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軍事施設を見学

 物々しい雰囲気の建物の中を歩いていく。軍事施設なので、道を複雑にして防御力を高めているのか?


「まずは建造中の空中戦艦の見学でよろしいですか?」


「はい、女性陣は煌力兵器より船が見たいそうなので、お願いします」


 確認を取る案内役の兵士に返事をすると、結衣がスキップして喜んでいた。


「早く見たい! おじさん、よろしくお願いします」


「はははっ、お任せください」


 飛ばない船を見てもしょうがない気がするんだけど、飛ばなくても船が見たいらしい。

 すれ違う武装した兵士も、結衣がはしゃいでいるのを見て、頬を弛めている。

 いくつもの厳重な扉を抜けて、ようやくたどり着く。


「凄く広い! かけっこしていい?」


「結衣ちゃん、アタシと手を繋いでようね? 危ないから1人で行っちゃダメだぞ?」


 確かに、事故でも起きたら大変だ。誰かしら結衣の手を握っていたほうがいい。



 兵士の案内で進んで行くと、全長50mくらいの戦艦が威容を誇っていた。

 金属の部分が多いけど、魔物の素材も使われているみたいだ。

 いろんな所から砲塔が突き出して、あらゆる角度に煌力砲を撃てるようになっている。

 こんな物が空を飛ぶ予定なんて、煌力は凄いな。


「まだ未完成で問題が多いから、技術者によると、飛ぶのは何年も先だそうです」


「どんな問題で飛べないんですか?」


 疑問をぶつけてみたら、意外にも普通に答えてくれた。機密とかじゃないのか?


「なんでもエンジンあたりの機関が問題らしくて、強度が足りないようです。あれを飛ばすにはかなり強力な力が必要なので、集めた煌力が強すぎて、少し飛んだらエンジンが爆発してしまったみたいです」


 ここでも煌力が強すぎる問題が。

 オレもこれ以上のパワーを発揮するには、コントロールが難しい。

 もっと体を鍛えて、コントロールも練習しないと厳しい。


 煌力は魔力を1使うと、勝手に100や200の力が集まるから調整って難しいんだよな。

 集め過ぎると体に負担が掛かるし、足りなければ強敵相手には不利になる。

 戦闘中だと余計に集中力が必要になるから、疲れるんだよな。


「それで現在はいろんな素材を試しているようです。新たな合金の研究なども作成しているみたいですよ」


 大変だろうな。素材を集めて、エンジンを作って試しては、壊れて作り直す。

 オレには無理だな。面倒だからすぐに飽きそうだ。


「ドラゴンの素材とかじゃダメなのか?」


 結衣やマリーナと一緒に、ほえ~っとした顔で戦艦を見上げていたアリス先生が、もっとも強力な生物を提案した。


 ドラゴンはこの戦艦並に巨大なうえに、煌力を吸収して生きているから、煌力に耐えられる可能性は高い。

 急激な勢いで集められる煌力に耐えられるかは知らないけど。


「ドラゴンの素材はなかなか出回らないせいで高いので、実験には使いにくいのです。失敗したら無駄になるうえに、次に手に入るのはいつになるか判りません」


 ドラゴンは戦闘ランク1級が10人掛かりで倒す相手らしいからな。

 帝国には1人でドラゴンを倒す将軍が4人いるらしいから、帝国で手に入らないだろうか?

 まあ将軍なんて要職にいる人が、無意味にドラゴン退治に出たりはしないよな。

 四竜将(しりゅうしょう)は帝国の戦力の要らしいから、緊張状態の現在は尚更動けないだろうな。


「ん? …………誰か隠れてますよ」


 兵士に小声で呟く。


「……どこに隠れているか判りますか?」


 案内役の兵士が周囲の兵士に目配せしながら聞いてくる。


「あの柱の裏側から反応があります」


 頷いた兵士が、他の兵士に手を使って合図を送ると、兵士たちは何気ない感じでバラバラに動き、柱の周りに近付いて行った。

 本当に巡回しているみたいな感じで包囲が完成した時には、気配を隠すことは止めて、隠れていた奴が姿を見せた。


「ハッハッハッ! 気を抜いてると思ったら定期的に索敵してたか、やるな!」


 40手前くらいの男が、不敵な笑みを浮かべてオレを見ている。何となくイタズラが好きそうな顔だ。


「何者だ! この場所へ許可なく侵入したからには、捕らえさせて貰うぞ!」


 兵士がジリジリ距離を詰めるけど、あの男に焦る様子はまったくない。

 場に緊張が走る中、レイラが結衣を連れて工場から出て行く。

 しかし、男の視線はオレから離れず、レイラは無事に出て行った。


「さて、戦えないお嬢ちゃんたちが出て行ったし、そろそろ始めるか」


 男はジャケットのポケットに入れた手を出して、指をこちらに向けた。


「ユート以外はさよならだ。マニピュレート・レイ!」


 男の指先から放たれた赤い光線が、不規則な軌道を描いて何十人もの兵士を貫いた。

 兵士を貫いた光は、そのまま消えることなくアリス先生たちにも飛んでいく。かなり速い。

 オレも避けるのに忙しくて、フォローに行けない。光弾を放っていくつか撃ち落としたが、数本の光がアリス先生たちに迫る。


「こっちに来た!」

「姉様、下がって!」


 近接戦闘の苦手なアリス先生は、避けたりするのは苦手なので、マリーナが前に出て光線を剣で斬り裂いた。

 レイラの剣は魔力を帯びて赤く光っているので、光線に触れるたびに光が飛び散る。


「はぁはぁはぁ、威力も高い。5分の1くらいの魔力を使っちゃった……」


 マリーナもあと3~4回しか防げないみたいだ。


「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!! オレが相手だ!」


 気合いと共に煌力を集めたオレは、それ以上撃たせないように男に飛び掛かった。

 迎撃しようと、兵士たちを撃っていた光線をこちらに向けてきたが、回避しながら少しずつ近付く。


「くらえ!」


 パンチを連続して打ったが、器用に回避しながら指を向けて光線を撃ってくる。

 光線を躱して左側頭部にハイキックを放つ、男は右の手の平で受け止め、そのまま回転して逆の腕で肘打ちをしてきた。


「うわっ」


 背中に肘打ちを食らって体勢を崩したが、前方に飛び込み両手で着地する。

 その反動を利用してキックを放つと、予想外だったのか直撃した。


「っう…………やるな。いまの肘打ちでその程度のダメージで済んだのも驚きだが、反撃してきたのは更に驚いた」


 口の端から垂れた血を拭いながら、油断なくオレを伺っている。

 少しずつ距離を取っているあたり、オレを(あなど)ったりせずに、自分の得意な間合いで戦いたいようだ。


「そうはさせない! 続けていくぞ!」


 距離を取られたら、相手のほうが有利だ。

 体術もかなり出来るけど、魔力の制御と操作がとにかく上手い。

 距離を詰めると、その分だけ下がろうとするが、オレのほうが速い。


 距離を取るのを諦めて、足を止めた男は、オレの拳を腕でガードしながらも、すでに撃っていた光線を操り、オレを撃ってくる。


 騒ぎを聞き付けてやって来た兵士も、その光線に次々と撃ち抜かれて死んでいった。

 それでも恐れずに、果敢に突撃を繰り返す兵士の対処に気を取られ、男に僅かな隙ができた。


「いまだ! カオス・ブレイカァァァァ!!」


 一瞬の隙に男に近付き、拳で打ち上げてから両手を突き出して、オレの手の前方に集めた煌力を撃ち出した。

 青い光の奔流が、鉄で出来た床を吹き飛ばしながら男に向かって飛んでいった。

 驚愕の表情をした男が、光に飲み込まれていく。鋼鉄の壁を撃ち抜いて、光は空へと消えていった。


 この技はオレの体に入り切らない量の煌力を、手の先に集めることで体に負担なく撃てる。

 だから威力が高く、もっと多くの煌力を操れるようになれば、それに比例して威力も更に上がる。


 なるべく施設や街に被害を与えないように、男に近付いて斜めに撃ったけど、結構な被害になってしまった。

 人的被害こそないけど、あちこちの床が巻き上げられて残骸が積み上がっている所もある。片付けは兵士に任せてもいいよな?


「凄まじい威力ですね! 何重もの鋼鉄の壁をぶち抜いて、それでも威力が衰えているようには見えませんでしたよ!」


 何百人もの兵士が殺されたせいか、奴が倒されたのを喜んでいる。


「まったくだ…………今のはヤバかったぜ」


 静かな声なのに、兵士たちの喜ぶ声をすり抜けて、その場にいる全員の耳に聞きたくない声が届いた。

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