お疲れ様な祝賀会
謁見の間から出ると、アリス先生が事情を聞きたいと騒ぎ出した。
「勇人! お前メイドさんをご褒美に貰ったのか? 羨ましいぞ! アタシを大人扱いしてくれるように言ってくれ!」
もはや支離滅裂で、事情を聞きたいのか、羨ましいのか、お願いしたいのか分からない。
「そのことは後で話しますよ。ここで話すことじゃないんで」
メイドの中に嫌がらせしてた人が居るかもしれないしな。
レイラが告げ口して配置変えして貰ったと思われたら悪い。
「事情は後でいいけど、アタシを大人扱いしてくれるように頼んでくれ!」
それが1番重要なんだ……。必死な表情が笑えてくる。
アリス先生を子供扱いしないように頼んだら、アリス先生も満足したようで静かになった。
部屋に戻り、アリス先生たちのメイドに頼み事をして、部屋から出したあとに事情を説明した。
「なるほどな~。勇人、よくやったぞ! イジメを防いだし、これで我が家にもメイドさんがやってくるし」
そんなにメイドが欲しかったんだ。
結衣が留守番する時に安心だし、可愛いメイドが家事をしてくれるから嬉しいけど。
男のプライドとして、家族に不自由のない生活をさせるのは重要だと思う。
着々とプロポーズへの準備が進むな。あとは立派な家を買いたい。
オレたちはギルドを出て家を借りる相談をして、祝賀会の時間を待った。
「ユートさま、ありがとうございます。私などを気遣ってくださって。……ユートさまの褒美を台無しにしてしまいました」
「5億くらいすぐに稼ぐさ。それより、もう王城のメイドじゃないから、もっと年齢相応のフランクな言葉遣いにね」
窮屈な職場になったら意味がないし。
「はいっ! そうしますね。王城に居る間は恥を掻かさないように気を付けますけど」
そのほうが面倒もなさそうだしな。
「レイラお姉ちゃんがお家に来るの? お料理おしえてくれる?」
「はい、ユイお嬢さま。私でよかったら教えますね」
「やったぁ! 叔父ちゃんに美味しいご飯作れるよ!」
結衣の料理はレパートリーが少ないからな。
材料の見た目が違うから仕方ないんだけど、10種類もないんじゃ飽きるからな。
「私のことは奥様って呼びなさい! 旦那様の未来の妻になる予定だから」
ツインテールを振り回し、マリーナが立ち上がって腰に手を当て宣言した。
行動がいちいちアホっぽく見えるな。しかしレイラは動じないな。
「マリーナ奥さまと呼びますね。お綺麗な奥さまでユートさまは幸せですね」
「そうでしょ!? 私ならいいお嫁さんになれるわ!」
チョロさに定評のあるマリーナは、レイラにあっさり手懐けられた。
お互いの交流が終わり、新生活の展望が見えてきたところで、アリス先生たちのメイドが戻ってきた。
祝賀会は料理も出るので、もう少しラクな盛装に着替えるらしい。
オレの分もレイラが用意してくれたので、ありがたく着替える。
「勇人はびしっとした服のほうがカッコよかったのに」
アリス先生に好評ならまた着るかな。今日の服は貰えるらしいし。
正装からラクな盛装に着替えて、会場に向かう。
ランドのオッサンたちも、華やかだけどラクな服に着替えると、オジサン臭いのがなくなってダンディになるな。
会場に着くと盛大な拍手で迎えられた。
まずは王の所に行き、挨拶をしてから自由行動をすることにした。
「皆華やかだな。今宵は存分に楽しんでくれ。その前に余の妻と子供たちを紹介しておこう」
王と似た顔立ちの銀髪の青年と、王の横の女性と同じ赤い髪の少女が前に出る。
「アルマーノ・サイラス・カウニスハーナと申します」
優雅に手を差し出したので、握る。
男には握手したけど、女性陣にはお辞儀だな。作法か? 王と同じで穏やかそうだ。
サイラスって王の名前だけど、ミドルネームに親の名前を付けるのが王族か?
「セイラ・アンジェラ・カウニスハーナですわ。お見知りおきくださいませ」
王女も優雅にカーテシーをしている。
優しそうな笑顔に結衣が嬉しそうだ。
「私は王妃のアンジェラ・ヴィオラ・カウニスハーナよ。レイラをよろしくね」
レイラを見てウインクした。
視察に行った話といい、活動的な王妃っぽいな。あと、やっぱり親の名前を子供に付けるみたいだ。
オレたちも挨拶をしてから、歓談を始める。
「ユート殿、妹と仲良くしてくれるかい? そろそろ婚約者を決めないといけない歳だと言うのに、浮いた話の1つもなくてね」
「お兄様、このような場で……はしたないですわ。この祝賀会は冒険者の皆様をおもてなしする場です」
不躾とは思わないけど、セイラ王女はオレを取り込もうとする王子を嗜めている。
「うむ、政治的な判断は見事だが、このような場で言うものではない。アルマーノ、2人の好きにさせなさい」
王もオレを取り込みたいけど、礼儀と本人たちの気持ちが大事というスタンスか。
「申し訳ありません父上。ユート殿も許して欲しい」
「可愛い王女との仲を勧められて、気分を害したりはしませんよ」
生憎とアリス先生にプロポーズしたいので無理だけど。
「それはよかった。我が国は軍事力はともかく、個人の武を誇る人材が居なくてね、つい焦ってしまった」
王子ともなれば、いろいろ悩みがあるな。国を背負うはめになるんだから、今から地盤固めをしたいのは解る。
「美辞麗句で誉められることはありますけど、可愛いなんてシンプルな言葉で誉められることはありませんわ……嬉しいですわね」
いや、平民は飾りまくった言葉を知らないだけだし。
そもそも平民は王女に可愛いとか言わないのか?
「歓談はここまでにしましょう? ユイのお腹が鳴ってるわよ」
アンジェラ王妃が結衣に気付いて、自由行動となった。
アリス先生が結衣を連れて食事を取りに行った。
基本は立食だけどテーブルもあるし、料理はその場で作ってくれる物もあるみたいだ。
オレも飯にしようと料理人の所に向かう途中、貴族らしき人たちが声を掛けてきた。
商人も居るし、その娘たちもオレを囲んだ。
オレの力に目を付けたようで、娘と結婚させようとする親がめちゃくちゃ多い。
さりげなく商談を持ち掛けてくる商人とか、お茶会に誘う貴族娘とか、やたらと胸を押し付けてくる女の子もいる。
オレはアリス先生の貧乳も好きなので負けたりしないが、普通の胸も大きな胸も嫌いじゃない。
「ユート様、武勇伝をお聞かせください!」
「ほとんどのゴブリンをお一人で倒したとか」
「格好いいです!」
男は武勇伝を語りたがる人も居るからな。オレをいい気分にさせようとしてるのか?
不思議そうなオレに、レイラが耳元でコッソリ教えてくれる。
「貴族に限らず、裕福な家の女性は刺激的なことが少ないので、そういったお話がお好きなのです」
屋敷暮らしで退屈してるのかもな。周りの男も上品な男だろうし。
お嬢様にはワイルドなタイプがモテるのかもしれない。オレはワイルドではないけど。
挨拶してくる貴族に返事をしたり、ゴブリンロードとの戦いを話していたら、どんどん人が集まってしまい、困っていたところを王が助けてくれた。
「女の子に囲まれて楽しそうだな!」
囲みを抜け出して食事をしようとしたら、アリス先生が不機嫌そうに話し掛けてくる。
ヤキモチなら嬉しいけど、保護者視点で面白くないとかじゃないだろうな。
「楽しいけどお腹が空きました」
「まったく、ボーッとしてるからだぞ! これ食え!」
なんかの肉を焼いて、変な色のソースを掛けた料理を突き出す。
心配して料理を持って来てくれたのか。料理を持って来たら女の子に囲まれている。……文句も言いたくなるか。
「女の子に囲まれていたわけじゃなくてですね……オレの力が欲しい人とその娘さんに囲まれていたんですよ」
なんとなく言い訳っぽいことを言いながら、アリス先生たちと食事を楽しんだ。




