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赤き力を青き力に変えて

 昨夜は一睡もせずに瞑想をして、心を落ち着けていた。…………決して腹が減って眠れなかったわけじゃない。


 なので2日分の食糧を食いつくしたのも、修業に備えてのことだ。


「勇人、ほんとに行くのか? あんなパンツまでボロボロになるような修業に」


 アリス先生のじと目も、精神集中をしたオレには通じない。満腹でどうでもいいわけじゃないのだ。


「今日は大丈夫。オレは煌力を使いこなしてみせますよ!」


「叔父ちゃん、がんばれ~」


 オレの体が赤く光る。


「結衣ちゃん、お家では身体強化はやめてね?」


 アリス先生は子供相手だと優しい口調になるな。そこも可愛いんだけど。

 徹夜なせいかテンションがおかしいな。集中しないと。オレが使うのは自然の力。神の力の片鱗だ。とにかく気を鎮めて自然体に。


「あっ! 昨日破れたパンツの替えを5枚一組3000シリンで買っといたぞ!」


「あんたオレの母親か?!」


 いかんいかん。心を乱すな。


「今日はパンツを破って変態みたいなカッコで帰ってきちゃダメだぞ?」


 毎日のようにパンツを破ったりしない! 今日は必ず修得してみせる。


「昨日はご近所さんに言い訳しておいたけど、2日連続じゃ誤魔化せないぞ?」


 神の力と引き換えに、人として大事な何かを失くしそうだ。いいのか? この修業を続けて。

 ふと横を見る。近所のパン屋で買ってきたパンを、モグモグ食べている結衣を見て、オレは迷いを捨てた。


「行ってきます」


 腹もこなれてきたし。


「行ってら~」

「叔父ちゃん、お土産買って来てね?」


 力が抜ける2人の挨拶のお陰で、いい感じの精神状態になった。


 精神集中しながら、1時間歩いて煌力収集施設に到着した。

 オレの魔力も全回復している。もともと制御魔法は大した魔力は使わないので、全回してなくても大丈夫だけど。


「ドワーフのおじさん、おはようございます」


「来たな、変態ボウズ! 今日は少しだけ待って貰うぞ。朝の点検前にやることがあるんでな」


 点検前に、道具の整備とかがあるらしい。装置が暴走したりした場合、煌力を逃がす必要があって、その逃がす先のタンクを点検するのも朝の仕事だそうだ。


 装置の点検自体は、1日に何度もやるが、煌力を集めたタンクの点検は、逃がすタンクさえちゃんとしていれば、点検はあまり必要ないんだとか。


「ふう…………、茶を飲んでる場合じゃない。瞑想をしよう」


 よくよく考えたら、装置のことはあまり関係ないんだった。長々と説明を聞いても、煌力が危ない力だと思われてるのを聞くだけで、オレが煌力を理解するのにはマイナスだよ。


 もう一度瞑想をして、空気中にある煌力を感じ取ることに集中した。

 煌力を使えるようになったら、魔力が低いせいで威力がイマイチになりそうな技も、完成するかもしれない。

 今の内に更なる必殺技を考えておこう。どんなピンチも切り抜けられる必殺技を。


 9歳の姪っ子に頼らなければ、長時間の戦闘ができないじゃあ、危ない所には行けない。

 それだと稼げなくてギリギリの暮らしになりかねない。それは男としてどうなんだ? 情けないに決まっている。


「ボウズ、準備が終わったぞ。今から1時間だけ弱めるからやっていいぞ」


「ありがとうございます。おじさん。今日こそ成功させてみます」


 オレは階段を登り、宝玉の所に。あの光は敵じゃない! 味方だ!

 オレは宝玉に触り、青白い光を体に流す。制御魔法で流れを変えることはできる。

 だが、ここからが難しい。硬い金属と強靭な魔物の素材でないと、耐えられずに壊れてしまうエネルギーを、体に受け入れて一体化する。


「ぐぁ。はあぁぁぁ。ふう」


 少しでも気を抜くと体が爆発しそうだ。

 あの時受けた神様の力を思い出せ。あの力に変えればオレにも、神には届かなくても、人間の枠を超えた超人になれる。

 神の力は自然の力。巨大な生き物さえ生かす命の源。しかし、ひとたび荒れ狂えば災害さえ起こせる力。


「世界中に満ちる煌力を全て受け入れるのは不可能だ。人間の器に必要な分だけ受け入れろ」


 荒れ狂う力が、オレの中で穏やかになっていく。


「お、おいボウズ。瞳の色が赤から青に変わっていくぞ。すげぇ綺麗な色だな」


 おじさんが居たことすら気付いてなかった。だけど、オレの中に神様の力があるのがハッキリと解る。


「おじさん、完成したぞ。この力を鍛えたら、オレは無敵になれるはずだ」


 振り向くと、ドワーフのおじさんが後ずさる。


「圧力がすげぇ。少し抑えてくれ」


 コントロールがまだ難しいな。完璧にコントロールできるように修業に行こう。

 魔物を相手に考えた必殺技の練習もしたいし、実戦で使えるレベルに鍛えないと。


「瞳が黒に戻ったら、圧力も消えた。煌力を使えるようになったのか?」


「たぶん。自由自在とまではいかないけど、煌力は使える」


 静かに力を引き出すと、煌力が体に流れ込んでくるのが解る。


「…………なんか膝を屈しそうな力だな」


 この装置で集めた煌力は、神力とは別の力になってるからな。オレが使うのはより自然な煌力で神力に近いから、違って当然だろう。


 煌力収集施設の職員に礼を告げて街を出る。

 今日は練習なので1人で行く。2人を巻き込むような攻撃になるかもしれないからだ。

 煌力を使い、レーシングカーにでも勝てそうな速度で人のいない場所を目指す。

 街から2時間ほど離れた岩場に到着して、足を止めた。あまり疲れていない。

 もともと2時間走っても、多少息が上がるくらいの消耗だから、煌力に体力を回復する力はないのかも。


 まずは、魔力で身体強化した時のパンチの威力を計り、そのあと煌力の威力を計る。

 どのくらいのことが出来るのか、把握しておかなくては、事故が起きる可能性がある。


 10mくらいの大岩に魔力で殴りつけると、拳を当てた場所から、放射状にヒビが入った。

 拳の跡は5㎝はへこんでいる。次は煌力での身体強化の威力を見るために、別の大岩に殴り掛かる。


 次の大岩には、拳が手首の所まで埋まる。威力はかなり上がってるな。

 必殺技の威力はどうなるかも気になって、試してみる。


「フィニッシュ・ブラスト!」


 拳に魔力を集中するため、ただの身体強化よりパンチの威力が上がり、拳が手首まで岩にめり込む。

 後ろに跳んで起動させると、小爆発が起こって、大岩に40㎝くらいのクレーターができた。


「フィニッシュ・ブラスト!」


 今度は煌力で使ってみる。青白い光を纏った拳が大岩に突き刺さり、殴った感触としては、魔力よりも簡単に刺さる。

 念のためにかなり離れて起爆させると、10m級の大岩が粉々に爆発した。


「魔力の時くらいの位置なら、オレまで巻き添えを食らってたな…………。威力調節の練習のために、この辺りの岩は全部砕くことになるかも」


 それから100を超える岩を破壊し、ようやく威力の調節が出来るようになった。

 ためしに、煌力を実戦で調節できるか確認だ。一撃で殺さない威力で戦えるかが知りたい。数を減らしてから試そう。


 練習中に煌力に馴れたのか、空気中の煌力を感じ取って、気配察知が可能になった。

 煌力にはもっと可能性があるはずだ。研究と練習を続けて、新しい必殺技を作ろう。


 20分くらい走って、気配がある所に到着すると、鉛色のリザードマンの集団がいた。

 アイアンリザードマンだろう。奴らの皮膚は鉄のような皮膚で出来ているらしいので、厄介な魔物だ。

 ベテラン冒険者でも、武器が痛むので戦うのを嫌がると聞いた。

 しかし柔軟性のある皮らしく、防具にすると軽くて硬いうえに、ガチャガチャ煩くないので、高値で売れる。


『そろそろメシにするか? 腹が減って来た』


『そうだな。ゴブリンの巣でも襲うか?』


『ゴブリンの肉は固い。オークにしよう』


『それより人間が一番旨い。女子供の肉は軟らかくて極上の味だ。奴隷商人でも襲おう』


『奴隷商人は護衛を連れてるが、人間共の剣なんか効かないからな。いい獲物だ』


『人間の匂いを覚えた犬でも飼うか? 人間を簡単に見つけられるぞ』


 岩陰に隠れて聞いていると、言語を操る知能はあるようだが、人間を食事としか思ってないようだ。早く倒そう。

 ベテラン冒険者に聞いた話だと、目や口を狙えと言っていたが、オレなら問題ないだろう。

 皮も、皮の防具に貼り付ければいいらしいので、ボロボロになりさえしなければいい。


「おい! リザードマン! 人間ならここにいるぞ! オレを食えるなら食ってみろ!」


 食事に行こうと、この場を離れようとしていたアイアンリザードマンたちに怒鳴る。

 振り向いたリザードマンの1匹に、岩場から飛び降りながら蹴りを食らわせた。

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