マザーの最期
まずは煌力を撃ってみよう。巨体だし避けられないはず。
戦い方を考えていると、マザーゴブリンは30mの巨体を起こし、殴り掛かってきた。
「うわっ!」
腕でガードするが、かなり吹っ飛ばされてしまう。意外に素早いぞ。
しかも巨体な分、パワーもかなり強い。咄嗟のことで、ガードした左腕が折れてしまった。
飛行中は煌力を放出しているので、身体強化が不十分らしい。弱点の検証はしてなかったからな。
「お返しだ!」
右手から光弾を放つが、機敏な動きで顔を反らして躱された。その後方で爆発し、ゴブリンが20匹ほど死んだ。
大きな足音に振り向くと、別のマザーゴブリンが大きく口を開いて、オレを食おうとしていた。
「くっ」
まだ飛ぶのに馴れていないせいで避けられず、閉じようとする口を右腕と足を踏ん張り、食われないように耐える。
「ぐぅぅぅぅぅ!」
左腕が折れているから片腕じゃきつい。このままじゃ持たない。
急いで煌力を溜め、それを一気に爆発させた。
「ディストラクション・フィールド!」
オレの体から爆発のように破壊のエネルギーが撒き散らされる。
マザーゴブリンの顎が裂けそうなほど開かれ、甲高い耳障りな悲鳴を上げながら、マザーゴブリンは仰向けに傾いでいった。
マザーゴブリンが倒れ込む前に、オレは口から飛び出し地面に着地する。
「ぐぅぅ、攻撃すると折れた腕が痛い」
地響きと共に砂埃がオレに吹き付ける。下に居たゴブリンがマザーゴブリンの体で数十匹は潰された。
両手で口を覆い、呻き声をあげ暴れているマザーゴブリンに止めを刺そうと拳に煌力を込める。
跳び上がり、倒れてジタバタしているマザーゴブリンの腹を目掛けて拳を降り下ろす瞬間、横から衝撃を受けた。
「ぐあああぁぁぁぁぁぁ!!」
3匹目のマザーゴブリンが、オレの体を掴んで口に放り込もうとする。
「ぐぅぅ、抜け出せない」
片腕のオレは、マザーゴブリンの手を外す力はない。
この体勢ではぶち抜く力はないので、フィニッシュ・ブラストは打てない。痛いけど仕方がない。
拳に溜めた煌力を、マザーゴブリンの手に叩き付ける。
「シャイニング・ブラストォォ!」
青く光る拳を叩き付けた瞬間、爆発を起こした。
急所を貫くフィニッシュ・ブラストと比べて、内部で爆発させないので威力が低く、掴まれた情態で爆発させるので、自分も巻き込まれた。
抉れた指が開かれ、オレの体が爆発の衝撃で吹き飛ぶ。咆哮を上げて後ずさる敵から目を離さずに受け身を取る。
オレの体が叩き付けられた場所は、ゴブリンの真っ只中だった。
襲い掛かるゴブリンを、倒れたまま蹴り飛ばす。足を振り回す反動で飛び起き、背後から飛び掛かるゴブリンに、後ろ蹴りを放つ。
ゴブリンを蹴る勢いで前方に跳び、ゴブリンの囲いを抜け出した。
「ハァハァハァハァ。……後方に居るからてっきり弱いと油断してたな」
息を整えて構えを取る。身体強化が弱いうえに、自由に動けない空中じゃ勝てない。
遠距離攻撃は避けられるし、どうするか。いったん撤退することも考えないと。逃げる分の魔力は残しておこう。そこまで魔力が減ったら撤退だ。
「ここからが本番だ! 掛かってこい!」
今度は飛ばずに身体強化に力を入れる。
周囲の煌力から、敵の動きを把握して戦っていく。これで不意打ちを食らいにくくなった。
回し蹴りでゴブリン数匹を纏めて殺し、マザーゴブリンを誘導してゴブリンを踏み殺させる。
「くらえ!」
オレを踏みつけようとして、自分の子供たちを踏み殺したマザーゴブリンの膝の裏に蹴りを放つ。
バランスを崩し、倒れたマザーゴブリンは、更に味方の数を減らす。
周囲に居る生まれたてのゴブリンを、先に殺しておかないと戦いにくい。
周りに居た全てのゴブリンを倒して、マザーゴブリンに仕掛ける。
「オメガ・ブロー!」
自分の拳を破壊しないギリギリまで煌力を溜め、跳び上がってボディブローを放つ。
しかし、避けられてマザーゴブリンの後ろに着地した。やっぱり速い。
体勢を崩してからでないと、確実に当てられない。3匹の攻撃を大きく距離を取って躱し、オメガブローのために使うつもりだった煌力を、地面に叩き付けた。
「シャイニング・イラプション!!」
拳で地面を打ち抜き、煌力を放つ。操作した煌力がマザーゴブリンの足下から噴き上げた。
右足を失って膝を突く奴にオメガブローを放つ。
「グオォォォォォォォォォ!!」
オレの拳が腹を打ち、内臓を破壊した。
仲間が倒され怒り狂う2匹が、オレを握り潰そうと腕を伸ばす。
その手を躱し、腕を駆け上がって顔にシャイニング・ブラストを叩き込んだ。
爆発する瞬間に離脱したので、今度は自分に被害はない。
最初に口を怪我して地面で暴れていた奴が、ついに立ち上がり、オレに向かってきた。
両手をハンマーのように攻撃してくる。
命中の瞬間に前に出て股の下を潜って背後を取った。
オレを見失った敵の背に向かって、地面を爆発的な勢いで蹴り、そのまま輝く拳を放った。
背中をぶち抜くと、煌力を内部に残して離れた。
オレは顔が抉れたマザーゴブリンを誘導して、蹴りでバランスを崩し、フィニッシュ・ブラストを食らわせた奴の背中に叩き付ける。
そして、丁度いいタイミングで爆発させた。
バランスを崩して縺れ合いながら倒れた2匹は、仲良く爆発を食らい、心臓付近が爆発した方はピクリとも動かない。
顔を抉られた方は爆発の衝撃で後ろに倒れ、腹を押さえて苦しんでいる。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ!」
右手を突き出し、手の平から放たれた光線が、倒れたマザーゴブリンの腹に命中した。
爆発して内臓が飛び散るのを確認して、片足を失った最後の敵に向かって走り出した。
「こいつで最後だ……ハァハァ」
オメガブローのダメージから回復できていないらしい。さすがに魔物といえど、内臓を破壊されたら動き回れないんだろう。
ほっといても死にそうだけど、逆転されたら嫌なので念のために止めを刺す。
無駄な力は使いたくないオレは、5mくらいの大岩に腕を突き刺し、血を吐いて倒れているマザーゴブリンの顔面に投げ付けた。
顔を潰して止めを刺したオレは、3匹のマザーゴブリンから30cmくらいの魔石を取り外し、ゴブリンの死体と共に収納した。
「マザーゴブリンの強さも、先輩たちに聞いておけば良かった」
厄介な特性は聞いていたけど、強さについては聞いていなかったから、弱いと思い込んでしまった。
おそらく、先輩たちもマザーゴブリンと戦ったことがなかったんだろう。
「もう油断はしないようにしよう」
自分でも判る疲れた声で呟き、空を飛んで砦に戻った。そのついでに、残っていた力で光弾をばら蒔いていったのは言うまでもない。
砦の壁の矢を撃つ場所(名前は知らない)に並んで煌力砲を撃ったり、よじ登るゴブリンの指を斬って落としたりしている兵士の隙間から、砦に入った。
「さっき飛んで行った少年か? 怪我をしてるじゃないか!」
腕を押さえるオレを心配して声を掛ける兵士に、事情を話しながら医務室に連れて行かれた。
「マザーゴブリンを倒した?! ほんとかい! それは朗報だ!」
医務室で軍医に治療して貰いながら魔石を見せると、兵士は医務室を飛び出して報告に行った。
「まったく…………扉を閉めていかんか……ここには怪我人がいっぱいおるというのに」
オレの腕を固定した老軍医は、ぶつくさ言いながら扉を閉めて戻って来た。
「お主も無茶するんじゃない。まだ若い内に死ぬ気か?」
「いや、死ぬ気はないですけど、思ったより強くて」
軍医のお爺さんに言い訳していると、ドタバタ走る音が聞こえて、扉が勢いよく開いた。
「勇人! 無事か?! 怪我したって聞いたぞ! いなくなったと思ったら何で怪我してるんだ!」
アリス先生は慌てて、オレの固定された腕をさすり始める。それでは治らないんだけど、混乱してるみたいだ。
「まったく、どいつもこいつも……怪我人がおる場所で騒ぐなと言うに……」
今度はアリス先生に言い訳しながら、軍医のお爺さんのぼやきを聞いていた。




