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ゴブリンロードの脅威

 オレとアリス先生は静かにベッドから抜け出す。

 結衣を起こさないため、煌力灯に光は灯さず、蝋燭に火を点けた。


 お互いの顔も見えにくい部屋の中で、結衣の静かな寝息と、出掛けるために着替えをする、オレたちの服の絹鳴りだけが聴こえていた。


 準備を済ますと置き手紙を書いて、結衣の枕元に置いた。

 部屋を出ると、音が鳴らないように鍵を閉めて歩き出す。

 ギシギシと鳴る廊下を忍び足で歩く。ギルドの出入り口で何人かの冒険者と領都のギルドマスターが待っていた。


 小声で挨拶を交わし、全員が揃ってすぐに領主の館に出発した。

 酔っ払いくらいしか見掛けない暗い道を、オレたちは無言で歩く。


 秘密を守るために集められた人たちなので、余計なことは話さないようだ。

 どこで聞かれているか分からないしな。オレの指輪の性能は、すでに確認しているので、不用意に聞いたり話題にしたりしない。


 30分は歩いて、街の中心にある領主の館に着いた。さすがに領都だけあって広い街だな。

 入り口辺りのギルドから、小走りくらいのスピードで歩いたのに。

 裏口に回り合図を出すと、少しして警備を遠ざける声が聞こえて、領主らしき壮年の男性が扉を開けて現れた。


「冒険者の諸君、まずは礼を言う。我が領地の危機に尽力、感謝する。エイベル・アッカーだ」


 頭は下げないものの、全員に握手を求めてきた。頭を下げるのは王にだけとか、決まりでもあるのか? たんに頭を下げる風習がないのか? まあどうでもいいか。


「伯爵、仕事ですので礼は不要に御座いますれば。私共のほうこそ感謝申し上げます」


 こちらの要求を聞いてくれたことだろう。ギルドマスターがお礼を言った。頭を下げたから目上の人にだけ下げるのかな?


「あまり時間もない。貴族てして優雅さには欠けるが、茶会はいずれ時間のある時にでもしよう」


 アッカー伯爵はオレのほうに視線をチラッと見て、倉庫に向けて歩き出した。

 今の視線は何だ? お茶会の誘いか? オレだけ誘うのは収納の指輪が目当てか?


「ユート、伯爵の誘いには乗ってもいいけどな、貴族の家臣になると面倒だし、お前なら冒険者のほうが稼げるぞ」


 ランドのオッサンが耳元で囁く。

 何でも、収納の指輪を買いたいとかは言わないと、ギルドと約束しているらしい。

 だからオレごと臣下にしたいらしい。オレの将来に関わることなので、ギルドはオレの意思を尊重するため、オレから指輪を取り上げないことだけ約束したそうだ。


「オレもギルドが好きだし、貴族関係は面倒くさそうだから無理だって」


 オッサンにそう返すと、嬉しそうに顔をクシャクシャにして笑った。


「ここが倉庫だ。鍵を開けたから入ってくれ」


 伯爵に促され倉庫に入ると、煌力灯が光って眩しい。光に慣れると大量の武器や防具、食糧の入っているらしき箱や水樽が目に飛び込んできた。


「これがリストだ。確認をしてから収納してくれ。私も箱を開けるのを手伝おう」


 普通は雑用の仕事だが、時間がないから早く届けて欲しいんだろう。

 釘などを打ち付けていない蓋を開け、中身が入ってない箱を渡されたりしないかを確認して回る。

 届け先で、中身を抜いたなどと難癖をつけられないようにするのが目的だ。


「えーと、伯爵さん? さま? 収納しますね」


「伯爵だけで構わぬ。貴族ならともかく、若者にそこまで厳しく礼儀を求めたりはせぬのだ」


 この国の平民の若者は学ぶ機会が少ないのか?


「ありがとうございます。貴族には会ったことがないので」


 言いながら次々と収納していく。収納するごとに、冒険者たちが数を数えている。


「ふむ、話には聞いていたが、本当によく入るな」


 収納の指輪は、最大でも庶民の家一軒くらいしか入らないらしいからな。神器と言ったら、ややこしくなりそうだ。



 数が多いので、1時間掛けて収納した。


「凄いな、王家にもない品だが、聞かないでおこう」


 収納を終えて伯爵の屋敷から出ると、オレたちは正門まで行き、外に用意されていた数十のダミーの馬車を連れて、砦に出発した。

 いざというときは、ダミーの馬車は廃棄してもいいそうなので、気はラクだ。


 荷馬車には冒険者以外、なにも載っていないので馬も軽快に走る。

 領軍などが出撃したりしているので、盗賊なども様子を見て別の領地にでも行っているのか、まったくと言っていいほど何も襲ってこない。


 夜には見張りを交代でする。オレの煌力訓練も順調で、かなり離れた場所の煌力を知覚できる。

 オレの索敵で、近くに危険な生き物はいないと解っているので、訓練に集中できる。

 オレの瞳が赤ではなく、青になっているのを不思議そうに見ている冒険者たちに説明しても、理解されなかった。


 まあ仕方がない。オレだって電力が実は神様の力なんだよ、と日本で暮らしていた時に言われたら、何言ってんだコイツは? と思っただろう。

 この世界で煌力は、電気みたいに使われているので、地球で言うところの、家電製品やビーム兵器のエネルギー源みたいに思われてる。

 それを体に集めて使うと言い出す奴が日本に居たら、正気を疑われるだろう。


「オッサンたちにも安全のためにも、修得して欲しかったんだけどな」


「神様に会ったアタシでも、死ぬような訓練しないと使えないとか言われたらヤダよ」


 テントの中でアリス先生に相談したら、そう言われてしまった。

 理解者が現れないものか……。神様の力を使う軍団とか作りたかったんだけどな。

 神気で変身する魔法少女みたいな、そんな魔法少女部隊があればいいなと考えているうちに、いつの間にか眠っていた。


 避難民も居ないうえに荷物もなく、鍛え上げた冒険者たちなので、逃げて来た時の半分以下の時間で街に到着した。

 街は門を破壊され、兵士の食い散らされた死体と、斬られた無数のゴブリンの死体で酷い(にお)いだった。

 ゴブリンは1匹も残っていないし、オレが探っても生き物はいないようだった。

 ネズミなどの反応もないから、ゴブリンに食い尽くされたのかもしれない。

 ショックを引きずりながら、オレたちは街から5kmほど離れた砦に向かった。


「ここからでも見えるな。なんて数だ」


 1人の冒険者が御者台で呟く。


「10万って聞いていたが、あまり減ってるようには見えないな」


 オレの索敵だと、30mくらいの大きさの人型の反応から、1mくらいの反応が現れているので、マザーゴブリンだろう。

 3匹の反応があるので、1日に最低300匹は殖えてるはずだ。


 時々、デカイ声で吠える声が聞こえてくる。そのたびにゴブリンの魔力反応が大きくなる。


「ゴブリンロードの咆哮だ。自分の配下のゴブリンたち全部を、3~4倍に強くする支援魔法だと言われている」


 砦から無数の青い光が放たれ、ゴブリンたちに着弾し爆発を起こしている。

 あれが煌力砲か。爆発の規模からして、20~30匹くらいは吹き飛ばせそうだ。

 しかしゴブリンたちは巧くバラけて、被害を少なくしている。

 そして突撃を繰り返し、砦の門を破壊しようと体当たりをしている。


「あのゴブリンたちはロードに指揮されてるな。ありゃあ魔物召喚士に育てられたゴブリンロードかもな」


 ランドのオッサンの話を詳しく聞くと、魔物召喚士は召喚した魔物を契約して鍛えて、自然発生した魔物よりも強く賢くするらしい。


「それより、砦を囲まれて入れないぞ。どうする?」


 オレたちが来たと伝えても、砦はどうしようもない。門を開けたらゴブリンが雪崩れ込む。


「よし! おっちゃんたちが囮になるから、ユートとアリスは砦に向かえ。ユートの脚力ならジャンプで砦に入れるだろう」


 ランドのオッサンの言葉に冒険者たちが頷いた。


「オレが囮になってから、オッサンたちが入った後でオレも突入するよ」


「できるのか?! 戦闘ランク1級の冒険者なら大丈夫だろうが」


 オッサンたちより、比較的若い冒険者が驚きの声を上げる。


「煌力が凄いってとこを見せるよ。オッサンたちも身に付けたくなるさ」


 そう言ってオレは森から飛び出し、煌力を集め始めた。

 

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