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アジト探索

 足音を立てないように、薄暗い洞窟を進んで行く。

 ここには煌力収集施設がないので、煌力製品は魔石がないと使えない。

 盗賊が魔石をせっせと集めるとは思えないので、蝋燭や松明を使って魔石の節約をしているんだろう。


 煌力製品のほうが燃費はいいんだけどな、魔石はそこそこの値段がするし、ゴブリンの魔石だと1日くらいしか持たない。

 何より煌力製品自体が高いからな、盗賊なら売って金にするよな。アジトなんて見つかれば廃棄だし、金を掛けたりしないよな。


 通路に盗賊の気配を感じて、壁に背中を付けて身を潜める。


「むぎゅ」


 アリス先生が後ろにピッタリくっついていたので、うっかり壁に押し付けてしまった。

 次からは先にアリス先生を手で押さえることにしよう。


「すみません」


 謝ってから体をずらし、敵が来るのを待つ。

 盗賊が通り過ぎると、後ろから口を押さえて首を折る。


「…………お前って特殊部隊にでもいたんじゃないか?」


「まさか。戦いに関しては効率よく動いてるだけです」


 殺した盗賊を引きずって、人の気配がない部屋に入る。

 そこに有ったベッドの下に盗賊を放り込み、部屋から出る。


「こんな感じで捕まった人の所に行きます。見つかったら混乱している間に捕まったの所に走りますから」


「わかった、捕まった人を助けるまでは、絶対に声を出さないようにするよ」


 オレたちは捕まった人らしき反応を目指して通路を進んで行った。

 途中で数が多い盗賊を避けていたら、あっちこっちに行くはめになり、何度か見つかってしまった。

 そのたびに声を出させないように瞬殺していく。ほんとに特殊部隊の潜入みたいになってきたな。


 複数の盗賊が近付いてきたので、誰もいない部屋に入ってやり過ごす。

 2人までなら声を出させない自信があるけど、それ以上の人数だと騒がれそうだからな。


「部屋で少し休憩していきましょう。捕まった人の所まではまだ掛かりますし」


「そうしてくれ……ホラー映画みたいな緊張感に耐えられそうにないぞ……」


 ゾンビに見つかりそうな感じだろうか?


「先生、水を飲んでください。ポットを出しますから」


 正式名称は温水発生機だけど、ポットみたいな見た目なのでポットと呼んでいる。

 お湯と水を切り換えて使えるので便利だけど、お湯の場合は魔石の消耗が増えるので、風呂用には使えない。

 料理の時間を短縮したり、お茶を淹れたり、手を洗うのに使っている。


「飲みすぎないようにしないと…………オシッコしたくなったらマズイ」


 女の子は大変だからな。


「あっ! 先生、ベッドの下に隠れてください。敵が来ます」


 オレの言葉を聞いてすぐにポットをしまい、アリス先生はベッドの下に潜り込んだ。

 オレは煌力結界発生機を出して、天井に跳び上がった。

 指に煌力を纏い、石の壁に指を突き刺して、片手で懸垂するみたいに天井に張り付く。


「ようやく奪ってきた物の仕分けが終わったな」


「ああ、お頭も人使いが荒いよな」


「さっさと寝ようぜ」


 人数は10人。

 全員が部屋に入ってドアを閉めた瞬間に、煌力結界を張って音を遮断した。

 煌力結界発生機を(ふところ)にしまってから、敵目掛けて飛び下りた。


「まずは1人目」


 着地と同時に拳を喉に突き刺して殺す。血を吐いた盗賊が倒れる前に次を狙った。

 後ろ回し蹴りで首を折り、その足で3人目にハイキックを食らわせる。


「なんだてめえは!」


「死ぬ奴に名乗ってどうする?」


 誰何(すいか)する奴の頭に肘打ちをして頭蓋骨を砕き、驚愕していた盗賊の胸部を殴り、衝撃で心臓を破壊した。

 笛を取り出し吹こうとした奴に跳び蹴りを放ち、壁まで吹き飛ばすとヒビが入り、蹴りを食らった男は前のめりに倒れた。


 残りの奴らも逃がさず倒した。全員が倒れるまでに20秒くらいしか経っていないけど、結界を張ってなければバレてたな。

 気絶している盗賊の首をへし折って止めを刺した。そしてクローゼットの中とかに死体を押し込んで隠す。


「先生、終わりましたよ」


「やっぱり強すぎるぞ。暗殺拳の使い手か!」


 拳法も教わってるけど暗殺拳じゃないし。人聞きが悪いな~。



 死体と一緒にいるのは嫌だというアリス先生の主張を聞いて、部屋を出る。

 奴らが来たほうに向かうと、奪った物を保管しておく場所があった。

 数百m四方の広さの広場に、無造作に置いてあるみたいだ。

 2人いた見張りを倒してから入る。


 商人たちから奪ったらしき建築資材や、恐らく護衛などが持っていた武器や防具。

 他にも捕まえた人たちから奪ったと(おぼ)しき宝石類や現金など。

 食料品は別の場所にあるのかな? 食堂の近くに置いてたほうがラクだしな。


「いっぱいあるな~。盗賊から奪い返した物ってどうするんだっけ?」


 宝石類を着けてみながら、アリス先生が振り返って聞いてくる。


「自由にしていいはずですよ。持ち主を特定するのが難しいし、大抵は殺されていますからね。商人に注文した資材なんかも、きちんと納品してから代金が払われますから」


 守れなかった商人の責任となる。運んでいた人は殺されてるだろうし、返せと言っても国が認めるはずはない。

 1人1人の訴えを聞いても、確認が取れないので無意味だ。 嘘をついて自分の物だと主張する人が現れて、収拾がつかなくなるだけだろう。


「それで盗賊の持ち物は倒した人の物になると、法律で決めたらしいので、助けた人が返せと言ったら犯罪者ですよ」


「はぇ~、異世界は怖いな!」


 なんか妙な怖がりかたをしてるけど、オレたちが奪われることはないだろう。

 収納の指輪に全部しまえるし、これだけ入る指輪はオレたちしか持ってないから。

 仮に指輪を奪われたとしても特定は簡単だし、正当性も主張できるので、奪い返すのは簡単だな。


 すべての物を収納の指輪に入れてから、敵の気配に注意して宝物庫を出た。

 あれから3時間は経ってるが、捕まった人らしき集団は動かない。

 感じる形からすると寝てるわけじゃないから、牢屋にでも入ってるか、部屋に閉じ込められてるんだろう。


 それにしても、盗賊は何のために捕まえたんだ? 奴隷は登録制だから、登録に行けばその場で捕まる。

 ……身代金でも要求するつもりかもしれないな。男も居るし、服の形からして高そうな服だし。


 だいぶ近付いたけど、見張りがいるな。1人ずつ誘き出せないか。

 向かい側から盗賊が近付いてくる。急いで隠れないと、鉢合わせしてしまう。


「戻りますよ、先生」


 オレはアリス先生の手を掴み、来た道を引き返す。


「この部屋には人がいるから気を付けてく――――やばっ、部屋から出てくる」


「どうするんだ?」


 挟み撃ちを食らうとはな。


「アリス先生、ちょっと失礼」


 アリス先生を抱っこして天井まで跳ぶ。

 通路の壁に足を広げて踏ん張る。

 ガチャっとドアを開けて男女の盗賊が出てきた。


「もう少し休憩時間が長ければな」


「何回するつもりだい?」


 ケバい奴が出てきたな。話し方まで品がない。

 女の盗賊がいるんだし、身代金目当てに捕まった人たちは無事だったらいいけど。

 貴族とか金持ちじゃないと身代金は貰えないし、純潔じゃないと政略結婚もできそうにないから見捨てられるだろうし、大丈夫かも。

 金持ちを怒らせると兵士を集めて討伐とかされそうだし、金でカタが付くならお互いにいいかもな。



 盗賊たちをやり過ごしたオレたちは、捕まった人たちがいる場所に辿(たど)り着いた。

 あとは見張りを倒すだけなのに、4人いるんだよな。部屋の外に2人、部屋の中に2人。

 部屋の外で騒いだら中の奴に気付かれるかもしれない。少し離れた場所に誘い出さないと。

 見張りがこっちに向きそうだ。先生に言う暇はないので、手で押さえる。


 危なく見付かるとこだった。

 ん? アリス先生が袖を引っ張ってるけど、なんかあったかな?

 アリス先生のほうを見ると、顔を真っ赤にしてオレを睨んでいた。


「なんです?」


 小声で聞くと、アリス先生も小声で答えた。


「アタシのオッパイは無乳(むにゅう)か? 少なくとも貧乳だと自信を持ってたんだけどな」


 まったく柔らかくないので気付かなかったけど、オレの手がアリス先生の胸に当たっていた。

 貧乳だと自信は関係ないような気もするが、少なくとも女性の胸だと思っていたようだ。

 女性の胸は胸だが、これはオッパイじゃなく胸部ではなかろうか?

 お互いに見詰め合う。先生の顔は真っ赤だが、目はちょっと虚ろになって黄昏ている。


「…………………………気持ちいいから長く触ってしまいました。ごめんなさい」


 考えた末に出た誤魔化しは、アリス先生のプライドと引き換えに、オレの品格を奪っていった。

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