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救出

 いろいろな意味でピンチになったものの、オレたちは見張りを誘い出す作戦を実行する。

 まずはオレが盗賊のふりをして呼ぶ。のこのこやって来た盗賊を捕まえて脅す。


「オーイ! 誰か来てくれ! 荷物が重くて持てないんだ!」


 ギリギリ外の見張りにだけ聞こえる声量で呼ぶ。


「だらしねえな! ちょっと待ってろ!」


 まさか侵入者がいるとは思ってないので、まったく警戒することなく寄って来た。

 そいつが角を曲がった瞬間に口を塞いで、剣を首元に添えて小さな声で脅した。


「死にたくなければ言うことを聞け。いつもお前たちがしてることだ。本気かどうかは判るだろ?」


 オレの姿を見て若いと(あなど)った目をしたので、動脈を軽く斬った。


「早く言うことを聞いて治療しないと死ぬぞ?」


 少しずつ血が溢れてくるのを見て、本気だと理解した盗賊は、慌てて頷いて言うことを聞いた。


「もう1人を呼べ…………よかったな、お前じゃなくてあいつが来てたら死ぬのはお前だったぞ」


 先に死ぬのはだけど。捕まった人の命が優先だから容赦はしない。


「もっとも、余計なことを喋った時点で先に死ぬことになるけどな」


 涙目になりながら何度も頷く。

 剣を当てたまま盗賊の口を放す。


「ちょっ、ちょっと来てくれ! 重すぎて2人じゃ持てない!」


 言い終わったら余計なことを言わせないように、すぐにまた口を塞ぐ。

 片手で口を塞いで、壁に押し付ける。呻き声を上げるけど、重い物を持ち上げようとしているみたいに聞こえるので構わないだろう。


「だらしねえのはお前じゃねえか? 俺の力を見せてやる!」


 角から盗賊の顔が見えた瞬間に、喉を剣で貫いて殺した。


「お前の力は見なくても判る」


「ううっ」


 仲間が死んだのを見て、口を塞がれた盗賊は更に怯えた。

 剣を突き付けて喋れるようにする。


「次は部屋の中にいる仲間を呼べ。そうしたら開放してやる。オレの目的は解るだろ?」


「あ、ああっ。人質を助けに来たんだろ?」


「そうだ。お前の命に価値はない。だけど……オレたちのことをバラせば戦いになる。真っ先に死ぬのは誰だろうな?」


 盗賊がゴクリと喉を鳴らした。


「わ、わかった。言わない。だから殺さないでくれ」


 ここまで脅せば大丈夫だろう。きちんと言うことを聞くはず。

 剣を突き付けたままドアの前まで連れて行き、つついて促す。


「やっぱこいつ特殊部隊出身だよ……」


 アリス先生の勘違いは忙しいからほうっておく。


「おい! ちょっと来てくれ! トイレに行きたいんだ! 見張りを変わってくれ!」


「……わかった! 武装するから待て!」


 部屋の中から返事があったので、用済みの盗賊の首を斬り裂いた。

 そして、ドアが薄く開いた途端に、ドアごと盗賊を突きとばした。

 すぐに部屋の中に入って、転んでいた男の腹を踏みつけて気絶させ、もう1人の椅子に座っていた女盗賊も殴って気絶させた。


 捕まっていた人たちの悲鳴が聞こえたが、その頃にはアリス先生が結界発生機を使っていたので大丈夫だろう。


「助けに来たんだからビックリするな!」


 アリス先生の言葉にようやく落ち着いたようだ。

 盗賊を倒したんだから判りそうなものだけど、戦えない人たちには普通なのかな?


「すぐに牢屋を開けますから、脱出するまでは静かにしてください」


 念のために忠告してから、鉄格子に手を掛ける。

 時間がないからカギを探すのは面倒だし、見張りにカギを持たせる理由もないからな。

 煌力を集めて力を入れると、鉄格子がひしゃげて大きな隙間ができる。


「凄い力……」


「青い瞳……綺麗」


 十分な隙間が開くと、捕まった人たちが恐る恐る出てくる。


「ありがとうございます!」


「助かりましたぞ!」


「褒美は取らせよう! 我が娘などどうだ?」


 ちゃっかり娘の背を押し、オレを取り込もうとする貴族もいるな。時間もないし無視しよう。

 とりあえず外まで連れて行くか、人質を確保したから容赦なく戦うか、どうしよう。

 あとは別の場所に捕まったりしてないかを確認しておかないと。


「これで捕まった人は全員ですか?」


「はい、ここから連れて行かれた人はいません」


 大丈夫そうだな。オレの索敵では、まだ形が判るだけなので、動きに変な所がなければ区別がつかないんだよな。

 煌力はテレビみたいに映像も送れるみたいだから、極めれば煌力のある場所なら見えるようになるかもしれない。

 収納の指輪にも煌力が使われているから、空間系の力も発揮できるはずだ。

 今度時間がある時に、機煌都市マキナって所に行ってみようかな。

 旅行にもいいし、煌力を習熟するために勉強が必要だからな。


 ――――さて、どうやって脱出するか。

 人を連れていると戦いにくいけど、纏めて蹴散らせば大丈夫な気もするし。

 先に外まで連れて行くほうが戦いはラクだけど、見つからずに外に出るのは時間が掛かりすぎる。


「…………よし、見つかるまではコソコソして、見つかったら蹴散らすことにしよう。死体があるから子供に見せないようにね」


 オレの言葉を聞いて不安そうな顔をしているが、スルーして扉から出る。

 しっかり付いてくるのを確認して、索敵をしながらコソコソ進んだ。

 遠回りとかする気はないので、最短距離を選んでいった。

 どうせこの人数じゃ隠密なんて不可能だから、敵がいるなら避けずに倒していこう。


 捕まっていた人たちの体力を考慮して、歩く速度を遅めにする。

 子供は親が抱っこしてるのでいいとして、老人もいるからな。金持ちは全員捕まえたのかも。


「ところで、皆さんが捕まった理由は何ですか?」


 オレの疑問に、商人らしきオジサンが代表して答えた。


「全員で話し合ったのですが、捕まった時に身分や資産を訊かれました。なので目的は金か、我々の立場を利用して何かをしようとしたかでしょう」


 やっぱり金持ちや権力者か。

 身代金が目的なら話は簡単だけど、貴族の権力争いで雇われた盗賊とかだと、オレにはどうしようもない。

 リーダーとか側近を捕まえて、伯爵にでも引き渡して尋問して貰うか。


「それに関しては、ユアンの街の復興を担当してる、代官のアーノルドさんに話してください」


 そこから上司のアッカー伯爵に伝わるだろう。


「そこの道の先から盗賊が3人来ますから静かに」


 簡潔に伝えて構える。

 体に力が溢れ、地面を砕きながら一瞬で距離を詰めた。


「ぐあっ」

「があっ」

「うっ」


 それぞれ、頭、喉、鳩尾を拳で打ち、一撃で意識を刈り取った。

 手加減はしたので生きているが、子供がいるから殺らないだけで、どのみち捕まえて尋問されたあと死刑になる。


「えっ? 消えた」


「あそこにいるよ! 20mくらい先に」


「速い! それに足下に3人倒れているぞ!」


「ううむ、是非とも我が家の婿に欲しい」


 みんなが来るまでに盗賊たちを縛り、その辺の部屋に押し込めた。


「お兄ちゃんすごい!」


「2人で盗賊のアジトに侵入して来るのですから、お強いとは思っていましたが、これほどとは……専属の護衛の仕事を頼みたいですな」


 親子らしき貴族っぽい格好をした人が話し掛けてきた。

 男の子は、勇者を見るような憧れの視線を向けている。照れるな。


「幸い騒がれてないので、見つかる前に急いでください」


 恥ずかしいので()かす。


「勇人、照れるな照れるな! 国も認める英雄だからな!」


「からかわないでくださいよ」


 ニヤニヤ笑ってツンツンしてくる。

 小さいオッパイの件での仕返しだろうか? それともゴブリンの件か?


 アリス先生とじゃれながら、出入口を目指す。

 その過程で20人近い盗賊を倒していたので、さすがに騒ぎになってきた。

 でもオレからすれば弱いし、散発的に仕掛けてくるので数の利を活かせない。

 出入口に近づく頃には、捕まった人たちも安心しきった顔で話し掛けてきていた。

 特に貴族がしつこく、()いで商人が、最後に女の子たちが恋人の有無などを聞いてくる。


 適当にあしらいながら進むと、出入口近くの横穴から見張りが飛び出してきた。


「死ねぇぇ!」

「クソガキがぁぁぁ!」


 4人が出入口の見張りの人数らしい。やられたんだから警戒して増やしとけよ。


「盗賊ごときにクソガキ扱いされたくない!! ミーティア・ストライク!」


 オレの拳が光の尾を引き、暗い洞窟を切り裂く。

 突進しながらのストレートパンチは、その余波で盗賊たちを蹴散らした。

 周囲の壁に吹き飛ばされた連中は、白目を剥いて気絶する。


「ちょっと熱くなってしまった」


 ガキ扱いはやっぱりムカつく。


「一撃で4人を吹き飛ばした……」


「光で眩しくてよく判らなかったけど、凄いわ」


 賞賛を尻目に外に出ると、みんな待ちきれないとばかりに走りながら出てくる。


「外だ!」


「もう暗い所はイヤ……」


 太陽の光をいっぱいに浴びて、捕まっていた人たちは涙を流して喜んだ。

 オレとアリス先生は顔を見合わせ、拳を合わせて微笑んだ。

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