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破滅の手

 轟音を響かせ、瓦礫を吹き飛ばして現れたのは、襲撃者の男だった。

 飛んできた瓦礫が、兵士たちを薙ぎ倒していく。


「今のは防御が間に合わなければ死んでたぜ。魔力をほとんど使っちまった」


 体のあちこちから血を流しているが、フラフラするでもなく、しっかり立っている。


「お前の目的はなんなんだ? なぜ攻撃してくる?」


 オレは煌力を溜めながら訊ねた。


「攻撃はついでだ。たんに暴れたかっただけだぜ? 国に属する人間は嫌いでね、見掛けたらゴキブリを潰すみたいに潰しとかないとな」


 狂暴な奴だな。

 隙があれば殺すのに、動こうとすればアリス先生とマリーナに指を向ける。


「敵が親切に教えてくれるとは思ってないだろ? 最終的な目的に関しては秘密だ。わざわざバラして阻止されたくねえからな」


 狂暴なわりに冷静さもあって面倒な奴だ。


「今回の目的だけなら話しても構わねえぜ? もう終わったからな」


 道理で素直に姿を見せたわけだ。


「今回の目的は、煌力についての研究資料を奪うことだ。もっと煌力兵器や製品を世の中に増やしたいんでな」


 親切で広めようとしてるわけじゃないよな。何の目的で煌力兵器や製品を増やしたいんだか。


「何のために?」


「それは秘密だ。最終目的に関わるんでな」


 最終目的だけは必ず果たしたいみたいだな。こんな危ない奴の目的なんてロクなものじゃない。


「ユート、もっと強くなってくれよ?」


「戦闘狂か?」


「俺は戦闘が好きなんじゃねえよ。人殺しが好きなんだ」


 そっちのほうがヤバい奴だろ。

 なんとか仕留めたいんだけど、位置的に奴のほうがアリス先生たちに近い。

 こんなヤバい奴相手に賭けに出るのは危険過ぎる。


「オレを知ってるみたいだけど、お前なんか知らないぞ……誰だ?」


「俺の名前はグレッグ・アークライト。組織【破滅の手】の殲滅のアークライトだ。覚えておいてくれよ」


 破滅の手と聞いた兵士たちは動揺してざわついた。


「あのテロリスト集団の……」


「二つ名持ちは全員、一騎当千の実力者じゃないか」


 有名なテロリスト集団らしいけど、こんな強さの連中が何人も居るのか。


「俺たちの活動も有名になってきたな。今日の所は帰らせて貰うぞ」


 そう告げた瞬間、少し離れた場所で爆発が起こった。

 それに気を取られたほんの一瞬の隙に技を放ち、煙幕と共に離れていく気配を感じた。

 奴の放った光線から、アリス先生とマリーナを守っていると、奴の反応に近付いて行く別の反応がある。


「追え! 奴は相当なダメージを受けている! 今なら仕留められるぞ!」


 煙の向こうから、兵士の声が聞こえて、オレはすぐに止めた。


「追ってはダメです! 奴には仲間がいる! 追えば殺されるぞ!」


 オレの声が届いたようで、追って行く兵士たちは途中で止まった。



 煙が晴れると、兵士たちが仲間の死体を見て、怒りに顔を歪めていた。


「仲間がいるとは本当ですか? どんな奴です?」


「どんな奴かは判りませんけど、もう1人居るのは確かです。奴とはかなり離れた場所で爆発が起こりましたし、煙幕も別の所からです。タイミング的にも時限式ではないと思います」


 結衣やレイラの反応は無事だし、わざわざ追い掛けて、あの強さの2人を相手にしたくない。

 今日の所は見逃すしかないだろうけど、今度戦う時は確実に仕留めたい。


 それにしても、オレの1番威力が高い必殺技で仕留め切れないなんて、防御できないタイミングで撃つか、もっと溜めて威力を上げるしかない。

 どのみち、2人以上の二つ名持ちに襲われたら勝ち目が薄いのは間違いない。戦力の増強を考えないと。


 しかしあの男、一筋縄ではいきそうにない。

 目的を達成するまで退かないくせに、ピンチになったら撤退を決めるのが早い。

 興味を引く話で、仲間が来る時間を稼ぐことといい、時間稼ぎにベラベラ話すくせに、肝心なことは言わずに済ます。

 隙を突いたはずなのに、オレの必殺技を防御したあげく、逃げるだけの力を残していた。

 おまけに仲間の存在がバレないように、アリス先生たちを狙うそぶりを見せてオレの注意を引いていた。

 さすがにあのレベルの強敵を相手にしている時に、索敵をする余裕なんてないからな。


「勇人、ケガはないか? 背中に食らっただろ?」


「あの男の魔力、アリス姉様より上だったわ。攻撃を受けて大丈夫だった?」


 駆け寄ってくる先生とマリーナに笑いかけてから、体の調子を確かめる。

 背中がズキズキするけど、戦闘時間が短かったから、魔力はまだ残ってる。


「身体強化してたのに、吹っ飛ばされたくらいの威力だったけど、アザで済んだと思う。あの男もオレを殺す気はなかったみたいだし」


 オレ以外は殺しても問題なさそうな態度だったけど、オレを何に利用するつもりなんだ?

 強くなれって言ってたから、オレの力を利用したいんだとは思うけど、肝心の理由が解らない。


「見てやるから服を捲ってくれ」


「わかりました」


「……内出血してるな~、結衣ちゃんに治して貰おう」


 攻撃に集中してたから防御力は下がっていたとはいえ、殺す気がない軽い攻撃でダメージを負うなんて。

 それに、何百もの人間を撃ち抜くだけの光線を放つわけだし、少なくとも数十本の光線を操っていた。

 あれを全力でオレ1人に向けられたら、防御と回避に徹するしかないぞ。反撃に移れないまま負けそうだ。


「先生、もっと戦う仕事を受けて強くならないと。数で攻めて来られたら守れません」


「バカ! アタシのことはいいから、自分のことをちゃんと守れ!」


「アリス姉様のことは私に任せてよ! 旦那様は戦いに集中してね?」


 仮に2人があいつより強くても、心配しないのは無理だろうな。

 とにかく戦力増強をしないと。ランドのオッサンに頼ることにするか?

 いや、ランドのオッサンは強いけど、さっきの男には負けてしまうだろう。

 殺されるかもしれないのに、ランドのオッサンを巻き込むのはダメだ。


 あの男には数は無意味だし、一定以上の強さがないと、死人が増えるだけだ。

 周りに倒れている兵士の二の舞になる。防御が得意な人間で固めたほうがいいだろう。

 兵士の鎧や身体強化された体を、簡単に貫通していく威力だから、頑丈な盾でもないとダメかもしれんけど。


「相手との戦力が違いすぎますね……どうしましょう?」


「ア、アタシに聞かれても困るぞ? 戦いで勇人が判らないことを聞くな!」


 そうだよな。強い仲間を増やすか、強くなる意外に対処がないな。

 【破滅の手】に狙われてる事情はしっかり話して、覚悟のある人や奴隷だけ仲間になって貰おう。


「これから屋敷を買おうと思ってたのに~、あの男絶対に許さないんだから!」


「マリーナ……アタシたちじゃ勝ち目はないから危ないことすんなよ?」


「でもっ、姉様っ。家族みんなで住む家なのに、あいつのせいで楽しい気分が台無しよ!」


「みんなの命が助かっただけで、今は喜べ!」


「姉様……わかったわ……」


 アリス先生の言う通りなんだけど、早くなんとかしないと、いつ死ぬか判らん。

 向こうが集団である以上は、こちらも最強の魔法少女軍団でも作るか? 現実的じゃないな。

 あのレベルの相手とやり合えるレベルの人だけにしておこう。

 勝てないまでも、凌げる強さがあれば十分だと思って集めるか。


「勇人、考え事はあとにして、結衣ちゃんとレイラに無事な姿を見せてやるぞ!」


「あの2人は大丈夫よね? 別の場所で爆発してたけど」


「大丈夫だ。爆発のあとに索敵したら、結衣たちの反応とは別の場所だったから」


 マリーナの不安を解消するため、2人が無事なことを教えてあげた。


「よかった~。2人に何かあったら、あいつら許さないところよ!」


 ホッとしたら怒り出したマリーナを宥めて、結衣とレイラの所に向かった。

 慌ただしく走り回る兵士の波を抜けて行くと、オレたちは2人の笑顔に出迎えられた。


「叔父ちゃん、おかえり!」


「ただいま、結衣!」

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