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領都に到着

 それから半日ほど歩いた所で、オレたちは領軍に遭遇した。

 領主は領軍に、食糧を載せた荷馬車を何百台も手配していた。その内の30台を避難民に与えた。

 代官も急いで逃げる準備をさせたが、兵士は戦いの準備に忙しく、あまり持って来れなかったのだ。


 街からの荷馬車は歩けない老人や、病気の人間、歩けない年齢の幼い子供が優先的に乗せられていたので、結衣は頑張って歩いていた。

 結衣と同じくらいの子供たちは、領主の手配した荷馬車に載っていた、食糧の入った木箱の上に座り、なんとか全員乗れた。これで抱いて歩いていた親たちの負担が軽くなる。


 急な出撃だったので、食糧は十分な量ではなかったが、領軍の兵士たちは収納の指輪にも食糧を入れて持って来ていたので、あとは街に置いてきた食糧や、砦の備蓄と輸送されて来る食糧で対処するらしい。


 すでに街が落とされていた場合、少し離れた砦に誘導して戦うだろうと、大人たちが話していた。

 砦には最低限の戦力しかないが、食糧はそこそこ備蓄されている。

 国軍も準備してから出撃するので、1~2ヵ月で終息すると思う。

 領軍の兵士は1万2000人ほどだったが、国軍が来るまでは街や砦に備え付けてある、煌力砲という兵器で持ちこたえることが出来る。



 領軍と会った場所から2日ほどの距離を歩いて、息も絶え絶えで、やっと辿り着いた。

 街は他にもあるが、1万人近い人数を受け入れられる街は領都しかないので、仕方なく距離のある領都に来た。

 領都には十分な空き家はなかったが、兵士が使うテントが張られ、そこで休んでから別の街にバラけるらしい。


 代官は領主の屋敷に向かい、報告などをしているらしく、忙しそうに行き来していた。

 領都の冒険者ギルドも、冒険者たちに寝る場所を用意してくれたので、オレたちも十分な休養ができる。


「ようやく落ち着いて休めるな~。今はちょっと動きたくないな~」


 アリス先生は小さいので体力もなく苦労していたが、荷馬車に乗せられそうになっていたのを断って、自分の足で歩いていた。

 年齢を知らない人たちから説得されていたが、アリスが子供じゃない! と怒ったので引き下がっていった。


「オレも疲れました。避難って気分的にキツいですね」


 あの街は優しい人が多くて好きだったのに。

 家も借りて、これからって時にこんなことに。


「次に拠点にする街は安全な所にしようか? ……うん、王都とかにしよう! 結衣ちゃんも安心して暮らせるし……」


 確かにこんな気分は嫌だしな。


「先生、オレは1日休んだら冒険者ギルドに行きます。結衣のこと、頼みます」


 オレだけは食糧の輸送などを手伝おう。オレの収納の指輪を使えば、輸送がラクになる。そのついでに戦いも。


「……まさか戦いに行くつもりじゃ?」


「兵士の人がいるし、休み休み戦えば数を減らせると思うんですよね。指輪の性能もギルド長に話してみます」


 冒険者ギルドなら守ってくれそうな気がするし。


「アタシも行くぞ! 生徒だけで危ないことはダメだ」


 1時間掛けて説得したがアリス先生は納得してくれず、先生と一緒に無理なく戦うのを条件にされた。

 結衣は冒険者ギルドの女性職員に頼むことにした。領都の冒険者ギルドも仲間意識が強かった。




 結衣や先生の指輪は持っていることも隠しているので、オレの指輪の性能だけはギルド長に話した。

 ギルド長は領都のギルド長にも相談してくれて、オレのことを誤魔化しながら、収納の指輪を使って輸送する方法を考えてくれた。


「相談した結果、20人の冒険者をダミーとして君に付けることにした。君の指輪の性能は領主とこの20人、それからユアンの代官だけしか知らない」


 20人の指輪持ちのベテラン冒険者を付けて、指輪の性能を誤魔化すらしい。ランドのオッサンも居るので安心だ。

 食糧は領主が商人から買い付け、オレたち冒険者を夜中に自ら招き入れて、食糧倉庫に連れて行く。

 夜中の内に出発し、食糧を届ける。これを繰り返し行うことになった。

 1度に食糧を用意することは出来ないので、何度も往復しなければならない。


「ユアンの街に着いたら、一緒に行くユアンの代官に任せるんだ。冒険者にも討伐依頼は出しているので、君たちを送っても討伐に来たと思うだろう。ダミーの馬車と一緒に行って貰うことになる」


 オレの要望をしっかり聞いてくれて、可能な限り誤魔化してくれるようだ。感謝しかない。

 報酬は1回1000万シリンと破格の報酬だった。普通に輸送すると、護衛や馬の飼料などで馬車が増えて、護衛や人員の分もっと掛かるらしいので、この額だった。

 他の冒険者にはこんなに払われないので、なんか悪い気がするが、年功序列な日本と違い、実力主義なので誰も気にしないらしい。変なことを気にするなぁ、と言われた。



 話が付いたので家を探そうかと思ったら、しばらくは安全のためにギルドに住むように言われたので、使っていた部屋にそのまま残ることにした。


「ここなら結衣ちゃんも安心だし、おっちゃんたちも一緒に来てくれるんだから、勇人も大丈夫そうだな~。よかった」


 アリス先生はいろんなことが決まり、肩の荷が下りたみたいなスッキリした顔をしていた。

 この小さい先生に負担を掛けていたかと思うと、情けない気持ちと焦りが(よみが)りそうになったが、ランドのオッサンの言葉を思い出して、気持ちを抑えた。

 今はどう背伸びしても、周りの大人に頼るしかないのだから、自分に出来ること出来ないことを把握して頑張ろう。


 食糧の輸送に関しては、援軍として送った軍隊から報告があるまで待ち、その間に武器などの物資を買い集めるそうだ。

 街に残った兵士が生きていて、街がまだ陥落していない場合は街に、陥落している場合は砦に送らなければならない。

 国軍も派遣される場所が決まらないと戦略も決まらず、装備や兵種も決められない。


 街が陥落していないなら、街を破壊されないように外で戦い、砦で戦うなら遠距離攻撃ができる装備が特に必要だ。

 砦の防御力に頼るほうが人的被害は少なくなるが、街を破壊されてしまえば、経済的被害は甚大になる。

 どちらにせよ、オレも無理のない範囲で戦うことにする。アリス先生を危険に曝してまで、無謀な突撃をする気はない。

 練習した遠距離攻撃用の必殺技や、範囲攻撃用の必殺技を試すつもりだ。出発までに精度を上げよう。



 オレたちが領都に到着して5日後、飛行円盤に乗った伝令が帰ってきた。

 やはり街は落とされていた。兵士の生存は絶望的と判断して、領軍は砦に誘導して戦うようだ。

 王都にも伝令が送られて、国軍の出撃を頼む。準備と移動に2ヵ月は掛かるだろうと聞かされた。


「結衣、オレたちは出掛けるけど、結衣は留守番だ。できるよな?」


「お留守番くらいできるもん。叔父ちゃんたちは気を付けてね? ひとりにしちゃヤダよ」


 最初に話した時は、自分も着いて行くと言っていたが、危険な場所に行くからと説得して、職員のお姉さんたちと一緒に待つことを納得してくれた。


「アタシの大魔法を見せてやるぞ~! ゴブリンなんかに負けてたまるか! 人をチンチクリン呼ばわりして~!」


 まだ根に持っていたのか……。女の子は怒らせると怖いな。オレも気を付けよう。

 地団駄を踏みながら真っ赤になって怒るアリス先生を、オレはどう宥めようか悩んだ末、お菓子を与えておいた。

 すぐに機嫌を直すアリス先生は、お子様ランチに喜んだ結衣によく似ていた。

 そんな先生を見ていると、なぜだか安心するので、大人なアリス先生を見たくないのかもしれない。オレが大人になるまでは。

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