報酬と盗賊団の行方
昨日は大変だったから、朝飯にたっぷりと時間を掛けて寛ぐ。
アリス先生はまだ寝てるし、マリーナはとっくに復興の仕事に出掛けた。
肩なんてこってないけど、結衣がお手伝いをしたいみたいで、トントントントン飽きずに叩いている。
「こってませんね~、気持ちいいですか?」
「こってないけど気持ちいいぞ」
何が楽しいのかニコニコしている。
「うふふっ、お嬢さまはユートさまのことが大好きなんですね~」
目を細めて微笑むレイラが、お茶とお菓子を持って来てくれた。
「やった~! 結衣お菓子が大好き! 紅茶は苦いから嫌い!」
「はい、知ってますけど、甘く淹れたから大丈夫ですよ~?」
喋り方はのんびりになったけど、メイド技能は相変わらずだな。
結衣は肩叩きを中止して、オレの膝に乗って紅茶を飲んだ。
「ちゃんと甘い! これなら好き!」
子供は素直に好き嫌いを言うな。見習わないとダメかな?
アリス先生に言うと照れて会話にならないだろうからしないけど、たまには言わないとな。
「ユートさま、今日の予定は決まってるんですか~?」
結衣の代わりに腕のマッサージをしてくれながら、レイラが予定を聞いてきた。
「あ~、報酬を貰いに行こうかな? 稼いだし報酬を貰いに行くのは面倒なんだよな~」
盗賊の宝があるからな。資材なんかは代官のアーノルドさんに半額くらいで売るかな? 復興の足しになるだろうし。
「レイラは欲しい物とかあるか?」
「結衣は家族みんなで眠れる大きいベッド!」
「それは家を買ってからな」
レイラの欲しい物を聞いて、家を買った時に部屋に置けるようにしたい。
それを伝えると、結衣が大はしゃぎで家族みんなの部屋について話し出した。
「レイラお姉ちゃんのお部屋はね~、結衣と叔父ちゃんのお部屋のとなり! マリーナお姉ちゃんは前のお部屋で、アリスお姉ちゃんは反対のお部屋!」
家族に囲まれて過ごしたいんだな。あとオレは一緒の部屋なのかよ。
アリス先生を嫁に貰えたらどうしようか? 3人で一緒の部屋なのか?
「私のお部屋も一緒じゃダメですか~? 一緒ならお世話がいつでもできますよ~? お嬢さま」
それはオレの結婚が遠のくからやめてくれ。
「もっともっと家族が増えると嬉しいね? 叔父ちゃん」
「そうだな。オレも頑張るよ」
何を頑張れば家族が増えるのか知らんけど。
少なくとも養う金は必要だよな。あとデカイ家がないと大人数は住めないし。
結婚って金が掛かるんだな。結婚しない人が増えて少子化もするよな。
「結婚の予定もないのにマリッジブルーになりそうだ」
「私も18歳ですし、側室になりましょうか~?」
「えっ? レイラって18歳だったのか! …………見た目若いな」
「ありがとうございます~。側室の件は無視ですか~?」
本妻にはならないんだな。マリーナといい、控え目な娘が多いな。
レイラのマッサージを受けながら、結衣のお菓子をかじる音を聞いて目を閉じた。
思ったより疲れていたのか、いつの間にか眠っていたオレを、誰かがベッドに運んでくれたらしい。
オレを呼ぶレイラの声で目を覚ましたが、ベッドの感触に少しだけ駄々をこねた。
「もう10分だけ寝かせてくれ」
「う~ん、そうして差し上げたいんですが~、お客さまですよ~?」
客か。しょうがないな。
ベッドから出ると、レイラが髪を整えてくれた。
その間に結衣のことを聞くと、マリーナの手伝いをしたいと言ったので、送って行ったそうだ。
すでに濡れたタオルも用意されていたので顔も拭くと、ようやく目が覚めた。
「ありがとうレイラ」
「どういたしまして~。お客さまはアーノルドさまの遣いの方ですよ~」
報酬の件でわざわざ来てくれたのかな?
すぐに寝室を出て食堂に向かう。この小屋は寝室と食堂しかないので、客は食堂に通すことにしている。
「お待たせしました、勇人です」
「いえ、お疲れのところ申し訳ありません。アーノルド様から報酬の件で遣わされました」
椅子から立ち上がり、一礼をする。
レイラがオレにも紅茶を持ってきてくれる。
2人とも席に着くと話を始める。レイラはオレの後ろに控えた。
「さっそくですが、報酬は概算で1億2000万シリンほどになるかと思われます」
1億2000万か~。予想より20倍以上多くなったな。
「なんでそんなに?」
使者は紅茶を一口飲んで答える。
「……はい、実は捕縛された盗賊団は有名な指名手配犯でして、討伐依頼を出すだけでも8000万シリンは必要です」
強かったもんな。数も多かったし。どっちもゴブリンロードほどじゃなかったけど。
「今回は捕縛されたのと、貴族や大商人の関係者の方たちを救出なさったので。それと、盗賊団は領都まで運ばれて背後関係を調べられます。その結果によって報酬が増えます。懸賞金も出ますよ」
そっか、盗賊退治が今回の依頼で、報酬は相手の戦力しだいっていう話だったな。
盗賊退治の報酬と、その相手がたまたま懸賞金が付いてたからといっても、報酬か懸賞金無しにはならないんだな。
それに取り調べの結果って派閥争いのネタになるとかか?
「そういえば、あの盗賊団って何て名前なんですか?」
騎士じゃないから名乗り合ったりしてないんだよな。有名なようだし、どんな奴か聞いとこう。
「盗賊団の名前は赤き斧、リーダーの名前は血塗れのデスモンドと呼ばれています」
物騒な二つ名だな。
「敵も味方も死ぬことが多いので、そう呼ばれるようになりました」
あの戦術じゃ死ぬよな。
あいつ強いくせに自分の安全が第一なんだな。一生解り合えそうにないな。
「ところで、強い奴だけどカレイラまで連れて行くのって大丈夫なんですか?」
鎖なんか簡単に引きちぎれるだろうに。
「魔力を使うと一瞬で爆発する首輪や手錠がありますから大丈夫ですよ。魔力で身体強化しなければ鎖をちぎるのは無理でしょう」
魔力がある世界だからな。捕縛にも一苦労あるな。
オレたちも気を付けないと、魔力が使えなければ煌力も使えない。
「今回は本当にありがとうございました。こんな強力な盗賊団が近くにいたのでは復興など出来ませんから」
復興の資材を売った金とかを奪ったりしてたんだろうな。それだと、いずれ商人は来なくなる。確かに復興が困難になるのは確実だったと思う。
まだ確かめてないけど、資材を売った帰り道に襲われた商人とか居ただろうし、現金の入った箱もある気がする。
億単位の現金と、それに相当する資材なんかを手に入れたわけだから、大きな家を買えるかもしれないな。
宝らしき反応は他には無かったし、宝物庫に有った物は全部しまったから有るはずだ。
せっかくだし家を買うより建てたほうがいいかも。好きな間取りにできるし。
結衣が遊べる遊具なんかも作って貰ったり、訓練する場所を作ったり、巨大な風呂も欲しいな。
「あっ、そうだ。盗賊のアジトで手に入れた資材なんですけど、オレたちは使わないので半額で売りましょうか?」
「それは助かります。ですが半額だと不当な値段で買い取ったなどと言われてしまい、今後のためになりません。上に立つ方に取って、評判は大切なのです」
なるほど。どこの誰か判らない奴なら、評判はどうでもいいだろうけど、所在や立場がハッキリした人だと、悪評は致命傷になる。
相場の半額でしか買ってくれないなんて評判になったら、商人が寄り付かなくなって経済がガタガタになる。
評判は大切だな。オレも名声を高めておけば、いざという時の信用度が違うだろう。
権力者にちょっかいを掛けられにくくなりそうだしな。有名人に手を出したら悪評に繋がって、経済的に打撃を受けることになるはず。
当然、そんな領地に有名人は行かなくなるし、強い冒険者なんかも行かなくなれば、盗賊にとっても狙い目だ。
よし、色んなことに首を突っ込んで有名になろう。その評判が結衣たちを守ってくれるようになる。
今後の方針が決まったところで、使者のおじさんが帰って行った。
報酬は確定してから伯爵が懸賞金と一緒に払ってくれるらしいので楽しみに待っていよう。
使者を見送ったレイラが戻って来てから、マリーナと結衣が手伝いをしている現場に向かった。




