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王城にお泊まり

 身体強化されたオッサンたちのスピードに、盗賊たちは反応すら出来ずに斬られていく。


「くそっ! なんでバレたんだ!」


 リーダーらしき男が慌てて剣を抜こうとするが、その腕に矢が突き刺さる。

 剣を抜けなくなった盗賊は後回しにして、無傷の盗賊から次々に倒されていった。


「オレたちは善良な村人だぞ!」


「なんで攻撃するんだ!」


 いや、バレたって言ったじゃん。

 それに、魔物はわざわざエサのある()みかから出て、街道に近寄ることは少ないから、街道にコソコソ隠れてる冒険者もいない。

 話し掛けて来ないで、隠れてやり過ごしてる時点で盗賊か悪巧みしてる奴だ。

 武装して疑われる行動をしたら、斬られても仕方ない。


 一応、最初に攻撃された何人かは、死なないように攻撃してるが、バレたと言った時点で、一撃で息の根を止める攻撃に変化した。

 この国の法律は、盗賊行為は死刑が基本らしいので、現行犯はわざわざ捕まえないそうだ。

 死体は検分されて聞き取り調査をされるので、襲われた場合は報告が必要だ。


 奴隷を縛る魔法などはないらしいので、奴隷は登録制だ。

 登録された奴隷は逃げ出した所で、実家などに戻れば見つかるし、知り合いの所も捜索される。

 見つかれば犯罪者として捕まるし、主人を殺して逃げたり、金品を奪って逃げれば盗賊として死刑になる。

 まともな職業にも就けなくなるうえに、奴隷だった頃より生活が悪くなるので大抵は逃げない。


 それでも逃げるような奴隷は、盗賊とかになるから、やっぱり盗賊は死刑が妥当だそうだ。

 生き残った盗賊もきちんと調査されるので、冤罪ならおとなしく捕まるほうがいい。

 仕事場や家庭などに聞き込みがされる。

 頻繁に街の外に出るくせに、魔物の素材を持って帰らないなどの、おかしな行動をしていれば、証言と合わせて盗賊認定される。


 盗賊は基本的に獲物を殺す。証言されないためだ。

 なので服や武器に血が付くし、怪我をしたり服がよく破れたり、羽振りが良くなるので、家族や友人などには隠しきれない。


 街に住んでいない盗賊は、アジトなどが近くにないと活動できないので、アジトを捜索する。

 証言があり、街や村の人間ではない時点で、盗賊だという疑いは濃厚になる。


 盗賊認定されると、倒した人に褒賞金も出るので盗賊なら報告しない理由がない。

 盗賊に見せ掛けて殺しても、死体が見つかれば捜査されるので、治安はけっこう良い。


「こんな感じだ。殺し合いを見た感想はどうだ?」


 考え事をしている内に終わっていた。

 武器の血糊を拭いながらオッサンが聞いてくる。


「別に吐き気がしたりはない。嫌悪感もないし、悪党の末路はこんな物じゃないか?」


 悪党を放置して被害を出すのは嫌だし、自分は襲われても大丈夫だから殺さないなんてのは綺麗事ですらなく、オレは卑怯者だと感じるので、出会えば殺すだろうな。

 殺すのは嫌だという気持ちも解らないでもない。誰だって他人の命を背負いたいとは思わないだろう。

 でも、する必要があって、する力もあるのにしないのは卑怯だと思う。

 女の子はともかくとして、男にその覚悟がないなら街の外に出るなという話だ。


「何にせよ、殺らなければ殺られるのは覚えておけよ? こんな奴らに命をやるねは勿体ねえ」


「わかったよ、どのみち死刑になる連中だ。罪を増やす前に殺してやるのも慈悲だと思う」


「その通りだ。自分の命も守る必要があるし、殺すことで守れる命がある」


 見逃して被害者が出ると気分が悪いからな。



 盗賊の死体を1ヵ所に纏めて、王都に向かって旅を再開した。

 王都に近付いてきたからか、旅人や商人の集団とよくすれ違うようになった。


 馬の歩くカッポカッポという音を聞きながら、御者台で景色と旅人を眺める。

 一応、舗装された道という感じで、大きな石はないけど、小石はあるしデコボコしている部分もある。

 文明レベルが高いのか低いのか判らない世界だけど、世界が違えばそんな物だろう。

 チグハグな印象はあるけど、化石燃料を利用するか煌力を利用するかの違いかな?


 考えても益体もないことを考えていると、地震が起こる。軽い地震だけど多いな。1ヵ月に1回くらいは起きてる気がするな。


「ユートは地震が珍しいのか?」


 考え込むような顔を見て、オッサンが話し掛けてくる。


「珍しくはないけど多いなと思って」


「この国じゃ当たり前だけどな」


 日本みたいな場所にある国なのかもな。

 ……兄貴たち元気かな? 家族をいっぺんに2人も失なって、落ち込んでるかもな。

 日本と共通する部分を見つけると、思い出すのが兄貴たちのことだ。

 兄貴たちのためにも、結衣のことは守らないと。御者台から振り返って結衣を見ると、アリス先生に強く抱き付いて寝ている。

 結衣も寂しいから誰かにくっついてたいのかもな。マリーナが頭を撫でると、穏やかな寝顔になる。

 結衣に抱き締められたアリス先生は苦しそうだが、アリス先生も結衣を抱き締めている。


「オレだけだったら寂しがらせてただろうな……」


「そう言えばユートたちは親を亡くして稼ぎに出たんだったな……仕事しなきゃ生きてけねえからなぁ……でもユイ嬢ちゃんには寂しいよな」


 私と仕事、どっちが大切なの? と訊いてくる女の子とは絶対に結婚しないようにしよう。

 結衣を寂しがらせる悩みに加えて、恋人や奥さんに悩まされたくないし。

 ラクして稼げる仕事なんて、悪事ですらないだろうしな。不労所得がこっちにあるとは思えない。




 何回かの夜を過ごし、オレたちは王都スケイルレーセに辿り着いた。

 王から言い含められたのか、行列を待たずに通して貰えたので助かる。

 結衣はキョロキョロと、あちこちに好奇心旺盛な目を向け、今にも馬車から飛び出しそうだ。


「壁の端っこが見えないな~! 伯爵のとこよりでっかいな!」


 アリス先生が驚くのも無理はないだろう。王都の人口は120万人くらいで、アッカー伯爵の領都カレイラの6倍にもなる。

 20mくらいの幅がある大通りの先に、巨大な城が見える。

 5kmくらい先にあっても、デカさが判る。ゴブリンロードの3倍くらいの高さかな?

 魔法や身体強化があるし、魔法金属や特殊な石なんかの素材があるから、この文明レベルなのに、あの大きさで作れるんだろうな。


 冒険者ギルドに寄って報告をしてから、城へ向かう。

 広い道の脇にはいくつもの店舗が並び、遠目に見ても品揃えの良さが分かる。

 焼き魚を売っている店で、お客の猫耳の女の子のシッポがブンブン振り回されているのを、結衣もアリス先生も興味津々で見ていた。

 マリーナは武器屋が気になるようで、武装した人しか入らない店を、首を伸ばして覗き込んでいる。


「勇人、あとであの服屋に寄ってこう!」


「叔父ちゃん、あのお魚に手があるよ!」


「あの人が持ってる手甲が欲しい! 旦那様買ってね!」


 女の子の買い物好きは異世界でも変わらないな。


「女所帯は大変だな、ユート。金はあるだろうから買ってやれよ。しばらく機嫌がよくなるぞ」


「別にご機嫌取りしなくても平気だけど、アドバイスはありがたく貰っとく」


 城までの長い道のりも、いろんな店や人を見ていると気にならず、城に近付くにつれ、その大きさに結衣たちは大興奮した。

 結衣は城に住んでみたいらしい。でも実際に住んだら広くて面倒だと思う。

 ランドのオッサンが冒険者証を見せると、門番が中へ通してくれて、すぐに騎士とメイドさんが20人くらいやって来た。


「ようこそ! 案内を仰せ付かったダリル・ロウトンと申します。皆さまのお世話はこのメイドたちが受け持ちます」



 ダリルさんがそれぞれの部屋に案内してくれて、1人1人にメイドさんが付く。

 オレのお世話はレイラという、ピンクの髪を腰まで伸ばしている可愛い子だった。

 腰の辺りの髪が少し癖っ毛なのと、ニコニコしているのが印象的だ。

 王は自分の予定を簡単には変えないので、何日か城に泊まることになった。


「お客さま、ご要望があれば可能な限り叶えるようにと申し付けられておりますので、ご不満があれば、お申し付けください」


 メイドさんの扱いかたなんて知らないぞ。どうしよう?

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