今後の計画
「……美味しかったよ?」
アリス先生に向けてフィーリアが話し掛ける。
「慰めてくれてありがとな~、フィーリア。でも無理に褒めるな。食べてくれたのは勇人とフィーリアだけじゃないか……はあ~」
レイラは笑顔でスルーしてたし、マリーナに至ってはハッキリと拒否したからな。
優しい結衣でさえ目を逸らして、話題にもしなかったからな。
夫のオレも頑張って食べたくらいだ。愛があってもつらかった。
「前に食べてたやつより、苦い味以外の味がして美味しいよ?」
心底不思議そうな顔で答える。
ほんとに悲惨な食生活だったんだな。
「フィーリア……これからは失敗しないで、美味しい物を食べさせてやるからな! 花嫁修業を続けるから、絶対に上達してみせるぞ!」
「今日のも美味しいよ?」
感情的なマリーナは、フィーリアの境遇を思ってか泣いている。
レイラがそっとハンカチを差し出した。
「別に泣いてないんだからね! 花粉症よ!」
誤魔化しかたが酷いな。あれで誤魔化せると思ってるんだろうか?
あれ? フィーリアがいない。
「リアお姉ちゃんがいなくなっちゃった」
結衣も気付いたようだ。
相変わらず神出鬼没な子だな。
「お散歩にでも行ったんじゃないか?」
「リアのことだし、食後の運動に行ったのかもね」
元暗殺者の習性か、太ると隠密行動ができなくなると言っていたしな。
「でも、食器は片付けてくれてますよ~。優しい子ですね~」
200歳超えてるけど、エルフにしたら子供の年齢だ。フィーリアも子供扱いが気にならないらしいから、自然とみんな子供扱いするな。
城の中は安全だし、フィーリアもそのうち戻って来るだろう。オレたちも食器を片付けよう。
「それでだな。フィーリアがいないけど、みんなの意見を聞いておきたい。どんな家が欲しいか決めよう」
フィーリアは戻って来てから聞けばいいか。
「お家が買えるようになったの?」
「そうだぞ。結衣にはお姫様みたいな部屋を作ってやるからな」
「ありがとう!」
家族に会えないからか、結衣は家族の象徴として家を欲しがってるみたいだし、仮にオレが死んでも、家と財産さえあれば生きていけるだろう。オレもいろんな意味で家が欲しい。
「私は剣の訓練場があれば大丈夫! そんなに裕福な家柄じゃないし、部屋の大きさとかは気にならないわ」
マリーナの実家は男爵家だったな。
五等爵の1番下だし、そういうもんなのかね?
結婚について、マリーナの両親に文句をつけられないように、立派な部屋と訓練場を作ろう。念のために。
「アタシは書斎が欲しいぞ!」
「アリスお姉ちゃんって本は読まないよね?」
「読まないけど大人っぽいから欲しいんだ。アタシの給料だとワンルームのマンションが精いっぱいだったから、寝室とは別に大人っぽい部屋が欲しい」
夫婦用の寝室とみんなの分の個人的な寝室も作ろうか。
あとは来客用の部屋を10個ぐらい作って、子供ができた時のために余分な部屋を20個ぐらい作ろう。
「レイラは家の希望はあるか? いずれ結婚するんだし、それも考慮に入れて考えてくれ」
「そうですね~…………キッチンが2つくらい欲しいですね~。普段の食事を作るための小さいキッチンと~、パーティー用に大きなキッチンがあると便利です」
パーティーなんか開く予定はないけどな。
それはともかくとして、大きなキッチンがあれば大掛かりな料理もできるかもな。
「ユートさまは活躍すると思いますから、貴族の方との付き合いも必要になってくると思います~」
そうなるとパーティーしないとダメなのか? 庶民のオレには因果関係が解らんけど。
でも権力者は味方にしておいたほうがいいな。面倒なことにならないように、適度な距離感は必要だけど。
さすがに街で大暴れとかはしたくないし、余計な敵は増やさずに味方につけたほうがトクだ。
仲良くするのには、パーティーとかの交流は必要か。王都には貴族がいっぱいいるし、避けては通れないだろう。
「結衣は大きい部屋でいいか?」
「うん! 可愛い家具は買って貰ったし、楽しみ~!」
寝室と勉強部屋、あとは友達と茶会するような部屋も作ろう。お姫様みたいな生活をさせてやりたい。
実際のお姫様は窮屈な生活をしてると思うが、公務とかしつけとかを抜いたお姫様生活だな。
「オレもトレーニングルームは欲しい。あとはテレビを見る部屋も作ろう。ゲーム部屋も欲しい」
「ゲームって言っても、テレビゲームはないぞ? チェスとかビリヤードとかか?」
「そうですね。あとはポーカーの台とかルーレットとか」
「カジノみたいね。旦那様ってギャンブルしたかしら?」
「いや、ギャンブルには興味はないけど、他に遊び道具らしい物もないし」
遊ぶための部屋は、たとえ使わないにしても、精神衛生的に欲しい。
あるだけで人間らしい生活ができそうな気がする。なんとなくだけどな。
「私は防御力の高い――――」
「うわっ!」
「きゃあ!」
「リアお姉ちゃん! びっくりした~」
レイラ以外は気付かなかったか~。
今回、フィーリアは気配を消してなかったのにな~。
「……? 何で驚くの? レイラお姉ちゃんのいいつけ通りにドアから入ったのに」
「静かに入ってきすぎだぞ? まったく気付かなかった」
「話の最中で気付かなかったわ。姉様はともかくユイちゃんと同レベルの察知能力なんて……私ヤバくない?」
フィーリアはいちいち2人にショックを与えるな~。
「私の希望は防御力の高い壁と門が欲しいよ? 時間を稼いでる間に私が迎撃するよ」
護衛の観点からの希望か。
まだ個人的な希望は言わないか。
「部屋に欲しい物とかないのか?」
「……武器は家のいろんな所に隠しておきたい。どこで襲撃されても大丈夫になるから」
それも護衛の考えだろうに。
フィーリアの武器は指輪に入れてるから大丈夫だけど、警備の人間も雇う必要があるだろうから、武器を隠しているのは便利かもな。
「なんか物騒な家になりそうだな~。勇人、メイドをいっぱい雇って華やかにしよう! 警備員も女性冒険者とかにしたら、武器を飾っても華やかになるぞ!」
家の警備に華やかさって必要か?
まあいいか。男としては反対する理由はないし、お嫁さんたちが快適に暮らせることが優先だ。
女の子ばかりだと、オレの息が詰まりそうだけど。家の使用人のことはレイラに任せるかな。
「……そういえばフィーリアは何してたんだ?」
「お兄ちゃんに報告があるよ?」
また情報収集に行ってたのか。
「えっとね、お兄ちゃんが結婚したんじゃないかって噂になってたよ? 王様も部屋で悩んでた。うちの娘の何が悪いのかなぁって」
ジェスチャーで王の様子を再現しながら報告してる。
あと、王のプライベートルームには入ってやるなよ。
「王女様も、メイドさんに、まだ行き遅れではありませんって慰められてたよ?」
まあ立場的に第二夫人とかにはなれないだろうから、オレとの結婚は望み薄だと感じてるのかもな。
オレの立場が上にならない限りは、王女との結婚はないだろう。
「王女様はお茶を飲みながら冷静な顔をしてたよ? 体はプルプル震えてたけど」
だからプライベートを暴いてやるなよ。次に王女に会ったらどんな顔をすればいいんだ。
「フィーリア、なんか罪悪感があるから、そういう話はアタシに聞こえないようにしてくれ」
「……? わかったよ。お兄ちゃん、耳かして?」
「まだあるのかよ? オレも聞きたくないな~」
フィーリアはトコトコ歩いて来て、オレの耳に口を近付けた。
「あのね? お兄ちゃんが売ったドラゴンのお肉がおいしそうだったよ?」
「それは内緒にする必要はないぞ」
何がよくて何がダメかの判断はできないか。
オレたちのぶんもあるし、今度食わせてやろう。
「それと、新婚旅行に行くんだけど、誰か行きたい場所はないか?」
「私の実家は父様が従軍してるだろうから、結婚の時に一緒にしたほうがラクだと思うな」
「私は実家は観光には向いてないですし~」
特にレイラは、オレのメイドになるまで、実家と王都しか行ったことがないらしい。
「そういえばフィーリアの実家は?」
「両親は殺されたけど故郷は残ってるよ?」
また地雷っぽいものを踏んでしまった。




