これは浪費ではなく投資です
オレたちは祝賀会の翌日に城を出て冒険者ギルドに帰る。
メイドが居るのに居候じゃ格好が付かない。しっかり稼いで大きな家を買おう。プロポーズもしたいし。
依頼を確認すると、復興に関わる依頼がそれなりにある。
資材を運ぶ商人の護衛が1番多いけど、その資材を狙って他所から来た盗賊退治もある。
治安が乱れているのか、盗賊の首に懸賞金も付いているので、依頼料とは別に、国から出るらしい。
他にも、仕事を請けた大工の護衛っていうのもあるな。
ユアンの街の復興には関わりたいので、冒険者ギルドに相談してみようかな。
オレの輸送能力を最大限に活かせる仕事は無いか頼んでみよう。
「叔父ちゃん、結衣たちのお家は大丈夫かなぁ?」
「……大丈夫だったらいいな」
全部見ていないけど、あの様子だとさすがに壊れてるだろうな。
王都のギルド長に話して見ると、アッカー伯爵から直接依頼を請けていたそうだ。
伯爵から金を預かり、資材の買い付けと輸送を頼まれたらしく、輸送をオレたちのやって欲しいと言われた。
「商人に輸送まで頼むと、莫大な輸送費が掛かって商品の値段が跳ね上がりますからね。大量購入で安く抑えて、あなたたち少人数で輸送して貰ったほうが少ない費用で済みます」
メガネのヒョロっとしたギルドマスターが、書類仕事をしながら説明する。
「伯爵は同じ金額で普通より多くの資材を手に入れられますし、冒険者1人あたりの報酬も増えます」
1万人が住む街が復興する資材だから、一部だけでも凄い量になる。
それを運ぶ人手が何人必要か知らないけど、数十人じゃ無理だもんな。
資材を管理する人と護衛や御者、その人たちの食糧とかも運ばないとダメだろうし、数百人を1週間雇うよりも、オレたちのほうが一気に運べるし、早くて安くすむ。
復興が早くなると、アリス先生たちも賛成してくれたので、この仕事を請けよう。
手続きをしたら資材置き場に案内されて、人払いしたあと収納を始める。
「今回はこれだけしか集まらなかったけど、次回は複数の商人が他領や隣国から仕入れてくる。全部入ると聞いてるけど大丈夫かい?」
ギルドマスターの疑問も当然だけど、数百tの資材が次々に収納されていくのを見て、顎から冷や汗を垂らしていた。
「これはギルドで秘密にしろと指示があるわけだ」
ギルドマスターの呟きを聞く限り、ちゃんと秘密にしてくれそうだ。
「レイラ、外でもご飯作れるか?」
アリス先生がちょこちょこ動いて、驚いていたレイラのスカートを引っ張り質問をする。
驚いてオレを凝視していたレイラは、下を向きアリス先生に気付いて笑顔に戻る。
「はい、アリスさま。田舎育ちですから~」
王城に居た時のレイラの笑顔は、大企業の社長室の受付嬢みたいだったが、今のレイラの笑顔は自然で、ほんわかする感じの笑顔と話し方だ。オレはこっちのほうが好きだ。
「じゃあ野宿でも大丈夫そうだな~。ちゃんとしたご飯が食べれるぞ! すぐ行こう!」
オレだけで行くほうが速いけど、アリス先生も壊れた街を遠目に見てるからな……心配なんだろう。
「アリス姉様、準備は大丈夫なの? 私は1人用のテントしか持ってないわよ?」
「それはオレが買ってる。前に家具を買いに行った時に買っといたんだ」
高い物も買ってるから、怒られないために、必要になるまで黙ってたんだよな。
「それなら出発するぞ! ……でも、結衣ちゃんはどうする?」
「結衣も行きたい! 結衣たちのお家が心配だもん」
どうしても行くと言って聞かないので、軍隊同士の戦争でもないし連れて行くことにした。
準備は万端なので、すぐに出発することにした。1日でも早いほうがいいし、アリス先生も張り切っている。
「馬車を借りてこうか? 結衣ちゃんやレイラも居るし」
「御者なら私ができますよ、アリスさま」
「私だって馬には乗れるわよ!」
何をレイラに張り合ってるんだ。
「結衣ね、お馬さん好き!」
結衣が馬を見たそうだし、馬車を借りてもいいけど、内緒で飛行円盤を買っちゃったんだよな。今回の報酬を当てにして。
「え~と、みんな……。実は飛行円盤を10個ほど買っちゃったんだよね」
「ふ~ん、便利だもんな~…………って10個は買いすぎだよ! また無駄遣いして!」
アリス先生はやはり怒るか。5個にしとけば良かったか?
「仕事の足に使えると思ったんですよ。復興の仕事で行き来すると思ったし」
「そうだけど! 高い物買う時は相談くらいして欲しいぞ?!」
「叔父ちゃん、結衣もお空飛べる?」
アリス先生と言い合うオレの背中に結衣が飛び付いて、首を傾げて興味津々な目を向ける。
結衣を味方に付ければ、アリス先生の追及を切り抜けられるかもしれん。
「練習すれば飛べる飛べる。オレが教えてやるからな…………ということで、いいですか?」
「う~……結衣ちゃんが喜んでるし…………便利だもんな、許す!」
アリス先生は結衣に弱い。子供に弱いだけかもしれないけど、寂しがらせてるから結衣に甘いんだよな。
「旦那様、結婚したら浪費はやめてよ? 私も働くけど、妊娠中は働くの無理だもん」
いや、嫁さんを食わせられないような浪費はしないって。
王都の外に出て、飛行円盤を起動させると、アリスも大喜びで乗った。
前に砦の壁に激突しそうになったのに、恐怖は感じていないようだ。
パンチラしてるのに気付くまで、女の子たちで練習していた。
地面から30cmくらいの低空飛行をすれば大丈夫ということで、パンチラ対策は完了した。
2時間ほど練習をしたら、メイドのレイラはおろか結衣までも、ぶつかったり落っこちたりしなくなった。
魔物が出れば上空に退避して、オレやアリス先生が遠距離で仕留める。
上を取ると、圧倒的なアドバンテージがあるのでラクに倒せる。
結衣とレイラが居るので、あまりスピードは出せないけど、順調に進んでいるので、3日もあれば伯爵領の領都に到着できそうだ。
「夕方になったし、結衣たちも疲れただろ? そろそろ夜営の準備を始めよう」
最後尾の守りをしていたオレは、前を飛ぶ皆に声を掛けた。
「もっとお空飛びたいのに……」
「アタシはお腹減ったし賛成」
「ユイちゃん、夜営の準備は時間が掛かるから、ねっ?」
「わかった……またあとで乗っていい?」
結衣も納得したので、ゆっくり減速して地面に降りた。
飛行円盤をしまって必要な物を全部出すと、レイラが煌力製品を弄り出す。
「ユートさま、お金持ちなんですね。高価な煌力製品がこんなに」
「あっ! 勇人、お前また無駄遣いを!」
またもやピンチだ。どう切り抜けよう。結衣はまったく興味ないし。
「……先生たちにラクな生活をさせたくて……」
苦しい言い訳だ。煌力製品を買ったのはたんなる勢いだった。
外国のテレビショッピングのノリの店員に勧められて、勢いでつい買ってしまっただけだ。
その時は便利だと思って、気付いたら2000万シリンくらい使い込んでいた。バレるとマズイぞ。
そして何に使うのか、イマイチ使い道の判らない道具の説明を求められたらどうする。
「なんだそうか~。それならしょーがないな!」
やっぱこの人チョロいな。誤魔化せて嬉しいんだがいいのか、そんな言い訳で?
いま誤魔化せた安堵感より、オレはアリス先生の将来が心配だ。
「ユートさま、もう少しでシチューができますよ?」
「旦那様も手伝ってよ!」
オレが考え事をしていたら、いつの間にか料理が仕上がりそうだった。
謝ってから、テントやベッドの設置を急いだ。
煌力製品なので、テントの中は快適な温度に保たれるし、結界も張られるので見張りもいらない。
結界が攻撃されると、デカイ音が鳴る優れ物だ。高いだけあるな。
シチューのいい匂いがしたので期待して見ると、見た目が残念だったが、美味しかった。なんか悔しい。




