決着
さすがに厳しいな。オレの残った魔力じゃ、たいした量の煌力は集められない。
これじゃあゴブリンロードに止めは刺せそうにないぞ。
「勇人、無事だったんだな~! あんまりアタシを心配させるな、バカッ!」
取り敢えず、先生たちの周りに居るゴブリンたちを倒しておこう。
オレは煌力を使わずに、剣を抜いて斬り付けた。
強化されていても、技量が低いからオレに取っては素の状態で相手が出来る。
ゴブリンロードが立ち上がることが出来ないので、ランドのオッサンたちもゴブリンを始末し始めた。
「アリス先生! 今の内に魔力を溜めて強力な魔法で倒して下さい!」
悔しいが、残った魔力じゃゴブリンロードに勝てそうもない。
少ない力で強力な攻撃が出来る技を考えなければ。
「わかった! 先生の必殺魔法で倒してやるっ!」
そう言って魔力を溜め始めた。
ゴブリンロードはまだ動けないが、命令は出来るらしく、一声吼えた。
命令を聞き、アリス先生が狙われる。オレたちは方円陣を組んでアリス先生を守る。
10秒ほど経った頃、ゴブリンロードが立ち上がり、こちらに歩き出した。
「嬢ちゃん、まだか?!」
「まだ馴れてないから、あと3分くらい!」
ここに来てオレたちを踏み潰すのに、1分も掛からないだろうな。
残り少ない力で強力な攻撃を繰り出す方法はないか?
……そういえば、巨大な生き物は煌力を食糧にしてるんだったな。
「オッサン、アリス先生たちを守ってくれよ! オレは試してみたい技がある!」
「任せろ! ゴブリンの攻撃なんか、いくら食らっても倒れたりしねぇ!」
オッサンに任せてゴブリンロードの前に飛び出す。
『よくもよくも! 貴様だけは許さん!!』
相当頭に来てるな。アリス先生に向かわないからいいけど。
とにかく、こいつを誘導して引き離そう。その間に集中だ。
地面が揺れて走りにくいけど、踏み砕く力は残ってないらしい。
「勇人~! 早く離れろ~! 撃てないじゃんか~!」
よし、魔力が溜まったみたいだ。あとはこいつを移動出来ないようにすれば逃げられる。
「食らえ!」
オレから放たれた制御魔法が、ゴブリンロードの魔力が薄い部分にある煌力を制御する。
弱っている今なら出来るはずだ。魔力を振り絞れ。
オレに制御された、ゴブリンロードの体内の煌力が暴走を始める。
構想では心臓や脳の辺りを爆発るんだけど、魔力の強い部分だとオレの魔力が阻害されて操れない。
足の所に有った煌力を制御するので精一杯だった。
ゴブリンロードの右足が内部から爆発し、膝から下を吹き飛ばした。
片足を失い、バランスを崩して手を突いたゴブリンロードから急いで離れる。
十分に離れた所で、アリス先生の魔法が炸裂した。
「バースト・エレメンタル!」
四元素の魔力が混ざり合い、アリス先生の小さな手から放たれた。
地面を削りながら直径2mくらいの玉が飛んでいく。
そんなに速度はないけど、ゴブリンロードは動けずに直撃した。
すべてが消滅しそうな破壊のエネルギーが撒き散らされ、光の中でゴブリンロードが塵となった。
「やった~! アタシの最強の必殺魔法の威力は凄いぞ~! 初めて使ったけど……」
なんか物騒なことをボソッと言ったけど、勝ちは勝ちだ! また魔石が勿体ないけど。
今のアリス先生だと、そういう細かいことは無理っぽいし、ゴブリンロードが万全の状態じゃあ当てられないだろうから今後の課題だな。
オレの技も万全の相手には防がれるし、体内に煌力がない奴には効かないから、巨大な魔物専用だな。
しかも弱らせてからだし、もっと煌力の制御力を上げないと使い道がないな。
「勇人~! よくやったぞ! さすがアタシの教え子だ!」
ちょこちょこと駆け寄ってきたアリス先生が抱き付いて頭を撫でる。
背伸びしてプルプルしているので少し屈んだら、ニカッと子供みたいに笑った。
「ユート、ポーション持ってるなら飲め、けっこうダメージがあるだろ」
「飲んだからこの程度で済んでるだよ、オッサン」
吹き飛ばした時に、ポーションが有るのを思い出してすでに飲んだ。
「それじゃあしょうがないな、回復魔法が使える奴が来るまで待つしかない」
ポーションは薬なので、飲み過ぎると体に悪いらしい。いざという時だけ飲む物だ。
傷を回復するなら魔力は回復出来ない。どちらか1本だけだ。用法用量は守るように瓶にも書いてあるし、買う時にも注意された。
「旦那様が吹き飛ばされたとき、私もアリス姉様も死んじゃうと思ったんだから!」
「悪い悪い。つい引っ掛かった。知能が高いのは知ってたんだけどな、知ってるだけじゃ駄目だな」
あの時は力を抜いて抵抗しなかったから、パンチのダメージはあんまりないんだよな。
吹き飛んで叩き付けられるダメージのほうが大きかった。
リベンジ・ブラストの爆発で、自分からも後ろに飛んだはいいけど、思ったよりゴブリンロードのパンチが強くて受け身が取れなかった。
受け流さないで直撃してたら死んでたけど。
「ゴブリンロードが倒されて、残ったゴブリンは逃げてったから、そろそろ砦に帰るか」
ランドのオッサンに促されて、オレたちは重い足を引きずって砦に歩き出した。
帰り道で、逃げ散るゴブリンを騎士や兵士が追ってるな。怪我人の回収も始めてるし。
女性兵士が怪我人の面倒を看る衛生兵なんだろう。戦うのは男が多い。
それで男の数が少なくなるから一夫多妻制になり、金持ちとかが余った女性の生活の面倒を見る。
子供の関係で女性を残さなければならない。
男は1人いれば全員を妊娠させられるが、女性は1度に産めるのは1人か2人だからな。理にかなっている。
現代の倫理観を持ち出すのは間違いだろう。
歩きながら応急処置をされている兵士を見る。
無傷の人間のほうが少ないのは当然だけど、死者もけっこう多い。
折れた武器や壊れた鎧とか、後片付けも大変そうだな。復興作業もあるし。
知り合いもいるし、なるべく手伝いをしたいけど、無償でするわけにはいかない。
依頼があれば報酬額は低くても、積極的に引き受けよう。幸い、金に余裕はあるし。
「アリス先生、今後の予定なんだけど、どうします?」
ゴブリンロードを倒した時のはしゃぎようも鳴りを潜め、怪我人や死者を悲しそうに見ている。
「まずはお前の治療だ。あとのことは相談して決めよう」
「私も疲れたから休みたいけど……、この光景を見ると、じっとしてられない気がするわね」
マリーナもオレと同じで、何かしら手伝いをしたいらしい。
「アタシたちも怪我人なんだから、治すのが先だぞ? 結衣ちゃんに心配掛けちゃうからな」
結衣を泣かすわけにはいかないから、治ったから街に帰ったほうがいいか。
「ねぇ旦那様、ユイちゃんって誰なの?」
「結衣はオレの兄貴の子供だ。姪っ子だよ」
そういえばマリーナには言ってなかった。
「結婚したら家族になるのね! 妹が欲しかったんだ~」
「そういえば結婚ってどういうことだ? 勇人」
アリス先生になんて説明するか。
取り敢えず、事実だけを話してどうしたいかも話した。
アリス先生へのプロポーズはちゃんとした時にするから秘密だけど。
「ま、まだ結婚なんて早いぞ! アタシなんか27だぞ!」
どうやら地雷を踏んだらしい。早目にアリス先生と結婚したいことを伝えて、ちゃんと考えて貰おう。
マリーナのこともその時に伝えて、一夫多妻が駄目だったらマリーナとの結婚は断ろう。
やるべきことと、やりたいことはいっぱい有るけど、今はしっかり休んで元気になったら考えるか。
やっとのことで砦が見えた、ホッとしたから緊張はしていたのかもな。
ブックマークが地味に増えて、ありがたいですね。
毎日更新できるように頑張ります。ストックは10話くらいあるんですけどね。
10話以上を維持しないと安心できなくて焦ります。




