病気選考会
現実に該当する病気で困っている方には不快に思われるかもしれません。
コメディー小説ということでお許しください。
あるところにとても健康な男がいた。風邪一つひかないで、病院に行ったことがないのが自慢だった。そんな男を妬む奴はいるもので、そのものの名は病魔といった。
病魔は早速会議を開き、男を病院送りにできそうな痛い病気ばかりを募集した。病魔のもとには様々な病気が訪れた。
「わたしは逆さまつげと言います。私が生えるといずいですよ」
「その程度で、あの男が病院に行くと思うか! 却下」
「私は指のささくれですが、どうでしょうか」
「論外! 却下」
「私はマルクと言います。私の検査は痛いです」
「お前は検査が痛いというだけで病気ではないではないか。本末転倒だ」
中々病魔のお眼鏡にかなう病気は現れなかった。
「ご存知帯状疱疹です。私は痛くて有名です」
「痛車の持ち主みたいな自己紹介の仕方だな」
「病魔様、調べたところによると、あの男は水ぼうそうにかかっておりません」病魔の部下が調査結果を報告した。
「なんだ。それでは帯状疱疹は起きないではないか。お引き取り願おう」
「ついに俺様の出番だな」
「お前は痛さの帝王痛風殿か」
「いかにも吾輩が痛さの王、痛風様なるぞ」
「風が吹いても痛い痛風なら、あの男もたまらず病院に行くであろう。よろしい発症を許可する」
病魔は満面の笑みを浮かべた。
「結果を楽しみにな」痛風は自信満々で去って行った。
数分後、痛風は頭をかきながら戻ってきた。
「尿酸値が足りなくて発症できませんでした。えへへ」
「お前も見掛け倒しじゃないか」
なかなか病魔の思い通りに事は運ばなかった。
「えー月並みですが、虫垂炎のご利用はいかが」
「虫垂炎か、まあ平凡だがやってみるか」
「はい。ありがとうございます」
しばらくすると虫垂炎が戻ってきた。
「たたた、大変です。男には虫垂がありません!」
「なに? それは突然変異か」
「病魔様、申し上げます。どうやら少年時代に罹患して手術した模様です」
「なーんだ。それなら少年時代に病院に行ってるではないか。解散!」
男は救われた。