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領都へ帰還

 オレは収納の指輪の性能を話すため、口を開こうとしたら、司令官は副官だけ残して部下を下げた。

 オレは代官も知っていることを伝え、残して貰った。

 冒険者たちは心配そうに見ているが、オレが頷くとホッとした顔をした。

 ランドのオッサンだけは気遣わしそうな顔だったが。


「これで秘密を知る者は最小限になる。話してくれ」


 司令官は深い笑みを浮かべて、安心させるように話を促す。


「実は他の冒険者は、ダミーの馬車を連れて来るために雇われました。オレの指輪は高性能で、今回届けた物資はすべてオレの指輪に入れて来ました」


「収納の指輪は最高の物でも家一軒ほどの容量しかないはずだが。現在の時代の人間に作れる物となると、物置小屋が限度だ」


 作れるから、普通に店にも売ってるし、商人や冒険者の必須アイテムになっている。高いから誰でも買えるわけじゃないけど。


「だからオレが領都に飛んで行けば、途中で補給部隊と合流できるし、次からはオレだけで補給ができます。治療も出来ればゴブリンロードとも戦えるし」


「その時はおっちゃんたちも出るぞ。ユートだけで戦うのは冒険者ギルドとしても、黙ってられねぇ」


 1人で戦うつもりで意気込んでいたオレに、冒険者たちがストップを掛けた。


「おっちゃんだって強化されたゴブリンなら、500匹は倒して砦に帰る余裕がある。他の冒険者も300匹はいける。ユートがゴブリンロードとの戦いに専念できるように、援護してやるからな!」


 ランドのオッサンが宣言すると、他の冒険者も騒ぎだした。


「俺だって仲間のピンチにノンビリする気はない」


「お前が倒れたら、砦までかついでやるさ!」


 見た目のゴツさもあって、そのままゴブリンを全滅させそうな頼もしさだ。


「ゴブリンロードとはアタシも戦うからな! 勇人に連れて行って貰えばいいし」


 魔法の援護があればかなりラクになるだろうけど、男としては好きな人を危険に曝したくないんだよな。

 オレが微妙な顔をしているからか、アリス先生はすでにオレの背中に張り付いている。


「連れて行かないとゴブリンを吹き飛ばして行くからな!」


「分かりましたよ……。言っても聞かないんだからなぁ」


 冒険者たちで話が付いたのを見計らい、司令官が口を開いた。


「その時は出撃してゴブリン共を引き付けよう。無事にゴブリンロード倒すまで、可能な限り相手をする。だが君たちが戦わなくても、物資さえあるなら、援軍が来るまで無理をすることはない」


 副官が言うには国軍の前に、国王から近隣の領主に援軍を出すように命令が下る可能性が高いそうだ。

 この領地が負ければ自分の領地に来るかもしれないので、他領の領主も無視できない。


「もっとも、援軍が来てしまえば借りができてしまう。復興を考えると余計な借りは作りたくない」


 そっか、街はボロボロだったし、復興するには金がいっぱい必要だろうし。

 あの街は好きだから何とかしたいな。いろいろ要求されて伯爵が困ると領民も困る。


 こっそり仕掛けるか? いや、アリス先生が心配する。

 まず援軍は断って貰う。そして毎日ゴブリンを減らして、ゴブリンロードだけになったら実力者で総攻撃がいいかも。そう思って提案してみた。


「確かにあの攻撃なら、10日以内には殲滅できるだろう。復興で借りを作らざるを得ない以上、援軍を出されたら支援が減ってしまう」


 戦争は金が掛かると言うしな。戦争を知らない世代のオレですら知ってる。

 地球より輸送力がない世界だから、軍隊を動かすだけで莫大な金が必要だろうな。

 独力で倒せれば、他の領地への被害を食い止めたと言い張れば、逆に恩を着せることも有り得そう。


「何にせよ、最大の問題である補給が問題でなくなる。それならば時間を掛ければ倒せるだろう」


 司令官も乗り気のようだし、あと一押しで決まりそうだな。

 どう言うか考えていると、ランドのオッサンが意見を言った。


「改めて領主から依頼を出して貰えるか? ギルド員である以上、依頼も受けず勝手な行動はできない。タダ働きしてしまえば、冒険者は金を貰わなくても仕事をしてくれる、などと言い出す輩も出て来るかもしれない」


 そうだった。冒険者全体の利益を守るために、悪い前例を作るのはよくない。

 金のない人間が、あの冒険者は金なんて取らなかったのに、なんて文句を言うようになったら困る。

 善意の人助けがしたいなら、冒険者の身分を隠して行わないと不利益になる。


「それは当然だ。私から手紙で頼んでおく。今回の依頼達成証と一緒に届けてくれ」


 司令官が手紙を書き始める。

 これで時間に追われず倒すことができる。

 援軍が来るまでに、となると無理をしないと駄目になるからな。


「アタシは勇人が帰ってくるまで、魔法で数を減らしておくから」


 先生は一緒に帰らないのか。心配だけど、ゴブリンロードは賢いみたいだし、防御を固めた砦から強力な魔法が毎日飛んで来たら警戒して、総攻撃開始なんてことにはならないはず。


 少しの間、アリス先生や冒険者たちと雑談をしていると、司令官が書き終わり、オレは砦を出発することにした。


「怪我してるんだから、無理はダメだぞ? 補給部隊と合流したら少し休んでからな!」


「お嬢ちゃんのことは任せて、ユートは安全を優先して届けろよ」


 心配性なアリス先生とオッサンたちに見送られて、オレは砦を飛び出した。

 ついでにゴブリンに攻撃していくことも忘れない。数百匹は吹き飛ばして空を急ぐ。

 あっという間にゴブリンの囲いを抜けて、砦が見えない所まで飛んだ。

 魔力に気をつけて飛ばないとな。途中で切れて墜落死なんて嫌だから、アリス先生の言う通り補給部隊で休んで行こう。


 30分くらい飛んだ所で補給部隊を見つけて、隊長らしき人の所に下りる。

 司令官から預かった補給部隊宛の手紙を渡すと、領都に引き返すことになった。

 オレは補給部隊に運ばれてる間に眠り、魔力を全回復してから領都に向かって出発した。


 来る時は数日掛かったのに、空を飛ぶと2時間くらいで帰ることが出来た。

 門番に事情を話してすぐに入れてもらい、領主の館まで急いだ。道が混んでいたので屋根の上を走ると、5分と掛からない。


 館の門番に手紙を渡すと、2分くらいで戻ってきた門番がメイドさんを連れて来る。

 メイドさんに案内して貰い、領主の執務室で迎えられた。


「挨拶をしたい所だが、急いでそうだね。治癒術士を手配したから、事情を詳しく話して欲しい」


 司令官がどこまで書いたか知らないので、取り敢えず決まったことは全部話した。

 その間に、治癒術士が来て回復を始めたので、一部表現を誤魔化す。一瞬では治らず時間が掛かるようだ。


「なるほど。そうして貰えると政治的に助かるね。冒険者ギルドに依頼を出すから休んで行くといい」


 そういえば言葉遣いが少し柔らかい。大人相手だと貴族として振る舞ってるのか? どっちでもいいか。


「もう十分に休みましたし、砦に残してきた人たちも心配なので、回復したらオレが届けます」


「しかし、砦からここまで飛んで来たなら魔力が尽きているだろう? 明日まで休んでからアレを届ければいい」


 アレってのは物資だろうな。うーん、魔力はどうやって誤魔化すか。

 冒険者ギルドに問い合わせれば判るのか? それともギルド員以外には伝えないのか?

 判らないので、結衣のことを話してギルドに泊まることを告げた。

 伯爵は二度手間にならないように、先に倉庫に連れて行ってくれて、物資の収納をした。

 前回よりも物資が多いのは、前回間に合わなかった分が届いたそうだ。

 補給部隊が1度に運べる量には限りがあるので、補給部隊が何回かに分けて砦の近くまで運ぶ予定だったらしい。



 冒険者ギルドに到着したら、すぐに伯爵からの依頼状を受付嬢に渡す。

 ギルドマスターに渡しに行くついでに、結衣を呼んで来てくれた。


「叔父ちゃん! おかえりぃぃぃ!」


 飛び付いて来た結衣を抱き締め、日常に戻ってきた実感を噛み締めた。

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