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フラグは立てたけど、特に作戦に影響はなかった

 オレが砦に向かって飛んでいると、もう5分くらいで到着するという時に、魔物に襲われている女の子を見つけた。


 急いで飛んで行くが、そこそこ戦えるらしく、剣を握り構える姿はサマになっている。

 胸当てと手甲、肘当てに膝当て、そして脚甲を身に付けて騎士のようだ。

 ミニスカートにニーソックスと、勇ましい中にも可愛らしさを失わない。


 オレより少し若いくらいの年齢で、長い金髪をツインテールにして風に靡かせている姿は、戦乙女のようにも見える。気の強そうなエメラルドグリーンの瞳が、ゴブリンの集団を睨み付けている。

 雰囲気からして強そうな感じだ。助けなくても大丈夫っぽいな。

 あのゴブリンは強化されてないみたいで、ちょっと怯えが見える。

 ひょっとしたらゴブリンロードの支配は距離が関係してるのかも。それとも野良ゴブリン?


「私に向かって来るなんていい度胸じゃない! 私の力を見せてあげるわ!」


 ゴブリンのほうに度胸があるようには見えんけど。ヤベー奴に出会っちまった、と騒いでるぞ。


「キーキーキーキー威嚇して! やっぱり許せない生き物だわ」


 許せない生き物なのは確かだけど、それは威嚇してるんじゃなく怯えてるんだ。


「やぁ!」


 威嚇されたと思った戦乙女が、剣を手にゴブリンに斬りかかった。

 先頭のゴブリンは、怯えた顔(ゴブリンの表情は判りにくいが歪んでいるので)のまま首を()ねられた。


「はぁ!」


 返す刀で次のゴブリンの首を狩る。やっぱり腕は悪くないな。大丈夫そうだ。

 問題ないなら砦に向かうかな。獲物の横取りはトラブルの元だし。

 いや、念には念を入れて最後まで見てよう。戦場に近い場所というのも気になる。作戦を狂わすフラグかもしれない。


 怯えながらも武器を振り回し、女の子に反撃を開始したが、軽く避けられ斬り倒される。

 身体強化はされてないので、純粋に剣の技量がいいだけだ。

 足などを突き刺してから、敵の動きを止めて戦ってるので馴れている印象だ。


 安心して見ていたが、あと3匹という所で顔面からスッ転んだ。

 うわ~痛そう。ゴブリンもあまりの事態に固まってる。


『人間がいきなり妙な動きをしたぞ!』


『気を付けろ! 強い人間が変な動きをするわけがない!』


『勢いが凄かったから、あれで斬られたら真っ二つにされる! 凄い技だ。人間は怖いぞ!』


 ゴブリンがアホで助かったな、あの女の子。

 ただ転んだだけなのに、勘違いして距離を取った。


「いった~~。なんの恨みがあるのよ! この石!」


 石はそこに存在するだけで、お前のミスだろ。


「っ~~。ゴブリンのクセに笑うな~!」


 何度も言うが怯えてるだけだ、ポンコツ娘。

 凛々しい戦乙女から、恥ずかしさを誤魔化すツンデレ娘に格下げしておこう。

 見なかったことにしたほうがいいだろうか? 対応に困る女の子だな。

 真上で考え事をしながら見ていると、女の子の足下にヒビが入っていた。

 慌てて下降したオレは、女の子を抱えて再び上昇した。


「きゃあああ、高い! なんなの?!」


「落ち着け。足下を見ろ」


 パニックになる女の子を(なだ)めて下を向かせると、女の子のいた場所に穴が開いていた。

 岩盤さえ砕いて、いきなり獲物を引きずり込んで食い殺す狂暴な奴が、居なくなった獲物にキョロキョロしている。


「……岩モグラ……危なかった~」


 自分のピンチに気付いて、ようやく静かになった女の子を抱えたまま、穴目掛けて光弾を撃った。

 岩モグラの鳴き声と爆発音が響き、女の子がまた悲鳴を上げた。

 上からの攻撃に、ゴブリンがこちらに気付いて騒ぎだした。


『この間の人間だ!』


『砦で仲間をいっぱい殺した悪魔だ!』


『あの時みたいに変な光が降ってきた! 殺される!』


 最初に砦に着いた時に蹴散らしたゴブリンの生き残りだったようだ。

 コントロールが甘いせいで、自分の近くに光弾を落とせなかったからな。

 砦から離れたせいで、ゴブリンロードの支配が及ばなくなったのか?

 ゴブリンロードも慌てて逃げるように指示したせいで、支配できない範囲まで逃げたとかか?


「ちょっとアンタ! ゴブリンが威嚇してるわよ!」


 だからオレたちに怯えてるんだ。


「あとお尻触ってるんだけど?」


 攻撃するために左腕だけで抱えているので、スカートを抑えるように抱っこしてるだけなんだが。


「パンツ丸見えでいいなら、腰を掴むが」


「それはヤダ! 助けてくれたし……パンツ見られたくないし……、お尻触ってるのは気にしないことにするわ」


 許しを得たのでコソコソ逃げるゴブリンに、光弾を撃って仕留めた。


「強いわね! 顔も良いし、結婚してあげてもいいかな」


 生憎と好きな人はもう居るので、残念ながら結婚は無理だ。


「なんでそんなに結婚を急ぐんだ?」


 出会ったばかりの男と結婚すると言い出す女の子は、ちょっと怖いぞ。


「親から結婚しろって言われてるの! このままじゃお見合いさせられるわ!」


 こっちの世界だと、この年齢で見合いか。大変な世界だから寿命をまっとう出来ない人も多いからな。

 早く結婚して子供を産まないと、日本以上の少子化で悩むことになるんだろう。


「あと、男の人にお尻触られたし、結婚しないと、はしたないもん」


 こっちの女の子は貞淑なのが当たり前なのか?


「私の家はナイトリール王国の男爵家なんだけど、父様は騎士をやっててね。私も騎士になりたくて修行してたんだけど、父様も兄様も反対して。……結婚させられそうになったから家出したの」


 家出少女だったか。行動力はあるな。


「だから今は結婚相手を探しながら、騎士になるために手柄が欲しいの」


 家出したのに結婚相手を探す?


「家出したなら親から結婚を迫られても大丈夫なんじゃないのか?」


「そんなことしたら家族が心配するじゃない! いつまでも娘が結婚できないって」


「家出してる時点で心配してるだろう」


 いま気付いた! みたいな顔をして驚いている。やっぱポンコツな気がするな。


「とにかく、街に戻ったほうがいい。この近くは戦場だ」


 手柄を立てに来たんだろうけど、数が多すぎる。


「私は戦功を上げて騎士になって、素敵な旦那様を見つけて父様たちを安心させたいの! 絶対行く!」


 結婚に関しては安心するかもしれんが、戦いに関しては安心できんと思う。


「砦に連れて行くのはいいけど、勝手に戦いに参加しないと約束するか?」


「……手柄は欲しいけど、約束は守る。騎士だもん!」


 親父さんが立派な騎士なんだろうな。本気で騎士になりたいようだ。


「それなら連れて行く。オレは勇人だ」


「私はマリーナ・レイセル。ありがとう旦那様!」


 いつ結婚したんだ?


「オレは結婚しないぞ。好きな人が居るから」


「ちょっと不満だけど、私も16歳だし、大人の恋愛は知ってるわ! 本で見たもの。第二夫人でもいい、変なおじ様と結婚したくないし」


 同い年だったか。14歳くらいだと思った。

 一夫多妻は理解してる。男が戦場で死にやすい時代だと、そうでもしないと生きていけない女性が出るからな。


「オレが結婚できて相手がいいって言ったらな」


 稼げるし郷に入っては郷に従えだ。先生が嫌がるならしないけど。

 男なら甲斐性は必要だ。嫁さんが多くてもオレは困らないから、嫁さんになる人が許すなら嫌がる理由はない。


「早く結婚してね? 私も早く父様たちを安心させてあげたいし」


「頑張るけどね」


 生徒と思われてると、倫理観が邪魔して結婚する気になるかは怪しい。

 世の中ままならないな。なんでも全員にとって都合がいい世界は不気味だけど。


「お家は小さくてもいいから、幸せな家庭にしてよ!」


 もうすでに結婚した気分でいるな。

 美少女だから許されそうだが、そうでなければストーカー扱いされそうだ。


 日本人からすると、嫁さんが複数居る幸せな家庭が想像しにくいな。

 オレはその国の文化を否定したりしないので、ハーレムの批判はしないが、女性に理解が得られにくいのも理解している。

 先生がオレを好きになってくれて、許してくれないならマリーナには諦めて貰うしかない。

 あるいは、オレが先生よりマリーナを好きになるとか。先なんてオレには判らない。恋愛は特に。

 オレの首に手を回して浮かれているマリーナに、念を押してから砦に飛んだ。

 

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