られるな~」
手練れの冒険者なら入る前から魔力に気付くし、普通の冒険者も誰か来たら確認くらいする。
確認したらジロジロ見られるわけじゃないし、戦士としては当然の反応だと思う。
「依頼の受注に来ました。勇人です」
カウンターにいた受付嬢に声を掛ける。
「お話は聞いております。調査担当の者が対応いたしますので、応接室へ」
受付嬢に付いて応接室に向かう。ドアを開けてくれて中に通された。
「すぐに担当の者が来ますので、座ってお待ちください」
オレたちが中に入ると、受付嬢は担当を呼びに行った。お茶を出して行こうとしたけど、レイラにやんわり奪われたからだ。
こういう時のレイラは押しが強いよな。相手を不快にさせないように仕事を奪う手腕が凄い。
「みなさま~、お菓子も出しましょうか~?」
「オレはいい」
「結衣はちょうだい!」
「話も長くなりそうだし、アタシも欲しい」
「私は太……お腹が空いてないから必要ないわ!」
それぞれの要望を聞いて、好みの味に調節した紅茶とお菓子を出していると、1人の職員らしき男性と、1人の冒険者らしき男性が現れた。
すかさずレイラがお茶を出すと、戸惑った感じで席に着いた。
「なんでメイドが給士してるのか解らんが、今回の調査を担当した冒険者のダルトンだ。こっちは事務担当のデイルだ」
「初めまして、デイルと申します。今回の手続きを担当しました」
「初めまして、勇人です。こっちはパーティーメンバーのアリス、マリーナ、結衣、そしてメイドのレイラです」
お互いに自己紹介を済ませた。
「それでは説明をします。まず魔物の数ですが、調べてきたダルトンさんによると1匹ずつ広範囲に生息していました」
戦闘が必要な依頼は冒険者に調査依頼として出すのみたいだな。
「詳しく説明するとな、調査した範囲には5~6匹いたんだが、幸いなことにバラけてたんだ。だから1匹ずつ相手すれば大丈夫だ」
話を聞くと、子供を産む時には番で行動することがあるらしい。
その時は凶暴性も増すし、最悪、産まれたばかりの子供も加わり、30本以上のツタに攻撃されるので、難易度が跳ね上がるそうだ。
「その結果、必要な戦闘ランクに達していると判断しましたので受注しました。報酬はツタ1本につき60万シリン、必要な数は15本以上30本以下になります」
30本までなら買ってくれるようだ。
それにしても高いな。それでも高い金属を何十Kgと使うより安いんだろう。
「ちなみにツタの値段は仲介料と税金は抜いた額です。この金額で依頼を請けますか?」
「もちろん請けます。依頼者と話は付いているので」
こうしてオレたちは、指名依頼を無事に請けることが出来た。
生息していた場所をダルトンさんに詳しく聞いてから、オレたちは仕事に出掛けた。




