煌力研究所
煌力製品を作っているのは、国の機関らしいので、伯爵から紹介状を貰っていた。
それを頼りに煌力研究所を見せて貰うつもりだけど、先に煌力製品を買いに行く。
この街で作っているので、他の街よりもかなり安く買えるようだ。
もともと、煌力の研究を始めたばかりの頃、安全面を考えて王都から離れた場所に作られた。
この場所が選ばれたのは、魔物の棲む森が近くにあり、魔石が手に入りやすいことと、煌力製品に必要な鉱物が産出される鉱山があるかららしい。
全ての材料が手に入るからこそ安く作ることができ、輸送費なども掛からないので他の街の半額以下で買える。
大きな製品は大量輸送ができないうえに護衛の費用が高いので、他の街だと6~8倍の値段になる。
「前に勇人が買ってきたやつより安いな~。快適な旅になったから文句はないけど、勿体ないな~」
「とにかく、家で使う物を買って、あとは利益率の高くて売れる物を選ぼう」
稼いだ金で大きな屋敷を建てる。
今回買った家具に合わせて、内装まで自分たちの好みに作って貰う。
「家事に必要な物は最高級の物にしよう。大きな家を買っても家事がラクだし、5人で手分けすれば時間も掛かんないだろ?」
「アリスさま~、メイドの仕事を取らないでくださいね」
レイラはメイドの仕事が好きなんだろうか? オレは戦いは得意だけど家事はそんなに得意じゃないから理解できない。
「レイラ1人で屋敷の家事なんて無理でしょ! しょーがないから手伝ってあげる!」
「結衣もお料理は毎日するよ!」
マリーナも結衣も家事をするつもりのようだし、オレもやらなきゃダメかな。
仕事のある日と前後は勘弁して貰おう。体調を崩して負けましたじゃ話にならない。
家の規模によっては、メイドを増員することも考えようかな? アリス先生も喜ぶだろうし。
使用人ギルドってのがあったし、いろいろ調べてみるのも悪くない。やっぱ仕事に専念したいし。
家事に必要そうな物を買い込んでいく。
旅の間に使っているIHコンロみたいなやつも、大型の物に変えた。
テントで使っていた空調のような煌力製品も、家の中全部を温度調整できる強力な物にする。
掃除機のような製品もあったので買うことにして、風呂用の製品も、10分程度の時間で銭湯の湯船をいっぱいに出来る性能の物を買った。
「家事が楽しみになります~。早くお家が欲しくなっちゃいますね~」
プレッシャーだな。稼げる仕事をバンバンやって、いっぱい稼いでビックリする家を買ってやろう。
「お家ができたら一緒に寝ようね?」
「わかったわかった。オレの仕事の時間もあるし、生活習慣も変わるだろうから最初だけな?」
「わかった、毎日がいいけど我慢する」
こういう時は聞き分けがよくて助かるんだけど、いつもはもっとワガママ言ってくれるほうが安心なんだよな。
…………オレのほうがワガママかもしれないけど、たまに子供らしいワガママがあるほうが可愛いもんだし。
「旦那様がお仕事で忙しい時は私と寝ればいいわ!」
「うん! お姉ちゃんたちも一緒!」
手を取り合ってピョンピョン跳ねている2人を、レイラが羨ましそうに見ている。
使用人という立場を気にしてるんだろう。遠慮しないで一緒にはしゃげばいいのに。
家で必要な物を買ったら、次は商売用の物を買う。
なるべく大きな物を買って、貴族や商人に売り付けよう。パーティーとかで知り合った金持ちがいるし。
オレたちには神様から貰った指輪の性能があるので必要ないけど、大型の冷蔵庫は欲しい金持ちは多いらしい。
「貴族の方とかは~、パーティーをしますから必要なんですよ~。この大きさだと運ぶのが難しいですから~、持ってない方も多いです」
輸送費は掛からないけど、輸送費を足して売っても買う人は多そうだな。
利益率が高いのは、必要な物なのに大型だから運べない物だよな。
普通なら輸送費がめちゃくちゃ必要になるし、大量輸送できないから値段が高過ぎて商品にはしにくい。
しかも大型の製品は単純な構造で作りやすいらしく、ここで買えば値段が安い。
逆に小さい物だと複雑な物が多いので値段が高い物もある。それでも他の街で買うより3分の2くらいの値段だ。
在庫をあるだけ買っても、5000万シリンくらいで買えた。
相場より多少は安く売っても、4億シリンくらいで売れる見込みだ。
売れ残っても指輪に入れておけるオレたちは困らないので、欲しい人が居ればその都度売ればいい。
「お前、稼ぐからいいけど、金遣いが荒いな~」
アリス先生が心配してるけど、儲けが出るんだから投資なのに。
「誤解がありますね。オレは必要ない物を買ったわけじゃない。先行投資をしただけです」
「なんか投資で失敗しそうな台詞だな~」
アリス先生との結婚のために頑張ってるんだけど、意外に普通の暮らしで満足するタイプだろうか?
「ユートさまはアリスさまたちに良い暮らしをさせてあげたいんですよ~? そんなふうに言ってはダメです」
もっと言ってやってくれ。
貧しい暮らしは心まで貧しくするからな。必要な投資だ。
「わかってるよ? それでも心配だから言っとかないと」
このへんは教師らしいんだよな。
他の店も回って、商売用の煌力製品を買ったら、ようやくオレの希望が叶った。
煌力研究所は街外れにあるから少しだけ歩いたけど、無事に到着した。
受付で紹介状を渡すと、10分ほど待ったら所長がやってきた。
「やあ! 君が煌力について知りたい子か~! 若いのに勉強熱心だね! ぜひとも学んでいってね~」
眼鏡を掛けたボサボサ頭のオジサンだ。
風呂に入る時間も惜しいのか、頭をボリボリ掻いている。
受付の女の人も、うちの女性陣も距離を取って遠巻きに見ている。
「よろしくお願いします。勇人です」
「僕はエルトンだ。よろしくね」
全員が挨拶したあと、研究施設に案内されて、煌力製品についての説明を受ける。
「煌力製品にはいろんな種類があるけど、共通してるのは煌力を動力源にしていることだね」
基本だな。煌力を使わないのに煌力製品なんて言うわけがない。
「ではなぜ煌力を使うか? それは魔力だと莫大なエネルギーが必要で、安い魔石だとすぐに魔力切れを起こしてしまう」
オレもそれが理由で魔力じゃなく煌力を使っているからな。誰でも目をつけるだろう。
「まず魔力を使って制御魔法を発動させる。そして集めた煌力をエネルギーに使う。そして機械の部分で煌力エネルギーで別のエネルギーを発生させる」
「面倒そうだな~」
「アリス君がそう思うのも無理はない。しかし、煌力だと1の力で済むのに、魔力だと100や200の力が必要になってしまうんだよ」
煌力のエネルギー効率はオレも研究して同じ結論が出てる。
「魔力を使うと、魔石や使い手の魔力が簡単に切れてしまって使い物にならない。強力で無限にあるエネルギーだから、魔道具は廃れていった」
魔道具はまったく見ないから無いのかと思ってたけど、過去に存在はしたんだな。
「そして煌力製品だけど、煌力を無理やりに使っているから、強力な物ほど頑丈な素材が必要なんだ。煌力製品が小さい物ほど高い場合が多いのは、作りが複雑で小さいからこそ、頑丈な素材が必要だからだよ」
小さいとエネルギーが密集してしまうからな。
オレも限界以上の力を集めると、体に負担が掛かるからフルパワーと言っても、真の意味で全力じゃない。
本当の全力の一撃を放つために訓練しているけど、まだ未完成だし。
体に本当の全力を集めると危険だから、制御力を上げるか、体から離して集めるしかない。
まだ制御力が足りないからフルパワーの身体強化はできないし、フルパワーの煌力を体から離して操作するのは難しい。
「とにかく煌力は強力なエネルギーだけど、制御が難しいから扱いには気を付けなくちゃいけない。……基本はこれくらいにして、煌力製品の説明をしていこう。何か原理を知りたい製品はあるかな?」
一番知りたい物は、やっぱり収納の指輪だな。
そう伝えると、エルトンさんは指輪を外して説明を始めた。




