買い物をすると、女性は機嫌がよくて助かります
それからは毎日のように魔物を狩り、煌力の研究と修業、必殺技の考案をした。
そんなオレに触発されたのか、アリス先生と結衣も、魔法の研究に余念がない。
オレは食糧を用意し忘れた経験から、いざという時のために、3人の収納の指輪へと、食糧を毎日のように入れておいた。
他人が困らない程度とはいえ、1度に数ヵ月分は買うので、何軒かの店はいつもの売れ残りがなくなって、とても喜んでくれた。
オレの強さを見てアリス先生は安心したのか、大物を狙うことを許してくれたので、昼までの短い時間で毎日100万シリンは稼ぐようになった。
煌力のお陰で、魔物の居場所が1㎞くらい先なら判るようになった。狩りの効率が段違いだ。オレの戦闘ランクは6級まで上がった。
金が入るようになったので、服などの必要な物も買ってあげることができ、男として面目を保てた気がする。
今日も生活に必要な物を買いに、総合商店に来ている。デパートと言ったほうがいいかもしれない。
「叔父ちゃん、結衣はこれがいい! これなら皆で寝れるよ?」
一応、安い寝具は有ったが、金も稼げるようになったし、睡眠を大事にしたほうが子供の成長にいい! とアリス先生に言われて、ベッドと毛布などを買いに来た。
「こっちの冬の気候は厳しいって、近所の奥様方が話してたんだ……。今の内に用意したほうがいいって」
アリス先生は主婦のように、井戸端会議に参加している。母親のようにオレの噂をするのは、やめて欲しい。
「寒い時はいっしょに寝れば大丈夫だよ!」
結衣はどうしても天蓋付きのベッドが欲しいようだ。
寝間着もお姫さまが着そうな、可愛いネグリジェを欲しがった。
「お姫さまみたいなベッドと、普通の家は合わない気もするけど……まあいっか! 結衣ちゃんが欲しがってるなら」
アリス先生も、結衣には意識的に甘くしている。オレと同じように、親と会えない寂しさを、少しでも紛らわそうとしているのだろう。
アリス先生へプレゼントをしても、お前が命懸けで稼いだお金を無駄遣いしなくていい! お前が無事でいることのほうが大事だ! と言われた。
そのため、アリス先生には実用的な物を買ってきて、これは必要だから、有れば便利だからと言ってプレゼントしている。
「最近は料理も楽しくなってきたし、勇人が料理道具を買ってくるから、つい見ちゃうな~」
ベッドや毛布を買い、上の階も見に行ったら、台所用品のコーナーで、アリス先生が足を止め呟いた。
「アリスお姉ちゃんの料理、ちょっとだけ上手くなったんだよ!」
その呟きを聞いた結衣が、オレの袖を引っ張って、嬉しそうに報告する。
毎日食べてると違いが解らんが、一緒に料理している結衣には解るんだろうな。
「まだ下手なんだし、褒めないで欲しいぞ?」
確かに、あの味で褒められたら、オレでも恥ずかしく思うだろうな。言わないけど。
「こんなことになるなら、料理教室にでも通っとけば良かったな~」
1人暮らしをいいことに、カップラーメンやコンビニ弁当、冷凍食品で過ごしていたらしい。
ランドのオッサンに貰った酒を飲んで、酔っ払ったアリス先生が、言わなくていいことを言っていた。
アリス先生は酔うと愚痴が始まる。恋人もできないのに、料理なんかやってられるか! と、憐れみさえ覚える愚痴だった。
「この包丁は切れ味がいいから欲しいけど、結衣ちゃんも使うから危ないし……う~ん……やめとこ」
「結衣のほうが上手にできるよ! 危なくないもん……」
アリス先生からすると、オレも結衣ほどではないにせよ、心配な子供なんだろうか? それとも心配性か?
「お~、このエプロン可愛いな~」
結衣の体に、可愛い動物のプリントをされたエプロンを当てている。
「結衣はこっちがいい!」
子供っぽ過ぎるのは嫌なのか、フリフリのレースが付いた白いエプロンのほうを指差す。
新妻が裸で着けて料理をしたら、旦那さんがダッシュで帰って来そうなエプロンだと思った。当然、思っただけで口に出したりはしないが。
「長くなりそうだから、オレはキャンプ用品を見に行ってきます」
「キャンプ用品なんて何に使うんだ?」
「旅行とか行きたいじゃないですか。金は稼いだら使う、天下の回り物ですよ」
尋ねるアリス先生にそう言い残し、キャンプ用品コーナーに向かった。使い過ぎると駄目だと思うが、指輪の中に貯金はしているから大丈夫だ。
「このテントは折り畳み式で、小さなお子様でも設置できます。この商品は隙間風なども通しませんし」
紐を引くと一瞬で展開されるのは便利だな。しまうのは収納の指輪に入れておけば面倒くさくないし。
「暖房器具なども一緒に使用しますと、真冬の山で遭難しても生き残れます」
暖房も煌力製品で安全らしい。青白い光なのに暖かいし、触っても熱くない。
煌力は本当にいろいろ出来るな。そういえば飛行円盤は空も飛べるし。
収納の指輪からも感じるしな。神様の力だから万能なのかもな。
「お客様は冒険者ですし、魔石が切れても魔物を倒して補充ができますから、煌力製品は便利でございます」
買えるだけの煌力製品を買っておくか。
そう思った時に、軽い地震が起きた。つい身構えるが、建物は崩れたりしなかった。
「ここ10年くらい、軽い地震が続きますから、建物は補強しているんです」
身構えたオレに、店員さんが教えてくれる。小さな地震が1ヵ月の間に2~3回は起きる土地らしい。
隣のヴォールディア帝国が震源地で、震度3くらいの地震が起きているそうだ。
そのせいか帝国は景気があまり良くないそうだ。商品が駄目になるかもしれないと、商人があまり立ち寄らないのが理由らしい。
「どんな国でも問題ってあるんですね」
「この国でも、流民などの問題がありますからね。帝国で住めなくなった方たちが、職を求めて周囲の国々に」
ヴォールディア帝国と接している国は、4つあるんだったっけな。
この国、カウニスハーナ王国も国境で小競り合いがあると聞いた。
冒険者ギルドの受付嬢が、他国に行くときは気をつけてくださいと言っていたな。
オレは店員さんに勧められたテントの大型を2つと、便利な煌力製品をいくつか買ってから、結衣たちと合流した。
金を持っているのが知られたからか、女性客にデートに誘われたりもしたが、結衣とアリス先生が追っ払ってくれた。
「さっきの地震は怖かったな~。震度で言えば1か2くらいなのに」
「地震が原因でああなりましたからね。オレも身構えましたよ」
結衣などはオレに抱っこを求めてきた。
デパートを後にし、家に帰ると結衣は元気になった。
「ただいまー。それと叔父ちゃんたちはお帰りー」
「ただいま。結衣にもお帰り」
「みんなお帰りー。ちゃんと手を洗うんだぞ? じゃないとご飯は抜きだぞ!」
アリス先生の作るメシはマズイので、抜きにされるのは嬉しい気もするが。
言われた通りに、手を洗う。この世界には水道はなく、井戸で汲むか、水の魔法。金持ちなどは煌力製品で。
オレもさっき買ってきた。ポットみたいな煌力製品で、水やお湯が出る。
「すごいね! 温かいよ?!」
「ポットみたいな見た目だけど、水を入れなくても出るのか~。便利だし、値段は不問で!」
高い買い物をすると叱られるが、必要な物だと叱られないのだ。因みに、値段は29万8000シリンだった。
外国人顔の店員さんなので、テレビショッピングみたいな怪しさがあったが、買って良かった。
「温水発生機っていう煌力製品ですよ」
水も出るのにな。井戸水だと結衣がお腹を壊しそうだし、必要な買い物だと自負している。
買ってきた他の煌力製品は、必要になるまで披露しない。叱られたくないからな。
結衣とアリス先生の部屋にベッドを出し、2人は食事の用意を始めた。
料理の上手いメイドさんが欲しいな。言ったら怒られるから言わないし、料理をしてくれることは感謝している。今日は焦げてなければいいな。




