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マリーナとデート

 眠気もなくなったので、結衣とマリーナが働く現場に向かった。

 瓦礫の撤去作業をしているようで、使える瓦礫と使えない瓦礫に分けて運ぶようだ。


「お水だよ~、飲んで飲んで!」


 結衣がチョコチョコ走り回り、数百人は居る作業員に水を配っている。

 美味しい? と聞いている結衣に、オジサンたちはデレデレだ。

 家族と離れて仕事してるんだろうな。魔法があるとはいえ、復興は3年以上掛かる予定らしいし、たまにしか帰れないそうだ。


「お嬢ちゃんは小さいのによく働くな!」


「結衣、お手伝いするの大好き!」


 結衣は人見知りしないな。それとも、寂しいから人と一緒に居たいのか?

 もう少し年齢が上なら仕事に連れて行ってもいいけど、現状では弱い魔物退治くらいしか連れて行きたくない。


「私のほうが力が強いわ! それを渡しなさい!」


「マリーナちゃん1人じゃ無理だ」


 マリーナの声が聞こえて声がするほうを見ると、人間より大きい瓦礫を10人掛かりで持とうとしていた。

 どうもマリーナが運ぼうとしているが、10人のオジサンたちは女の子には無理だと思っているみたいだ。


「私の身体強化をバカにしないで! 未来の騎士の力を見せてあげるわ!」


 しぶしぶといった感じで、10人のオジサンたちは引き下がった。

 マリーナはニッコリ笑って、大きな瓦礫に抱き付いた。

 マリーナの瞳が赤くなり、体から魔力が立ち上る。


「やあっ!」


 瓦礫が軋む音が聞こえて、亀裂が入り出した。

 20秒ほどで、人間よりも大きかった瓦礫を粉々にしてしまった。


「すげえ力だな」


「本当に1人で壊しちまった」


 力自慢のオジサンたちをザワつかせて、マリーナは笑った。


「これでオジ様たちでも運べるでしょ? 私のことをもっと誉めてもいいわよ!」


 ツインテールを(なび)かせて、得意気に胸を張る。

 見た目は可愛い戦乙女なのに、言動が生意気な小学生みたいだ。


「マリーナ、オレが代わりに誉めてやろうか?」


「旦那様! ち、違うもん! 私は自慢なんてしてないから! オジ様たちが誉めたそうにしてたから許可を出しただけだから!」


 オレのアリス先生に対する言い訳より下手な言い訳だな。


「マリーナちゃんの旦那かい? マリーナちゃんが強いからって尻に敷かれるなよ」


「はははっ、かかあ天下になりそうだな」


 気のいいオジサンたちだ。(あざけ)るような感じがまったくしない。


「オジ様たちは黙って! 旦那様をお尻に敷いたりしないわよ! ……でもユイちゃんが膝の上に座るのは羨ましいけど……」


 マリーナのことも甘やかしたほうがいいのか?

 子供扱いしたらしたで怒りそうだけどな。


「オレも手伝いしますよ。要らない瓦礫に目印を付けてください」


 作業員のオジサンたちに頼んだら、全員で印を付けていった。


「叔父ちゃんも来たの? お手伝い頑張ったよ?」


 寄ってきた結衣が褒めて欲しそうに頭を向けてきたので、撫でておく。

 結衣の頭を撫でていると、マリーナもススッと寄ってきたから、マリーナの頭も撫でた。


「子供じゃないから喜ばないけど、旦那様が撫でたいなら好きなだけ撫でていいわ! だって未来のお嫁さんだもん!」


 解りやすい女の子だ。

 言ってることは素直じゃないのに、態度が素直だから可愛いもんだ。

 これだけ慕ってくれるし、オレも好ましく思ってるし、アリス先生を頑張って説得して、なんとか幸せにしたいな。


「ボウズ、とりあえず見える範囲は終わったぜ」


「ありがとうございました」


 うーん、見た感じ、大き過ぎて運ぶのや加工するのが面倒な物が要らないようだ。


「じゃあ、やります」


 煌力を集めて身体強化をする。

 そして必要ない瓦礫を空に向かって連続で放り投げると、5~6個くらい纏めて撃ち砕く。

 数十m上空に投げられた1つ1つが2~3tはある瓦礫が、青い光線に撃たれると粉微塵(こなみじん)になっていく。


「……マリーナちゃんの旦那のほうは更にとんでもねえな」


「この夫婦だけは敵に回したくねえ」


「夫婦喧嘩する時は言ってくれ。よその街まで逃げるから」


 災害みたいに言うな! オレは無意味に暴れたりしない!


「叔父ちゃんカッコいい!」


「ほんと! 男の人は強くないとね!」


 女の子は細かいことを気にしないのか、この2人がノンキなのかは知らないけど、女の子の声援には応えないとな!


「どんどん行くぞ!」


 20~30個を連続で投げて、両手に煌力を溜めて撃ち出す。


「ブラスト・キャノン!!」


 両手から放たれる光線が、目標に命中すると炸裂してエネルギーを撒き散らした。

 街の近くにある森から、鳥が全て逃げ出すほどの爆発が起こり、衝撃波で結衣がよろける。

 ゴブリンロードの顔面にぶち込んだ技だけど、あの時はパワー不足で威力がショボかった。


「よし! 今日も絶好調だ!」


「アホー! ボウズ、何やってんだ!」


 ん? 何を慌ててるんだ?


「あんな派手なことしたら兵士が飛んでくるぞ! 捕まる前に逃げろ!」


 あ~、考えてみれば一応街の中だよ。


「オジサン、ありがとう。でも兵士にはきちんと説明して謝るよ。代官のアーノルドさんとは知り合いだし、逮捕は大丈夫だと思う」



 兵士が来ると説明した。

 オレを知っていた兵士がいて、気まずそうにお願いされてしまった。ほんとにスマン!


 作業員のオジサンたちは、作業がラクになったと喜んでくれたが、気を付けないとな。

 オレたちの今日の作業は終わりにして、家に帰ることにした。

 結衣が疲れて眠ってしまったので、おぶって帰る。マリーナは後ろで手を組み、踊るような足取りで隣を歩く。


「なんかご機嫌だな?」


「綺麗な夕陽の中を旦那様と歩いてると、デートしてるみたいだもん!」


 ただ歩いてるだけだし、結衣もいるんだけど気にならないんだろうか?

 この街は遊ぶ所もないし、女の子が喜ぶような買い物ができる店もないからな。

 こんなんで喜ばれると、なんか悪い気がするな。ちゃんとしたデートを考えようかな。


「それなら少し寄り道して帰るか? 夕飯までは時間もあるし」


「いいの? ユイちゃんをおんぶしてるのに」


 結衣を起こさないように、気持ち声を抑えている。


「結衣くらい100人分の重さだって大丈夫だ。歩くだけで悪いけど、それで喜ぶなら寄り道くらいするさ」


「………………」


 マリーナは黙ってオレの袖を掴んだ。


「それじゃあ、夕飯の時間までだけど散歩しよう」


 夕陽に照らされたマリーナの顔だけど、夕陽よりも赤くなっているので、何も言わなくても気持ちが伝わってくる。

 やっぱり幸せにしたいな。命が簡単に失われる世界だからこそ、悔いのないように生きたい。

 いつ死んでも笑って死ねるようになれば、きっと周りの人たちも心配ないくらい幸せなはず。

 オレたち3人の影は、家に帰るまで一瞬も離れることはなかった。





「あ~、寝すぎて腰がいたい~。レイラ~腰を揉んでくれ~」


 家のドアを開けると、ようやく起きたアリス先生が、料理をしているレイラにおねだりしていた。


「アリスさま~、大人の女性がそんな格好で寝転んで…………はしたないですよ~?」


「働く女はこれが主流だよ。家事をする女のほうが珍しいんだ!」


「どこの国の女性ですか~?」


 地球人なのが少し恥ずかしいな。


「あっ、ユートさま、おかえりなさいませ~。お出迎えもしないで私ったら」


 大きくない大きな子供の面倒を見てくれていたわけだし、気にせんでもいいと思う。


「んあ? ゆっ勇人! あ~、レイラ、料理を手伝うぞ!」


 もう遅いと思うが、可哀想なのでスルーしてあげよう。


 アリス先生、レイラ、マリーナの3人で、きゃいきゃい騒ぎながら料理をしていると、結衣が起き出して手伝いを始めた。

 すぐに料理ができ上がり、賑やかな食卓を囲んだオレたちは、みんなで風呂に入って温まった。



 騒いでいたら眠れなくなったので、オレはみんなを誘って屋根の上に登った。


「お星さま綺麗だね! 叔父ちゃん」


 結衣が膝の上で腕を振り回して喜ぶ。顔に当たって痛い。


「上を見上げたらいつも()るのに、見ようと思わないと見えないな~」


 アリス先生が哲学っぽいことを言っているが、夕飯の時に呑んだ酒に酔ってるのか?


「お城の生活は忙しくて見ませんでしたし~、村に居た頃は当たり前すぎて気にしませんでした~。お城での生活のお蔭で綺麗な物に気付けたんですかね~?」


 城でも村でも生活に追われて、心の余裕がなかったんじゃなかろうか?

 オレが余計なツッコミを心の中でしていると、マリーナが身を寄せて、みんなに聞こえないように耳元で囁いた。


「みんなが居るけど、夜のデートも楽しいね?」


 オレたちは眠くなるまで夜空を見上げていた。

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