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所長の講義

 指輪を外して妙な器具に乗せた所長は、それを起動させながら話す。


「収納の指輪の仕組みは凄く難しいんだけど、簡単に説明すると、煌力の超エネルギーを利用して、指輪の内部の空間をねじ曲げて収納量を増やしている」


 器具に乗せた指輪から、煌力が集まり出すのを感じた。


「空間を操るには、魔力だと少なくとも2万は必要になるし、煌力と違って有限だから、一瞬で魔力切れだろうね」


 1万以上の魔力を持つアリス先生が手加減しても、あの威力の攻撃になるからな。

 たぶん、数値的には5000も使ってないはずだけど。


「こんなふうに、身に付けている人の魔力を使って煌力を集める。指輪に刻まれた魔法陣が、そのエネルギーを使って空間を操るんだ」


 オレも空間をねじ曲げるだけのエネルギーを集めたら、空間を操ることが出来るかもしれない。


「で、物を指輪に放り込むと収納されるというわけだ。起動しっぱなしだと魔力を消費し続けるから気を付けてね」


 オレたちの指輪は特別製なのか、離れた場所にある物も収納できるんだけど。神器だから当然な気もする。


「超エネルギーを利用しているから、指輪に使われている金属は、頑丈な素材じゃないと無理なんだ。だから値段が高いし、魔法陣を組み込むのも大変だ」


 素材の値段だけで高いんだな。

 作るのに手間と時間が掛かるから、稀少価値も含めた値段なんだろう。


「指輪にしたのは、素材の関係で小さくしないと、値段がやたらと高いからなんだ。だから魔石を付けるための機構を組み込めなくて、自分の魔力で起動させなきゃならない」


 煌力製品には3通りの使い方がある。

 1つは外部からケーブルを利用して供給する方法。

 これは煌力収集施設と契約してから、使ったぶんの料金を払う。


 2つ目は、魔石から魔力を供給する方法。

 これは携帯できる大きさの煌力製品に多い方法だ。

 魔力が切れても魔石を取り換えれば、また使えるようになる。

 欠点は魔石が高いので、ケーブルから供給される製品より、ランキングコストが掛かる。


 そして3つ目が、自分の魔力を流して使う方法だ。

 これは小さい製品に多い。小さい製品だと魔石を取り付ける部分を付けられなかったり、魔石から魔力を流すための機能を付けられないからだ。


 欠点は、自分の魔力を切らすと使えなくなるので、戦う人は気を付けないといけない。

 魔力切れで武器が取り出せないなんてことになれば、身体強化も出来ず武器もないので、ほぼ死ぬ。


「煌力のことは完全に解明されていない。とにかく強力なエネルギーとしか解ってないんだ。なぜ世界に満ちているのかも、どんな力なのかも解らない。煌力の利用法は多いからね」


 そりゃそうだ。神様の力だから万能だろう。使うオレにはそんな器用な使い方は出来ないけど。

 習熟すれば、もっといろんなことが出来るだろうから、頑張って練習しないと。

 空間を操れば、転移系の技も出来るようになるだろうし、旅がラクになる。


「基本的に、魔法陣のエネルギー源として使われているけど、魔力でもないのに魔法陣どころか、様々な機械のエネルギー源にもなっている。魔法陣で力の方向性を変えているんだけど、そのままで機械を動かすのにも使えるからね」


 冷蔵庫の冷気とかは魔法陣で変化させてるそうだけど、単純な動きをする物だと、そのままで使える。


「えーとですね。煌力なんですけど、巨大な生物の食料にもなってるみたいですよ」


「なんだって?! それはどこで知ったんだい?!」


 顔が近いよ。


「ん~、凄く偉い人としか……オレもよく知らない人なんで」


 神様であるということしか知らない。


「巨大な生物の食料がないと、食べ尽くしてしまいかねないんで、食料になってるみたいです」


「そうだったのか……ドラゴンなんかが生き物を食べるという話は聞かないし、何を食べてるか不思議だったんだが、煌力で生きていたなんて」


 神様の力ということは言わないでおこう。

 前に話した時は変な顔をされたしな。


「よし! 今度はそれを研究しよう! 煌力が生き物に与える影響について」


 さっそくブツブツ言い出したな。

 客が来てるのにそっちのけで、結婚とかに向かないタイプだと思う。研究には向いてるだろうけど。


 しかし、いろいろ聞けたけど、オレの煌力の使い方は魔法っぽいのは無理そうな気がしてきた。

 煌力をさらに変化させるなんて、オレには検討もつかないからな。

 話し掛けても反応しなくなった所長を置いて、オレたちは研究所を後にした。


「変なおじちゃんだったね?」


「1人でベラベラしゃべってたしな~」


 迷子にならないようにアリス先生と手を繋いでいた結衣が、可笑しそうに話している。


「そうですね~。ユートさまが考え込んでる間も、ずっとしゃべってましたし」


「旦那様は楽しんでいたみたいだけどね」


 楽しいわけじゃなく、必要だから勉強しただけなんだよ。

 でも、ためになったし、転移の方法を考えてみよう。


 煌力研究所のあとは、実際に煌力兵器を作る工廠(こうしょう)に向かった。

 こちらは王から紹介状を貰ったので、機密だけど見せてもらえる。


「叔父ちゃん、今度はどこ行くの?」


 見上げる結衣を抱き上げて答える。


「軍需工場に行くんだ。街の壁の上にある煌力砲とかの兵器を造る所だ」


「結衣は大砲なんて見たくないよ?」


 オレの首にしっかり腕を回して抱き付いた結衣が、なんでそんな物を見に行くの? という表情で覗き込んだ。


「空飛ぶ船も開発中らしいぞ。問題が有って完成はまだだけどな」


 だから空飛ばない船を見に行く。


「お船なら見たい!」


「飛ばなくても船は面白そうだな!」


 そう主張するアリス先生は、結衣によく似た表情で喜んでいた。


「私の国だと煌力製品を作ったりもしてないから、船が空を飛ぶなんて夢のまた夢よ!」


「だからまだ飛ばないって」


「マリーナ奥さまには聞こえてないですね~」


 工廠は研究所の近くにあるので、話してる内に到着した。

 軍事施設なだけあって、分厚い壁の上には歩哨が何人もいて厳重な警戒をしている。

 近付くオレたちはあっさり取り囲まれて、女の子たちは慌てている。


「囲まれちゃったぞ?! 勇人、どうするんだ?!」


「大丈夫ですよ。勇人と言います、騒がせてすみません。紹介状があるんで偉い人に渡して下さい」


 武器を構えていた兵士に渡すと、すぐに走って行った。


「失礼したね。陛下から連絡があったユート殿だったとは」


「いえ、場所が場所ですからね。警戒も当然です」


 小隊長だと名乗る人と話していると、マリーナが後ろで呟いた。


「なんで旦那様は落ち着いてるのよ……慌てた私たちがバカみたいじゃない」


 そりゃ殺気もない兵士に囲まれただけだし、盗賊じゃないんだから、兵士がいきなり殺しにくるわけないだろ?

 紹介状も有るから、説明をすれば問題なく終わる状況に慌てる理由がない。

 そうこうしていると、さっき報告に行った兵士が、全力疾走で戻ってきた。


「お待たせしました。工場長から許可が出ました。案内役を付けるので、許可が出た場所なら見学なさって構いません」


「ありがとうございます。国王陛下からの紹介状に書かれている通り、煌力兵器と空中戦艦を見せて下さい」


 問題なく許可が出ていたので、オレたちは工廠の中に入っていった。


「楽しみだね!」


「ユイお嬢さま~、走って行ったらダメですよ? 兵士さんに付いていかないと迷子になってしまいますから~」


 珍しい場所に興奮して走り出した結衣の手を繋いで、レイラが連れ戻した。

 オレも煌力兵器を見て、必殺技の参考にできればいいな、と思いながら、案内役の兵士の背中に付いて行った。

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