王都スケイルレーセへ
近衛騎士が立ったまま王の言葉を伝える。
「此度の功に報いるため、褒美を取らす。よくぞ我が国を救ってくれた。とのことです。つきましては、このリストから選んで下さい」
王の言葉とは言え、わざわざここまで来て大変だな。
リストを見ると、いろいろな品から選べるようだ。
1人1つずつ貰えるようだ。オッサンたちにも聞きに行くのか聞いたら、オレたちのほうが活躍したから、先に選ぶように言われたらしい。どこまでもいい人たちだ。
結衣に欲しい物を聞いたら、宝物はいらないと言うので、オレの分は結衣の老後のために5億シリンの現金を希望した。
「アタシは魔法の杖にしようかな? この天の錫杖っていう杖。魔力の消費が少なくなるし、魔法制御の補助機能があるから」
アリス先生は傷が少しずつ回復するドレスと悩んでいたが、結局は攻撃よりの選択をした。
「私はどうしようかな……剣が欲しいけど買ったばかりで勿体ないし」
貴族の娘なのに庶民的だけど、結婚するにはいいかもしれない。
マリーナは悩んだすえ、常時体力回復効果のある慈愛のペンダントを選んだ。
常時魔力回復だったらオレが選ぶけど、無い物ねだりしてもな。
体力回復といっても微々たるものと書いてあるが、無いよりマシだろう。
「でも、こんなに貰っていいんですか? 伯爵から依頼料は貰ったのに」
「軍隊を動かすより安くつきますよ。それに、軍隊が出撃しても負ける可能性もありますし。よく十数人で倒せたなと、陛下も驚いていました」
ゴブリンロードって強いんだな。……30mもあれば当然かもな。
一撃で城とか壊せそうなパワーだったし、体力も防御力も凄かったもんな。
ドラゴンはアレより強いらしいし、もっと強くならないと死ぬかもしれん。
「それと、国境付近で小競り合いがあったそうです。危うく本格的な戦争になるところでした」
あんな手をまた使われたらヤバそうだ。
「それで、受け取りは王都で行われます。陛下が直々に下賜されるので名誉ですよ」
名誉はマリーナは嬉しいかもな。オレも知名度が上がれば、指輪を奪おうなんて考える奴は減るかな?
「砦の兵士たちって何かしら褒美って出るんですか?」
知り合いはやっぱり気になる。
「私も彼らも国を守るのが仕事ですからね、特別な活躍でもすれば別ですが、亡くなった兵士の家族に恩賞が支給されるくらいです」
兵士にだけはなるもんじゃないな。
「他には何かお聞きになりたいことはありますか?」
「作法とかは必要ですか? オレたちは知らないんですけど」
「臣下ではないのですから、最低限の礼儀さえあれば、陛下は何も仰いませんよ。貴族の方たちにも下知なさいました」
それなら問題なさそうだ。
もう聞くことはないかと、アリス先生たちと顔を見合わせる。
特に思い付かないので、お互いに首を振った。結衣も話に飽きて、オレの膝で寝てるし。
「それでは、私は他の方の所へ参りますので、失礼」
胸に手を当て、一礼してから退出した。
「……勇人はお金でよかったのか? 仕事すれば5億シリンくらい稼げるのに」
足音が遠ざかると、アリス先生はキョトンとした表情で首を傾げて尋ねてきた。
「戦闘用の服とかは欲しいですけど、いい材料を手に入れてカッコいいのを作って貰おうかと」
ドラゴンの皮とかなら強そうだし、全力で戦っても破れなさそうだ。
「それより、マリーナの故郷の王ってどんな人だ?」
王族に会うし、いろいろ知っておきたい。
「この国と私の国は同盟国なのよ。私はどちらの国の陛下にも会ったことはないんだけど、国同士の仲はいいわ。ナイトリール王国は騎士の国で、みんな強い人が好きなの!」
あぁ、道理でマリーナも。
「だから旦那様は父様に気に入られるはずよ!」
気に入られる理由が微妙だな。人間性を気に入ってくれよ。
オレたちがマリーナの故郷の話で盛り上がっていたら、受付嬢がやって来て、査定が終わったことを告げた。
数が多かったけど、毛皮が焼けていたので、1つ1つ値段が変わるらしい。
内訳を確認するのは面倒だと満場一致したので、金額に文句はない。
オッサンたちも話が終わったらしく、予定を合わせて、みんなで一緒に王都に向かうことにした。
出発は2日後になる。復興の仕事もチラホラと掲示板に貼られるようになった。
家屋の材料を集める仕事や荷運びの仕事は、新人が請けるには丁度いい依頼らしいが、オレたちは戦闘ランクが高いので新人だと思われてない。
他にも、討ち洩らしたゴブリンの討伐や、盗賊退治などの仕事は、戦闘ランクが7級以上の人が請ける。
オレの戦闘ランクは5級まで上がったので、オレも盗賊退治を請けられるけどどうするか。
ゴブリンロードを単独で倒したなら2級まで一気に上がるらしいが、ランドのオッサンたちと一緒だったので5級止まりだった。
マリーナは大量のゴブリンを倒せるので、7級だった。ゴブリン自体は10級の魔物だが、ゴブリンロードの強化と数で7級相当だと判断された。
オレももう1度くらい、みんなでゴブリンロードと戦って倒したら、3級くらいにはなれるらしい。
1度だとマグレ勝ちや運良く生き残る人も居るので、安定して狩れなければ駄目らしい。
王都から帰って来たら、オレも資材を破壊された街に運ぶ仕事を請けよう。
結衣も街がどうなったか気にしていたし、オレもあの街が壊れたままなのは気分が悪い。
サボり気味だった煌力の訓練を再開して、出発の日を待つ。
魔力値を計ったら、オレたち全員の魔力が僅かに上がったので、訓練にも身が入る。
食糧などを買い込み、マリーナの着替えも買って、アリス先生の収納の指輪に入れた。
マリーナの指輪は、バッグ4~5個分くらいしか入らないので、保存食と畳んだテントくらいしか入れてなかったからだ。
準備万端で出発の日を迎えた。
門の前でオッサンたちと合流したオレたちは、ギルドから借りた馬車に乗って王都に向かう。
冒険者の先輩たちから王都の話を聞いて、あの店に行きたい、この店に行きたいと女性陣が盛り上がっている。
特に問題も起こらず、順調に王都への道を進んだ。
たまに魔物が襲って来たが、接近するまでにオレが気付き、アリス先生の魔法で先制する。
いくつもの街や村を経由して、2週間掛けて3分の2ほどの行程を終えた。
「ユートの索敵は相変わらずスゲェな。煌力を使うらしいが、説明を聞いてもサッパリ解らん」
「まったくだな。お蔭で夜だけ警戒すればいいしな」
「ぜんぜん理解できない力だけど便利だよな!」
オレが気を抜いたらどうする気だよと思うが、先輩たちは警戒を解いたりしていない。
小さくても物音がすると、すかさず武器に手を掛ける。さすが高ランク冒険者だ。
アリス先生と結衣は、日向ぼっこする子犬のように緩みきった顔で寝てるけどな。
「ん? オッサン、800mくらい先に隠れてる人間がいるぞ、盗賊じゃないか?」
道の脇にある草むらに隠れてるみたいだ。この形は剣とかの武器だな。
「それなら、ユートとお嬢ちゃんたち以外は外に出るか。冒険者の集団に襲い掛かる盗賊は少ない。気付かないふりして奇襲をするぞ」
特に返事をするでもなく、オッサンのパーティーはすぐに動き出す。統率が取れてるな。
オレのパーティーは2人は寝てるし、荷馬車に乗ったことのないマリーナはお尻を押さえて痛がってるし。はぁ~、切ない。
「ユートは人殺しをしたことがないなら、よく見とけよ。いずれその時が来る」
「……手伝いたいけど、言う通りにするよ」
いきなり人を殺すのは抵抗がある。必要だとは思うから、いつか殺すけど、今は甘えよう。
300mくらいの距離まで近づくと、反応が慌て出したので、武装した冒険者集団を恐れているのか。
これなら、オッサンの言う通り襲って来ないだろうから、作戦通りに気付かないふりして油断させる。
オレたちを乗せた馬車が通り過ぎた所で、オッサンたちは反転して奇襲を掛けた。




